K-ReaD( Kokugakuin University Researcher’s Achievement)

木原 志乃
文学部 哲学科
教授
Last Updated :2023/12/21

研究者基本情報

氏名

  • 氏名

    木原 志乃, キハラ シノ

所属・職名

  • 文学部 哲学科, 教授

学位

  • 2003年07月, 博士(文学), 京都大学, 第257号

本学就任年月日

  • 2005年04月

研究分野

  • 西洋古代哲学、古代ギリシア医学思想史

研究活動

論文

  • 「古代ギリシア哲学・医学思想における安楽死と脳死─魂と「よき死」の決定について」, 木原志乃, 『モラリア』, 27, 65, 90, 2020年11月01日, 東北大学倫理学研究会
  • 「ヒッポクラテス医学におけるパイデイア」, 木原志乃, 『ギリシャ哲学セミナー論集』, Vol.17, 2022年03月31日, ギリシャ哲学セミナー
  • 「ヒッポクラテス医学における女性の身体」, 木原志乃, 『古代哲学研究』, 51, 1, 17, 2019年06月01日, 古代哲学会
  • “The Physiology of Pneuma and the Relationship between Aristotle and Greek Medicine”, Shino Kihara, Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine, 11, 33, 40, 2017年12月01日, The Japanese Association for Philosophical and Ethical Researches in Medicine(日本医学哲学・倫理学会)
  • 「アリストテレスの医学的構想:実践知に基づいた医術の方法論」, 木原志乃, 『國學院雑誌』, Vol.117-6, 2016年06月01日, 國學院大學
  • 「古代ギリシア初期医学にみる魂と身体の相関性の問題──De victu とプラトン哲学」, 木原志乃, 人文学論集, 33, 2015年03月, 大阪府立大学紀要
  • 「ヘラクレイトスの流転説」, 木原志乃, 『古代哲学研究』, 27, 10, 19, 1995年05月01日, 古代哲学会
  • 「ヘラクレイトスのロゴス概念-現れた世界に対する智の基底としてのロゴスについて-」, 木原志乃, 『文化学研究集録』(大阪府立大学大学院総合科学研究科紀要), 5, 20, 26, 1996年03月01日, 大阪府立大学大学院総合科学研究科
  • 「ヘラクレイトスと医学理論-ヒッポクラテス文書における生理学への展開として-」, 木原志乃, 『古代哲学研究』, 30, 16, 27, 1998年05月01日, 古代哲学会
  • 「プネウマの生理学-アリストテレスとギリシア医学の関連から-」, 木原志乃, 『アルケー・関西哲学会年報』, 8, 35, 46, 2000年07月01日, 関西哲学会
  • 「テューモスとプシューケーについて-ヘラクレイトス断片85における魂の生理学-」, Shino Kihara, 『古代哲学研究室紀要』, 10, 1, 10, 2000年12月01日, 京都大学西洋古代哲学史研究室
  • 「ヘラクレイトスの魂論-断片36における魂概念の生理学的解釈をめぐって-」, 木原志乃, 『西洋古典学研究』, 50, 12, 23, 2002年03月01日, 日本西洋古典学会
  • 「エリュクシマコスのエロース論-ヘラクレイトスの「対立の一致」説との関連について-」, 木原志乃, 『古代哲学研究』, 34, 29, 41, 2002年05月01日, 古代哲学会
  • 「初期ギリシア医学理論とヘラクレイトス-クラーシス説における対立物の均衡関係について-」, 木原志乃, 『立命館哲学』, 14, 77, 96, 2003年03月01日, 立命館哲学会
  • 「安楽死問題とヒッポクラテスの『誓い』」, 木原志乃, 『古代哲学研究室紀要』, 13, 19, 43, 2004年03月01日, 京都大学西洋古代哲学史研究室
  • 「古代ギリシアにおけるメランコリア-ヒッポクラテス派からペリパトス派への医学史的展開」, 木原志乃, 『國學院雑誌』, 107, 12, 2006年12月01日, 國學院大學, ヒッポクラテス派からペリパトス派へと継承されたメランコリア概念の歴史的変遷をたどりつつ、そこに通低する病の生理学的メカニズムを明らかにした。そもそもメランコリアとは「黒い胆汁」という体液の一種の作用に起因する病的症候のことであり、その作用は「精神の病」にまで及ぶものと考えられていた。「正常と異常」、「健康と病い」、「身体と精神」を相関性・関係性の脈絡の中で把握しようとする古代ギリシア医学思想の基本的動向の中で、まさにそれらの両極性の間の揺れ動きとして現れるメランコリアという症候を具体的なテキストに基づいて論証した。
  • 「Melancholicoiにおける魂の運動と知性―アリストテレスとペリパトス派によるメランコリア概念の位置づけ―」, 木原志乃, 『古代哲学研究』, 40, 23, 44, 2008年05月01日, 古代哲学会
  • 「ヘラクレイトスのダイモーンと魂」, 木原志乃, 『國學院雑誌』, 111, 11, 2010年12月22日, 國學院大學
  • 「医学の祖ヒッポクラテスと患者の予後の洞察」, 木原志乃, 環境と健康, 27, 150, 160, 2014年06月01日, (公財)体質研究会 (公財)ひと・健康・未来研究財団 編集代表:山岸 秀夫

Misc

  • [書評]「J. Jouanna, Greek Medicine from Hippocrates to Galen: Selected Papers.[Studies in Ancient Medicine 40] Pp. XIX+403, Leiden/ Boston, Brill, 木原志乃, 『西洋古典学研究』, 63, 2015年03月31日, 日本西洋古典学会、岩波書店
  • [書評]P.J. van der Eijk(ed.), Ancient Histories of Medicine: Essays in Medical Doxography and Historiography in Classical Antiquity. 1999., 木原志乃, 『西洋古典学研究』, 第49号, 168, 171, 2001年03月01日, 日本西洋古典学会
  • 「古代ギリシアにおける医の倫理と現代医療倫理-S.H.マイルズによるヒッポクラテスの『誓い』解釈について-」, 木原志乃, 『PROSPECTUS』, 第7号, 60, 73, 2004年12月01日, 京都大学文学部哲学研究室

著書等出版物

  • 『ソクラテス以前の哲学者たち』G.S.カーク, J.E.レイヴン, M.スコフィールド共著「ヘラクレイトス」(翻訳), 木原志乃「ヘラクレイトス」(共訳:内山勝利、國方栄二、三浦要、丸橋裕), 京都大学学術出版会, 2006年11月10日, 内山勝利、國方栄二、三浦要、丸橋裕, 本書は、いわゆる「ソクラテス以前」の初期ギリシア哲学の成立過程とその展開を、その間に登場した主要な哲学者ごとに概観したものである。その内容は、緻密な文献学を踏まえた原典訳とともに、主要問題について踏み込んで検討されている点は注目すべきであり、初期ギリシア哲学における専門研究の共通の基盤として、今日きわめて重要な意義を有している。特に担当箇所の第六章「ヘラクレイトス」は、古来より解釈が多様に分かれる難解な思想が、カークによってテーマごとに明快に概説されており、研究入門書としても最良のものである。
  • 『古代ギリシア・ローマの哲学 ケンブリッジ・コンパニオン』20090625京都大学学術出版 第十章「哲学と科学」(R.J.Hankinson), D.セドレー, 京都大学学術出版, 2009年06月25日
  • ガレノス著『ヒッポクラテスとプラトンの学説 1』, 木原志乃, 京都大学学術出版会(西洋古典叢書), 2006年10月15日, 古代ギリシア哲学は同時代の医学思想との対立・連携の中で形成されてきたものである。そして物質や魂をめぐる哲学的問題はヘレニズム期を経て、ローマ期のガレノスの医学的著作において詳細に検討し直される。特に本書で検討されるヒッポクラテスとプラトンの医学理論において最も注目すべきは理論と実践との統合、哲学と科学のせめぎあいである。本書はこの点を見据えた上で、解剖実験の成果に基づいて心身論を展開しながら、生命システムの全体的な有機的連関に目を向けて論述されている。
  • 『『英雄伝』の挑戦』, 小池登・佐藤昇・木原志乃編, 京都大学学術出版会, 2019年03月05日
  • 『新版アリストテレス全集:魂について;自然学小論集』第七巻, 内山勝利・神崎繁・中畑正志編[, 岩波書店, 2014年02月07日
  • 『西洋哲学史I──「ある」の衝撃からはじまる』「エンペドクレスとアナクサゴラス」, 木原志乃, 講談社選書メチエ, 2011年10月10日
  • 『流転のロゴス──ヘラクレイトスとギリシア医学』, 木原志乃, 昭和堂, 2010年03月30日, 「物質」や「生命」をめぐるヘラクレイトスの根本的洞察を解明し、彼の生命観・身体観が後のギリシア医学思想へと結びついていくその道筋を明らかにすることによって、ギリシア医学に対するヘラクレイトス哲学の思想史的な影響と意義を考察した。本書前半第I部では、「生命とは何か」、「身体とは何か」という問題を切り口に、これまで注目されてこなかった生命論、生理学、および心的活動論の側面から新たなヘラクレイトス解釈を試みた。さらに後半第II部および第II部では、ギリシア哲学を継承しつつ独自の展開を見せた医学思想に光を当て、ヘラクレイトスと医学思想との結びつきを明確にした。古代ギリシアにおける「医学」と「哲学」の対立・連携の歴史は、従来ほとんど着手されることのなかった研究領域であり、魂と身体の相関関係についての議論やギリシア医学の倫理観にまで踏み込んで、その根底に流れる人間把握を明らかにしようとした点が本書の独自性である。ヘラクレイトス研究の新たな方法論を取り入れ、さらに欧米において近年高まりつつあるギリシア医学への関心を射程に置いた研究書である。

講演・発表

  • オンライン研究会「ギリシア・ローマ・アラビアにおける医学と哲学のつながり」:ヒッポクラテス医学におけるエピデミアイと全体論 ──哲学的方法論との関連から見た病の環境的要因, 木原志乃, ギリシア・ローマ・アラビア医学哲学研究会, 2022年03月05日
  • 日本西洋古典学会フォーラム「夢」:「古代ギリシア医学における夢と癒し」, 木原志乃, 日本西洋古典学会, 2022年06月04日, 日本・京都大学(ハイブリッド型開催)
  • 日本西洋古典学会シンポジウム「オリンピア:古典古代のからだとこころ」(コメント担当), 木原志乃, 日本西洋古典学会(第71回大会), 2021年06月05日
  • 「ヒッポクラテス医学におけるパイデイア」, 木原志乃, ギリシャ哲学セミナー, 2019年09月15日
  • シンポジウム「⽣命倫理の背後にある⽣・死・死後の観念」 「⻄洋古代医学思想における魂と死」, 木原志乃, 東北大学哲学会, 2019年10月20日
  • 「生命熱・アイテール・プネウマ-アリストテレス生理学とギリシア医学の関連から-」, 1999年10月01日, 関西哲学会・第52回大会(於 島根大学)
  • 「ヘラクレイトスの魂論-断片36における魂概念の生理学的解釈をめぐって-」, 2001年06月01日, 日本西洋古典学会・第52回大会(於 新潟大学)
  • 「ヘラクレイトスの「対立の一致」説と初期ギリシア医学思想」, 2002年10月01日, 立命館哲学会(於 立命館大学)
  • 「安楽死問題とヒッポクラテスの『誓い』」, 2003年12月01日, 21世紀COEプログラム(京都大学大学院文学研究科)「規範性と多元性の歴史的諸相」研究会
  • 「ソクラテス以前のギリシアの自然観について-ヘラクレイトスのピュシス概念を中心に-」, 2005年10月01日, エーゲ海学会, 自然概念の成立の初源に立ち返り、ソクラテス以前の人たちによってどのようなかたちで「自然」が見いだされ、さらに「生命」とどのように関連するものとして理解されるにいたったかについて検討した。ソクラテス以前の思想家たちのなかでも、ヘラクレイトスはピュシス概念を特徴的な仕方で語っていることでも知られている(22B1、B106、B112、B123DK)。火やロゴス、魂について説明したヘラクレイトス断片に基づきながら考察し、彼による自然観がそれ以前のものとどのように異なっているのかを明らかにした。
  • 「Melancholicoiにおける魂の運動と知性」, 2007年03月31日, 古代哲学フォーラム(イリソス会), 本発表では、まずCorpus Aristotelicum におけるメランコリア論に注目して、そこにおける生理学的変化と知性的状態との結びつきを解明し、さらにCorpus Aristotelicumと『問題集』との間の思想的関係性の解明を目指した。擬アリストテレスの『問題集』では、英雄や詩人たちにとってmelancholikoiであることが必要とされるべき要素であるかのように語られている。そもそも病いの状態として語られてきたメランコリア的気質が、『問題集』の当該箇所において知性の欠如という側面のみならず、知性の点で傑出した状態という二つの側面をともに保持しうるとみなされていることの根拠について、アリストテレスの生理学や倫理学との関連性を視野に置きつつ検討した。
  • ヒッポクラテス医学における「精神の病い」 , 2012年10月30日, 日本精神医学史学会
  • 医学の祖 ヒッポクラテスと患者の予後の洞察, 2013年06月15日, 「いのちの科学フォーラム」(「予見と思い誤り─人間の経験のあり方」)於:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川
  • 「気息について」(De spiritu)におけるプネウマ概念, 2013年11月09日, 日本精神医学史学会

その他

  • 「ヘラクレイトス-人は何のために競うのか」, 『人間会議』, 2006年夏号, 宣伝会議, 2006年06月01日, 70, 73, 競争社会化する近年の動向に対して、古代ギリシアのヘラクレイトス哲学はどのような示唆を持つものであるのかを解説した小論。「争いは正義である」と語ったヘラクレイトスは、現実の争いを肯定していたわけではなく、世界における絶えざる緊張関係を存在論的な次元で語っているのである。そこではわれわれの知のあり方が問題であり、その変転しながら自己更新する世界の相互連関を、自らの知でそのつど開示し続けることこそが、ヘラクレイトスが主張する「真なる知」なのであるという点を本小論で明らかにした。
  • 「学校まかせでよいのか-自分にとっての真の価値と向き合ったソクラテス」, 『人間会議』, 2006年冬号, 宣伝会議, 2006年12月05日, 104, 109, 近年の教育の孕む問題を、古代ギリシアにおけるソフィストとソクラテスの対立関係の中に遡源させて検討した。「よい教育とは何か」という問いかけをめぐり、ソフィストとソクラテスは人間を教育するという理念を共有しつつも、まったく異なった方向性を打ち出した。すなわちソフィストは実用主義的な学びを提供することができると公言するのに対して、ソクラテスは自己の知を徹底的に吟味することからしか真なる学びはありえないと主張した。自分にとっての知の価値と向き合うことを解いたソクラテス哲学が、今日の情報化社会の中でどのような意義をもっているかを示唆した小論である。
  • 「初期ギリシア哲学の文献事情」, 『哲学の歴史』, 第1巻[古代], 中央公論新社, 2008年02月01日

競争的資金

  • 21K00095, 2021, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)(一般), 古代ギリシア医学思想における病いの語り─エピデミアイをめぐる環境と倫理の問題
  • 18K00047, 古代ギリシア医学における病の位相:女性の身体の発見と医術の観点から, 本研究は、古代の医学文書における女性(の身体)理解を明らかにすることが目的である。とりわけ「ヒッポクラテス文書」には、生殖、妊娠、出産に関わる女性の病について多くの情報が提供されている。まず、そこにおける女性の身体の記述を概観した上で、医師や助産師としての女性の存在を再評価した。そして医学文書においては女性の身体が自然科学的・客観的に記述されているだけでなく、ケアの倫理に基づいた視点が導入され、女性がマイノリティとして尊重されていることも確認した。また、その他にも、古代医学における安楽死や脳死の問題、ナラティブの問題、医術や体育術と関連が深い古代オリンピック等についても多角的に考察を進めた。;生殖論や出産や不妊などの女性の病を扱った古代ギリシア医学テキストの考察を通して、女性の身体の発見史を辿ることが本研究の目的であり、これまでに取り上げられてこなかった独自の視点である。また、本研究は古代ギリシアにおける「哲学」と「医学」の両分野の関係性に目を向け、さらには、現代のジェンダー論や生命倫理学に通じる様々な問題をも扱うものである。その点でも、本研究のテーマは分野横断的であり、従来の狭い哲学史研究に終わらない独自性、創造性を強調したい。
  • 26370361, プルータルコス作品の実証的研究:文化・思想的背景に即した総合的再検討, プルータルコスの作品は西洋古典の中でも特に世に広く親しまれ、学術上の重要性も高いにもかかわらず、国内の専門研究が殆ど進んでいなかった。本研究は哲学・史学・文学の3分野が緊密に連携する共同研究として、文献学的に精密な読解に基づきつつ同時代的背景と作品の連関の諸相を分析し、古典古代の中・長期的観点からその位置づけを再検討することで、作品の特質と意義を明らかにすることを目指した。各研究者による多彩な個別成果が雑誌論文・学会発表・図書の形で公表され、3分野共同の成果報告が日本西洋古典学会第66回大会および『西洋古典学研究』64号で行われた。加えてこれらを発展させた成果を含む図書の刊行準備が開始された。
  • 18520068, 古代ギリシア医学における魂論の展開, 初期ギリシア哲学および医学における身体観の思想史的展開を、知の成立の問題との関わりに注目しながら考察した。とりわけヒッポクラテスからペリパトス派にいたるまでの哲学と科学の対立・連携の中で、身体および魂の相関性の問題を踏まえ、身体的調和が知性的活動と結びついた「病い」として強調されてきた「メランコリア」概念を中心にとりあげ、「病い」とは何かという本質的問いかけを射程にいれつつ吟味した。また、いくつかの初期ギリシア哲学に関する研究書、およびガレノスの著作の翻訳作業を進め、関連領域の諸議論をより広範囲に多角的な視野で捉え直そうと試みた点が本研究の成果である
  • 21K00095, 古代ギリシア医学思想における病いの語り─エピデミアイをめぐる環境と倫理の問題, 本研究は、古代ギリシア医学における病についての考察を通して、病める人間が環境や風土の中で生きることの意味を問い直し、流行病について倫理的視点を踏まえて語ることの重要性を明らかにすることを目指すものである。とりわけヒッポクラテス医学文書に見られる「流行病」(エピデミアイ)の記録を中心に取り上げ、ガレノスによる考察も比較検討しながら、環境の中で病と共存するための知のあり方を探る。;令和4年度は、前年度から引き続き、古代医学思想における「全体論」及び「夢と癒し」をテーマとして研究を行い、また新たに「精神医学」について考察した。「全体論」(Holism)については、前年度に行った「ギリシア・ローマ・アラビア医学哲学研究会」での発表内容をもとに、適宜修正を加えて『國學院雑誌』123 (11) 号に論文掲載した(「古代ギリシア医学における身体・環境・宇宙 : 哲学的方法との関連から見たヒッポクラテスのHolism」)。また、「夢と癒し」については、前年度から引き続き、京都大学「西洋古典学連携共同研究会」の活動に参加し(令和4年度は8回開催)、この研究会と共催である第72回日本西洋古典学会のフォーラム「夢」にて、「古代ギリシア医学における夢と癒し」という題目で、他の古代哲学・文学・歴史・美術の分野からの発表者たちとともに医学分野から研究成果を発表した(フォーラムについては『西洋古典学研究』70号[2023年2月]に簡略な報告を掲載)。また、年度末には第 8 回「古代史研究会」春季研究集会におけるワークショップ「西洋古代の医学テクストと歴史学研究」にて、「ヒッポクラテス派の精神医学における病の語り」という題目で研究発表を行った。近年の研究動向として、医療人類学の観点を強調しつつ古代精神医学にアプローチしたものや、ヒッポクラテス派の精神医学を再評価したものが見られ、一方では現代の医学哲学の分野において、病の「語り」の問題、及び「精神医学」それ自体を問い直す哲学的関心が高まっていることも看過してはならない。研究会発表においては、このような動向を見据えながら、『流行病』や『神聖病』など初期のヒッポクラテス文書における精神疾患の考察に注目し、その語りの独自性を明らかにした。;昨年度からの引き続きのテーマを論文にし、成果をまとめることができた。また新たな切り口として、古代ギリシアにおける「精神医学」に注目し、ヒッポクラテス文書の『流行病』(エピデミアイ)を中心とした語りの独自性を明らかにすることができた。また、「西洋古典学連携共同研究会」、「古代史研究会」、「古代哲学研究ネットワーク」など、様々な研究会に参加、及び発表し、哲学や医学分野だけでない分野の研究者たちとも活発な意見交換をすることができた。;今後の研究は、引き続き古代医学テキストを精査し、「夢」研究の成果を取りまとめるとともに、ヒッポクラテス文書における「精神医学の語り」についても論文を整え公表する予定である。また、ヒッポクラテス医学文書の「流行病」(エピデミアイ)とともにローマ期のガレノスの頃に概念化されたグローバルな「流行病」(パンデミアイ)についても検討を進め、医学テキストの語りの倫理性や、生きる環境の中で病と共存するための知のあり方を探りたい。さらに、国外の研究動向にも目を向けながら、 医術とレトリックの問題や、医学思想における非合理的側面、神的側面等の問題についても考察を進めたい。

教育活動

担当授業

  • 西洋哲学史IA, 2019, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、ソクラテス以前の哲学とプラトン哲学の基本的動向をたどる。| 客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 西洋哲学史IB, 2019, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、アリストテレス哲学およびヘレニズム哲学、新プラトン主義の基本的動向をたどるとともに、古代ギリシアの知がヘレニズム時代を経て中世思想のなかにいかに貫流しているかを明らかにすることを目指す。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • ギリシャ語I(2), 2019, 古典ギリシア語文法の基礎をゆっくりと丁寧に学ぶ。よく知られたギリシアの格言や名文句(文学・哲学・歴史・科学など、幅広い分野からの文例を紹介する予定)を味わいつつ、わかりやすい解説をまじえて文法を確認する。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているため、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があることだろう。| テキストには、古典ギリシア語習得に必携の書『ギリシア語入門』(田中美知太郎・松平千秋,岩波全書)を用いる。毎回の授業には、テキストに付された練習問題の宿題が課せられるが、この積み重ねにより一年を通して基本的なギリシア語原典(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)を読む力を身につけることができる。ぜひとも積極的に取り組んで欲しい。時には古代ギリシア音楽や関連映像なども紹介する予定である。
  • ギリシャ語I, 2019, -
  • ギリシャ語II(2), 2019, 古典ギリシア語入門(1)を履修済み(「ギリシャ語I(1)」単位取得者)であることが受講の条件です。|まずは基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけで構いません。文法に自信がない人でも十分についていけるよう丁寧に解説します。前半はギリシア語文法の基本を身につけ、後半からは基本的なギリシア語原典の中から興味深い抜粋を取り上げる予定で、毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • 哲学演習, 2019, 「哲学を学ぶことはできない」としばしば言われてきたが、学びの本質とは何か。学びの難しさを説いたプラトンが、「恋すること」が哲学であるとし、哲学の方法を「問答法」として示した真意はどこにあるのか。本演習はプラトンの著作のなかで、「学び」とは何か、哲学が何を求める学であるのかに関して重要な著作、『饗宴』および『メノン』を読み解きたい。|『饗宴』では、「恋」の位置づけをめぐり、哲学における知の希求へと議論が展開されてゆく。「恋」について古代ギリシアの知識人たちはどのように考えたのか。そしてプラトンが当時の恋愛観を踏まえて、「恋」の本質が「哲学」であるとした理由はなにか。「恋」についての「語り」を哲学するプラトンの面白さをテキストに基づいて確認してゆきたい。『メノン』では、「徳が教えられるのか」というメノンによる差し迫った問いかけから著作が始められている。唐突なこの問いをソクラテスとともに検討しながら、中期思想に向けての重要な出発点となっている学びの問題を突き詰めていきたい。|(演習参加者は各々担当する範囲を決め、担当箇所を要約してくること。)
  • 哲学特殊講義IVA, 2019, 本講義では、初期ギリシアからガレノスに至るまでの医学思想史を辿りながら、「病い」についての関連テキストを吟味する。「病い」の問題は、古代ギリシアにおける様々なコンテクストの中で多様に語られてきたが、とりわけ哲学的な知の成立と密接な関係の中で論じられてきたことに注目したい。身体と魂の相関性の問題、および臨床知の成立の問題などを踏まえて、「病い」と「健康」の境界がいかに語られたか、そして「病い」を癒すべく「医術知」がどのように位置づけられたのか、その思想史的展開を明らかすることが本講義の目的である。「病い」を通して語られる「正常」と「異常」の揺らぎについて考察することは、人間存在に関する根本的な問いと向き合う契機に他ならないと言えよう。
  • 哲学特殊講義IVB, 2019, 本講義では、古代ギリシアの文化的・哲学的背景の中で「死」がいかに理解されてきたかをさまざまな資料に基づいて明らかにする。「生きる」ということは、「死」と切り離されるものではなく、「死」を見つめることによって「生」がよりリアルなものとして受け止めなおされる。古代ギリシアにおいても、神話の世界においてであれ、哲学議論においてであれ、「死」をいかに捉えるかということは、まさに人間存在を描く際の最も重要なテーマであった。死後の世界をいかに描くか、死はわれわれにとって何なのか。この生と死の連続性の問題を、神話の時代からヘレニズム期に至るまでの、それぞれの思想史的な基盤に立って概観する。「輪廻転生」や「ソクラテスの死」、「自殺論」なども視野に置いて検討したい。
  • 基礎演習IA, 2019, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 前期の基礎演習で扱うのは、とりわけ「友愛、友情」についてである。アリストテレスはどんなに徳のある人でも友がいないと何の価値もないと述べている。果たしてその根拠はどこにあるのか。友がいなくとも有徳な人は幸せなはずではないのか。しかし友は自分を映す鏡のように照らし出す存在であり、友は「第二の自己」であるとアリストテレスは考える。また、自己と友の関係性は利己・利他の観点からどのように捉えることができるのかも本演習で検討したい。「友の為といっていても結局は自分の為である」といった利己主義的な立場も、「究極的に純粋に友の為である」という利他主義的な立場も、そのどちらの可能性も視野に入れてアリストテレスの「自己愛」論を読む必要がある。前期<友愛論>と後期<正義論>の基礎演習全体を通して、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 基礎演習I, 2019, -
  • 基礎演習IB, 2019, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 後期の基礎演習では、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「正義論」を中心に倫理学の諸問題を検討する。サンデルのハーバード大学「白熱講義」で話題になった正義論は記憶に新しい。そこでは現代倫理学および政治哲学の四つの立場が紹介されていた。功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、共同体主義である。これら四つの立場のうちサンデルは、共同体主義の立場から考察している。そして先に指摘したように、その起源には、「人間はポリス的(社会的)動物である」と語ったアリストテレスのニコマコス倫理学がある。社会的正義を重視しながら、善や幸福を共同体の中での他者との関係性から読み解くアリストテレス倫理学は現代に生きるわれわれにとって示唆的である。この基礎演習を通して古典読解の面白さを味わいつつ、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 卒業論文, 2019
  • 哲学演習, 2020, <本授業は、Zoom を利用した双方向型授業と講義資料を利用した遠隔授業を組合せて実施する。>|万学の祖と言われるアリストテレスの『形而上学』(τὰ μετὰ τὰ φυσικά=第一の哲学ἡ πρώτη Φιλοσοφία, Metaphysics)を前期に、後期には『魂について』(περὶ ψυχῆς)を取り上げて、それぞれ著作のいくつかの箇所を抜粋して読み解く。「全ての人間は、生まれつき、知ることを求める」(980a21)という『形而上学』冒頭は、「哲学(=知の希求)」の出発点として、明晰な知へ向けての発動を促し、「知ること」の意味が問い直される重要な一文であろう。本演習前期ではこの冒頭から出発して、哲学史を扱うA巻およびZ巻の実体論を読みながら、存在について問い直すアリストテレス哲学の面白さを味わって欲しい。また後期には、心の問題について考察された『魂について』の第1巻と2巻を中心に取り上げて、アリストテレスは先人達の魂理解の何を批判してどのようなアプローチをとったのか、そして心をどのように定義したのかを読み解く。心と身体の心身二元論とは異なったアリストテレス魂論の枠組みを学んで欲しい。|(演習参加者は各々担当する範囲を決め、担当箇所を要約してくること。)
  • ギリシャ語III, 2020, <本授業は、主にZoom を利用した双方向型授業として実施する。>|古典ギリシア語入門を履修済み(「ギリシャ語I」単位取得者)であることが受講の条件です。|受講にあたっては、基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけでまずは構いません。文法に自信がない人でも講読に十分についていけるよう丁寧に解説します。今年度は、様々なギリシア語原典の中から抜粋して有名な印象深い箇所をいくつか厳選し、取り上げる予定です。また、受講者の希望に合わせてテキストを決定します(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)。毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • ギリシャ語II, 2020, -
  • ギリシャ語IV, 2020, <本授業は、主にZoom を利用した双方向型授業として実施する。>|古典ギリシア語入門を履修済み(「ギリシャ語I」単位取得者。ギリシャ語II,IIIの単位が未習得の場合も可)であることが受講の条件です。|受講にあたっては、基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけでまずは構いません。文法に自信がない人でも講読に十分についていけるよう丁寧に解説します。今年度は、様々なギリシア語原典の中から抜粋して有名な印象深い箇所をいくつか厳選し、取り上げる予定です。また、受講者の希望に合わせてテキストを決定します(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)。毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • 基礎演習IA, 2020, <本授業は、主にZoom を利用した双方向型授業として実施する。>|世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 前期の基礎演習で扱うのは、とりわけ「友愛、友情」についてである。アリストテレスはどんなに徳のある人でも友がいないと何の価値もないと述べている。果たしてその根拠はどこにあるのか。友がいなくとも有徳な人は幸せなはずではないのか。しかし友は自分を映す鏡のように照らし出す存在であり、友は「第二の自己」であるとアリストテレスは考える。また、自己と友の関係性は利己・利他の観点からどのように捉えることができるのかも本演習で検討したい。「友の為といっていても結局は自分の為である」といった利己主義的な立場も、「究極的に純粋に友の為である」という利他主義的な立場も、そのどちらの可能性も視野に入れてアリストテレスの「自己愛」論を読む必要がある。前期<友愛論>と後期<正義論>の基礎演習全体を通して、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 基礎演習I, 2020, -
  • 基礎演習IB, 2020, <本授業は、主にZoom を利用した双方向型授業として実施する。>|世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 後期の基礎演習では、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「正義論」を中心に倫理学の諸問題を検討する。サンデルのハーバード大学「白熱講義」で話題になった正義論は記憶に新しい。そこでは現代倫理学および政治哲学の四つの立場が紹介されていた。功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、共同体主義である。これら四つの立場のうちサンデルは、共同体主義の立場から考察している。そして先に指摘したように、その起源には、「人間はポリス的(社会的)動物である」と語ったアリストテレスのニコマコス倫理学がある。社会的正義を重視しながら、善や幸福を共同体の中での他者との関係性から読み解くアリストテレス倫理学は現代に生きるわれわれにとって示唆的である。この基礎演習を通して古典読解の面白さを味わいつつ、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 哲学特殊講義IVA, 2020, <本授業は、主にZoom を利用したオンデマンド型授業として実施する。>|本講義では、初期ギリシアからガレノスに至るまでの医学思想史を辿りながら、「病い」についての関連テキストを吟味する。「病い」の問題は、古代ギリシアにおける様々なコンテクストの中で多様に語られてきたが、とりわけ哲学的な知の成立と密接な関係の中で論じられてきたことに注目したい。身体と魂の相関性の問題、および臨床知の成立の問題などを踏まえて、「病い」と「健康」の境界がいかに語られたか、そして「病い」を癒すべく「医術知」がどのように位置づけられたのか、その思想史的展開を明らかすることが本講義の目的である。「病い」を通して語られる「正常」と「異常」の揺らぎについて考察することは、人間存在に関する根本的な問いと向き合う契機に他ならないと言えよう。
  • 哲学特殊講義IVB, 2020, <本授業は、主にZoom を利用したオンデマンド型授業として実施する。>|本講義では、古代ギリシアの文化的・哲学的背景の中で「死」がいかに理解されてきたかをさまざまな資料に基づいて明らかにする。「生きる」ということは、「死」と切り離されるものではなく、「死」を見つめることによって「生」がよりリアルなものとして受け止めなおされる。古代ギリシアにおいても、神話の世界においてであれ、哲学議論においてであれ、「死」をいかに捉えるかということは、まさに人間存在を描く際の最も重要なテーマであった。死後の世界をいかに描くか、死はわれわれにとって何なのか。この生と死の連続性の問題を、神話の時代からヘレニズム期に至るまでの、それぞれの思想史的な基盤に立って概観する。「輪廻転生」や「ソクラテスの死」、「自殺論」なども視野に置いて検討したい。
  • 西洋哲学史IA, 2020, <本授業は、主にZoom を利用したオンデマンド型授業として実施する。>|古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、ソクラテス以前の哲学とプラトン哲学の基本的動向をたどる。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 西洋哲学史IB, 2020, <本授業は、主にZoom を利用したオンデマンド型授業として実施する。>|古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、アリストテレス哲学およびヘレニズム哲学、新プラトン主義の基本的動向をたどるとともに、古代ギリシアの知がヘレニズム時代を経て中世思想のなかにいかに貫流しているかを明らかにすることを目指す。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 身体論, 2020, 本授業は、Zoom を利用した双方向型授業と講義資料を利用した遠隔授業を組合せて実施する。|授業のテーマ:古代ギリシアの身体観|授業の内容|西洋思想史における身体論の変遷を、古代ギリシアを中心として現代まで概観する。われわれは「身体」を、まるで自分の所有物であるかのように扱い、自分に最も近いものであるかのように考えがちである。しかし熟考を重ねると身体とは自分に最も遠い存在であるように思われてくるので不思議である。「身体とは何か」。この問いかけから出発し、概念形成の歴史を読み解くうえでもきわめて興味深い古代ギリシアに遡源しつつ、心と物体、健康と病、内と外など、「身体」をめぐる二元論的把握の問題点を検討したい。また、身体美を競った古代オリンピックの思想的・文化的背景についても触れたい。
  • ギリシャ語I(2), 2021, 古典ギリシア語文法の基礎をゆっくりと丁寧に学ぶ。よく知られたギリシアの格言や名文句(文学・哲学・歴史・科学など、幅広い分野からの文例を紹介する予定)を味わいつつ、わかりやすい解説をまじえて文法を確認する。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているため、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があることだろう。| テキストには、古典ギリシア語習得に必携の書『ギリシア語入門』(田中美知太郎・松平千秋,岩波全書)を用いる。毎回の授業には、テキストに付された練習問題の宿題が課せられるが、この積み重ねにより一年を通して基本的なギリシア語原典(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)を読む力を身につけることができる。ぜひとも積極的に取り組んで欲しい。時には古代ギリシア音楽や関連映像なども紹介する予定である。
  • ギリシャ語I, 2021, 前期の内容については、(ギリシャ語Ⅰ(2) 渋谷 木原 志乃 火曜2限)を参照してください。後期の内容については、(ギリシャ語Ⅱ(2) 渋谷 木原 志乃 火曜2限)を参照してください。
  • ギリシャ語II(2), 2021, 古典ギリシア語入門(1)を履修済み(「ギリシャ語I(1)」単位取得者)であることが受講の条件です。|まずは基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけで構いません。文法に自信がない人でも十分についていけるよう丁寧に解説します。前半はギリシア語文法の基本を身につけ、後半からは基本的なギリシア語原典の中から興味深い抜粋を取り上げる予定で、毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • 基礎演習IA, 2021, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 前期の基礎演習で扱うのは、とりわけ「友愛、友情」についてである。アリストテレスはどんなに徳のある人でも友がいないと何の価値もないと述べている。果たしてその根拠はどこにあるのか。友がいなくとも有徳な人は幸せなはずではないのか。しかし友は自分を映す鏡のように照らし出す存在であり、友は「第二の自己」であるとアリストテレスは考える。また、自己と友の関係性は利己・利他の観点からどのように捉えることができるのかも本演習で検討したい。「友の為といっていても結局は自分の為である」といった利己主義的な立場も、「究極的に純粋に友の為である」という利他主義的な立場も、そのどちらの可能性も視野に入れてアリストテレスの「自己愛」論を読む必要がある。前期<友愛論>と後期<正義論>の基礎演習全体を通して、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 基礎演習I, 2021, 前期の内容については、(基礎演習ⅠA 渋谷 木原 志乃 木曜5限)を参照してください。後期の内容については、(基礎演習ⅠB 渋谷 木原 志乃 木曜5限)を参照してください。
  • 基礎演習IB, 2021, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。| 後期の基礎演習では、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「正義論」を中心に倫理学の諸問題を検討する。サンデルのハーバード大学「白熱講義」で話題になった正義論は記憶に新しい。そこでは現代倫理学および政治哲学の四つの立場が紹介されていた。功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、共同体主義である。これら四つの立場のうちサンデルは、共同体主義の立場から考察している。そして先に指摘したように、その起源には、「人間はポリス的(社会的)動物である」と語ったアリストテレスのニコマコス倫理学がある。社会的正義を重視しながら、善や幸福を共同体の中での他者との関係性から読み解くアリストテレス倫理学は現代に生きるわれわれにとって示唆的である。この基礎演習を通して古典読解の面白さを味わいつつ、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 哲学演習, 2021, 近年「正義とは何か」「国家とは何か」について論じられる機会が多い中、あらためてこのテーマをめぐる古典読解の難しさと面白さを、時間をかけて味わってもらいたい。そして現代の哲学的議論の出発点としてプラトンの存在がいかに重要であったかを、本演習を通して理解することができるであろう。| プラトンの著作のなかでも、『国家』はとりわけ内容豊富な長編作品である。この書は、そのタイトルどおり、「国家」の正しいあり方を問うものでありながら、同時にそれぞれの人間の心の中の正義がいかにして成立可能なのかを問いかける内容となっている。本書には理想国家の実現のための哲人王政治、民主主義批判など政治的に重要な議論が多く展開される。そしてそれらは、全体主義、優生学主義、エリート主義、あるいは共産主義など、時代の変遷とともに大きく揺さぶられながら「解釈」されてきたのである。だが『国家』は、一つの政治的イデオロギーの書として読まれるべきではないであろう。そこには「ほんとうの正しさ」の実現可能性が強調されているが、それと同時にその実現不可能をもわれわれに痛感させる逆説的な内容の一冊となっているからである。魂論、イデア論を中心軸としながら、これらの点をテキストで詳しく検討したい。|“西洋哲学の伝統は、プラトンへの脚註に過ぎない…”という有名なフレーズは哲学を学ぶ者であればよく知っているであろうし、これまでにも様々な場面で幾度も引用されてきた。しかしながら、この哲学の源流に位置するプラトンの魅力をわれわれは十分に味わえてきただろうか。プラトンのテキストに示唆された知の豊穣さを本演習を通して各人に汲み取って欲しい。 (演習参加者は各々担当する範囲を決め、担当箇所を要約してくること。)
  • 哲学特殊講義IVA, 2021, 本講義では、初期ギリシアのヘラクレイトス哲学に焦点を絞りながら、そこにおける生命や存在についての根本的な洞察を明らかにしてゆく。いわゆる「ソクラテス以前」の哲学者の中でもヘラクレイトスは独自の語りを展開しており、ニーチェ、ハイデッガー、デリダなどの現代哲学者たちが自らの存在理解に引き付けてその哲学を受容し語りなおしていることも極めて興味深い。存在と生成の問題をヘラクレイトスはいかに語ったのか。彼にとって流転する世界は理としてのロゴスと矛盾せずに成立するものであったのか。さらにはその存在論に基づきながら、魂概念を多用した点も重要である。ヘラクレイトスがソクラテス、プラトン哲学へと通じる主体的な自己としての魂理解への道を開いたことについても考察したい。このように、後の思想史的展開における意義にも目を向けて、さらに現代哲学との接点にも注目しながら、ヘラクレイトス断片を丁寧に読み解くことが本講義の目的である。
  • 哲学特殊講義IVB, 2021, 本講義では、古代ギリシアの文化的・哲学的背景の中で「死」がいかに理解されてきたかをさまざまな資料に基づいて明らかにする。「生きる」ということは、「死」と切り離されるものではなく、「死」を見つめることによって「生」がよりリアルなものとして受け止めなおされる。古代ギリシアにおいても、神話の世界においてであれ、哲学議論においてであれ、「死」をいかに捉えるかということは、まさに人間存在を描く際の最も重要なテーマであった。死後の世界をいかに描くか、死はわれわれにとって何なのか。この生と死の連続性の問題を、神話の時代からヘレニズム期に至るまでの、それぞれの思想史的な基盤に立って概観する。「輪廻転生」や「ソクラテスの死」、「自殺論」なども視野に置いて検討したい。
  • 西洋哲学史IA, 2021, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、ソクラテス以前の哲学とプラトン哲学の基本的動向をたどる。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 西洋哲学史IB, 2021, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、アリストテレス哲学およびヘレニズム哲学、新プラトン主義の基本的動向をたどるとともに、古代ギリシアの知がヘレニズム時代を経て中世思想のなかにいかに貫流しているかを明らかにすることを目指す。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 哲学演習, 2022, 本演習はプラトンの中期著作『饗宴』と『パイドロス』を読み解きたい。これらの対話篇において、プラトンは、「恋」の位置づけをめぐり、当時の一般的文化的エロス理解を土台に話をはじめ、後半部ではその批判的受け取り直しを行い、恋する者による真実の知の希求の問題へと議論を展開している。「恋」について古代ギリシアの知識人たちはどのように考えたのか。そしてプラトンが当時の恋愛観を踏まえて、「恋」の本質が「哲学」であるとした理由はなにか。「恋」についての語りを哲学するプラトンの面白さをテキストに基づいてじっくり味わってゆきたい。
  • ギリシャ語III, 2022, 古典ギリシア語入門を履修済み(「ギリシャ語I」単位取得者)であることが受講の条件です。|受講にあたっては、基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけでまずは構いません。文法に自信がない人でも講読に十分についていけるよう丁寧に解説します。今年度は、様々なギリシア語原典の中から抜粋して有名な印象深い箇所をいくつか厳選し、取り上げる予定です。また、受講者の希望に合わせてテキストを決定します(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)。毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • ギリシャ語II, 2022, 前期の内容については、(ギリシャ語Ⅰ(2)(H30〜) 渋谷 木原 志乃 火曜4限)を参照してください。後期の内容については、(ギリシャ語Ⅱ(2)(H30〜) 渋谷 木原 志乃 火曜4限)を参照してください。
  • ギリシャ語IV, 2022, 古典ギリシア語入門を履修済み(「ギリシャ語I」単位取得者。ギリシャ語II,IIIの単位が未習得の場合も可)であることが受講の条件です。|受講にあたっては、基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけでまずは構いません。文法に自信がない人でも講読に十分についていけるよう丁寧に解説します。今年度は、様々なギリシア語原典の中から抜粋して有名な印象深い箇所をいくつか厳選し、取り上げる予定です。また、受講者の希望に合わせてテキストを決定します(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)。毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • 基礎演習IIA, 2022, 「哲学を学ぶことはできない」とはカントの言葉であるが、哲学を学ぶとはどのようなことか。そして「学び」の本質とはそもそも何だろうか。本演習は、学ぶことの原点に立ち返り、知の探究の重要性を説いたプラトンの著作、『メノン』を扱う。この著作の冒頭は、若き青年メノンによる差し迫った問いかけから始まっている。徳は教えられるのか、それとも訓練によって身につくものなのか、自然本性によって備わったものなのか、神の恵によるのか…。唐突なこの問いをソクラテスはいかに解きほぐしてゆくのか。J.S.ミルによれば『メノン』は「珠玉の名作」(a gem) と言われている。イデア論に向けての重要な出発点となっている学びの問題を軸として、プラトンの魅力の詰まったこの著作を丁寧に読み解きたい。
  • 基礎演習IIB, 2022, われわれはみな「死」を避けられない。「死」は人間存在の根源的なテーマである。基礎演習2Bでは、「死」の問題を扱った古代ギリシアの哲学書『パイドン』を取り上げて、じっくりと読み進めたい。ソクラテスの最期の姿を描いた『パイドン』は、プラトン対話篇の中でも最も魂を揺さぶられる作品の一つだといってよい。彼が牢獄で弟子たちを囲んで自ら毒杯を仰ぎ死にゆくという緊迫したシーンで締めくくられるこの著作において、プラトンは哲学とは「死の練習」であると強調し、魂の不死性を論じた。はたして「生きること」と「死ぬこと」について実際にプラトンはいかに考えただろうか。『パイドン』全体を通して語られている「生」と「死」をめぐる哲学的なメッセージをテキストにしたがって読み解き、吟味考察することが本演習の目的である。
  • 哲学特殊講義IVA, 2022, 本講義では、初期ギリシアのヘラクレイトスやその後の自然哲学に焦点を絞りながら、生命や身体についての根本的な洞察を明らかにしてゆく。いわゆる「ソクラテス以前」の哲学者の中でもヘラクレイトスは独自の語りを展開しており、ニーチェ、ハイデッガー、デリダなどの現代哲学者たちが自らの存在理解に引き付けてその哲学を受容し語りなおしていることも極めて興味深い。存在と生成の問題をヘラクレイトスはいかに語ったのか。彼にとって流転する世界は理としてのロゴスと矛盾せずに成立するものであったのか。さらにはその存在論に基づきながら、魂概念を多用した点も重要である。ヘラクレイトスがソクラテス、プラトン哲学へと通じる主体的な自己としての魂理解への道を開いたことについても考察したい。このように、後の思想史的展開における意義にも目を向けて、さらに現代哲学との接点にも注目しながら、初期ギリシア哲学者たちの断片を丁寧に読み解くことが本講義の目的である。
  • 哲学特殊講義IVB, 2022, 本講義では、古代ギリシアの文化的・哲学的背景の中で「死」がいかに理解されてきたかをさまざまな資料に基づいて明らかにする。「生きる」ということは、「死」と切り離されるものではなく、「死」を見つめることによって「生」がよりリアルなものとして受け止めなおされる。古代ギリシアにおいても、神話の世界においてであれ、哲学議論においてであれ、「死」をいかに捉えるかということは、まさに人間存在を描く際の最も重要なテーマであった。死後の世界をいかに描くか、死はわれわれにとって何なのか。この生と死の連続性の問題を、神話の時代からヘレニズム期に至るまでの、それぞれの思想史的な基盤に立って概観する。「輪廻転生」や「ソクラテスの死」、「自殺論」なども視野に置いて検討したい。
  • 西洋哲学史IA, 2022, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、ソクラテス以前の哲学とプラトン哲学の基本的動向をたどる。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 西洋哲学史IB, 2022, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、アリストテレス哲学およびヘレニズム哲学、新プラトン主義の基本的動向をたどるとともに、古代ギリシアの知がヘレニズム時代を経て中世思想のなかにいかに貫流しているかを明らかにすることを目指す。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 哲学演習, 2023
  • ギリシャ語I(2), 2023
  • ギリシャ語I, 2023
  • ギリシャ語II(2), 2023
  • 基礎演習IIA, 2023
  • 基礎演習IIB, 2023
  • 哲学特殊講義IVA, 2023
  • 哲学特殊講義IVB, 2023
  • 西洋哲学史IA, 2023
  • 西洋哲学史IB, 2023
  • 哲学演習, 2023, 近年「正義とは何か」「国家とは何か」について論じられる機会が多い中、あらためてこのテーマをめぐる古典読解の難しさと面白さを、時間をかけて味わってもらいたい。そして現代の哲学的議論の出発点としてプラトンの存在がいかに重要であったかを、本演習を通して理解することができるであろう。| プラトンの著作のなかでも、『国家』はとりわけ内容豊富な長編作品である。この書は、そのタイトルどおり、「国家」の正しいあり方を問うものでありながら、同時にそれぞれの人間の心の中の正義がいかにして成立可能なのかを問いかける内容となっている。本書には理想国家の実現のための哲人王政治、民主主義批判など政治的に重要な議論が多く展開される。そしてそれらは、全体主義、優生学主義、エリート主義、あるいは共産主義など、時代の変遷とともに大きく揺さぶられながら「解釈」されてきたのである。だが『国家』は、一つの政治的イデオロギーの書として読まれるべきではないであろう。そこには「ほんとうの正しさ」の実現可能性が強調されているが、それと同時にその実現不可能をもわれわれに痛感させる逆説的な内容の一冊となっているからである。魂論、イデア論を中心軸としながら、これらの点をテキストで詳しく検討したい。|“西洋哲学の伝統は、プラトンへの脚註に過ぎない…”という有名なフレーズは哲学を学ぶ者であればよく知っているであろうし、これまでにも様々な場面で幾度も引用されてきた。しかしながら、この哲学の源流に位置するプラトンの魅力をわれわれは十分に味わえてきただろうか。プラトンのテキストに示唆された知の豊穣さを本演習を通して各人に汲み取って欲しい。 (演習参加者は各々担当する範囲を決め、担当箇所を要約してくること。)
  • ギリシャ語I(2), 2023, 古典ギリシア語文法の基礎をゆっくりと丁寧に学ぶ。よく知られたギリシアの格言や名文句(文学・哲学・歴史・科学など、幅広い分野からの文例を紹介する予定)を味わいつつ、わかりやすい解説をまじえて文法を確認する。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているため、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があることだろう。| テキストには、古典ギリシア語習得に必携の書『ギリシア語入門』(田中美知太郎・松平千秋,岩波全書)を用いる。毎回の授業には、テキストに付された練習問題の宿題が課せられるが、この積み重ねにより一年を通して基本的なギリシア語原典(プラトン、アリストテレス、クセノポン、ヘロドトス、ソポクレス、新約聖書など)を読む力を身につけることができる。ぜひとも積極的に取り組んで欲しい。時には古代ギリシア音楽や関連映像なども紹介する予定である。
  • ギリシャ語I, 2023, 前期の内容については(ギリシャ語Ⅰ(2)(H30〜) 渋谷 木原 志乃 火曜4限)を参照してください。後期の内容については(ギリシャ語Ⅱ(2)(H30〜) 渋谷 木原 志乃 火曜4限)を参照してください。
  • ギリシャ語II(2), 2023, 古典ギリシア語入門(1)を履修済み(「ギリシャ語I(1)」単位取得者)であることが受講の条件です。|まずは基本的なアルファベットが把握できており、初歩的な動詞や名詞等の活用が理解できているだけで構いません。文法に自信がない人でも十分についていけるよう丁寧に解説します。前半はギリシア語文法の基本を身につけ、後半からは基本的なギリシア語原典の中から興味深い抜粋を取り上げる予定で、毎回の予習範囲は数行程度とし、楽しんでテキスト講読に臨めるよう工夫をするつもりです。西洋の言語を学ぶ者にとって、ルーツとなる重要なエッセンスが古典ギリシア語にはふんだんに盛り込まれているので、古典ギリシア語を学ぶことでいろいろな発見があるでしょう。古典語や西洋思想に興味がある人の積極的な参加をお待ちしています。
  • 基礎演習IIA, 2023, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。|| 前期の基礎演習で扱うのは、とりわけ「友愛、友情」についてである。アリストテレスはどんなに徳のある人でも友がいないと何の価値もないと述べている。果たしてその根拠はどこにあるのか。友がいなくとも有徳な人は幸せなはずではないのか。しかし友は自分を映す鏡のように照らし出す存在であり、友は「第二の自己」であるとアリストテレスは考える。また、自己と友の関係性は利己・利他の観点からどのように捉えることができるのかも本演習で検討したい。「友の為といっていても結局は自分の為である」といった利己主義的な立場も、「究極的に純粋に友の為である」という利他主義的な立場も、そのどちらの可能性も視野に入れてアリストテレスの「自己愛」論を読む必要がある。前期<友愛論>と後期<正義論>の基礎演習全体を通して、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 基礎演習IIB, 2023, 世界には不幸が溢れている。戦争、テロ、事件、事故、病気、毎日何人もの人間が苦しみながら死んでいく。彼等は人生を楽しんだのか…そしてあなたはいま人生が幕を閉じても後悔なく幸せだったと言えるだろうか。しかしそもそも人間の幸福とは何なのか。| 現代的諸問題について考える際に、「いかに生きるべきか」、「幸福・正義・愛とは何か」という根源的な問いを避けて通ることができない。われわれは幸福であるために何をよりどころとし、倫理的な価値基準をどこにおくべきか。この問題を古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を邦訳で読みながらともに考えてみたい。| そもそも「倫理学」(タ・エーティカ)という言葉は、アリストテレスによって初めて確立されたものである。彼によれば、倫理学研究は理論的知識をめざすものではなく、人柄や性格(エートス)を基軸にした考察であり、そこに倫理に関わるアリストテレス独自の特徴が現れている。そしてそれは行為の主体となるその人自身の性格=心のあり方(moral psychology)を組み込まなければ、有効な倫理学とはなり得ないのではないかという反省をわれわれに促すことになる(近年の「徳倫理virtue ethics」の復権)。さらにアリストテレスは近年注目される共同体主義(コミュニタリアニズム)の起源でもあり、本演習で扱うテキストを通して、現代倫理学のみならず現代政治哲学、公共哲学などの見取り図をも得ることができよう。| 後期の基礎演習では、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「正義論」を中心に倫理学の諸問題を検討する。サンデルのハーバード大学「白熱講義」で話題になった正義論は記憶に新しい。そこでは現代倫理学および政治哲学の四つの立場が紹介されていた。功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、共同体主義である。これら四つの立場のうちサンデルは、共同体主義の立場から考察している。そして先に指摘したように、その起源には、「人間はポリス的(社会的)動物である」と語ったアリストテレスのニコマコス倫理学がある。社会的正義を重視しながら、善や幸福を共同体の中での他者との関係性から読み解くアリストテレス倫理学は現代に生きるわれわれにとって示唆的である。この基礎演習を通して古典読解の面白さを味わいつつ、「幸福」なよき生の探求の一つの指標を学ぶことができるであろう。
  • 哲学特殊講義IVA, 2023, <本授業は、対面型授業として実施する。>|本講義では、初期ギリシアからガレノスに至るまでの医学思想史を辿りながら、「病い」についての関連テキストを吟味する。「病い」の問題は、古代ギリシアにおける様々なコンテクストの中で多様に語られてきたが、とりわけ哲学的な知の成立と密接な関係の中で論じられてきたことに注目したい。身体と魂の相関性の問題、および臨床知の成立の問題などを踏まえて、「病い」と「健康」の境界がいかに語られたか、そして「病い」を癒すべく「医術知」がどのように位置づけられたのか、その思想史的展開を明らかすることが本講義の目的である。「病い」を通して語られる「正常」と「異常」の揺らぎについて考察することは、人間存在に関する根本的な問いと向き合う契機に他ならないと言えよう。
  • 哲学特殊講義IVB, 2023, 本講義では、古代ギリシアの文化的・哲学的背景の中で「死」がいかに理解されてきたかをさまざまな資料に基づいて明らかにする。「生きる」ということは、「死」と切り離されるものではなく、「死」を見つめることによって「生」がよりリアルなものとして受け止めなおされる。古代ギリシアにおいても、神話の世界においてであれ、哲学議論においてであれ、「死」をいかに捉えるかということは、まさに人間存在を描く際の最も重要なテーマであった。死後の世界をいかに描くか、死はわれわれにとって何なのか。この生と死の連続性の問題を、神話の時代からヘレニズム期に至るまでの、それぞれの思想史的な基盤に立って概観する。「輪廻転生」や「ソクラテスの死」、「自殺論」なども視野に置いて検討したい。
  • 西洋哲学史IA, 2023, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、ソクラテス以前の哲学とプラトン哲学の基本的動向をたどる。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。
  • 西洋哲学史IB, 2023, 古代ギリシア哲学は、中世や近現代の哲学を学ぶ上でも、避けて通れない西洋哲学の出発点であり、また西洋のあらゆる学問の豊かな源でもある。 本講義は、西洋の哲学(ピロソピアー)の原初に遡源し、アリストテレス哲学およびヘレニズム哲学、新プラトン主義の基本的動向をたどるとともに、古代ギリシアの知がヘレニズム時代を経て中世思想のなかにいかに貫流しているかを明らかにすることを目指す。|客観的に正しく出来上がった「哲学史」というものはない。思想家たちの問いかけに呼応して、受け取るわれわれの各人が問いの中に入り込んで、自分で考えて理解しなければならないからである。単なる情報として哲学史の知識をインプットすることを目指すのではなく、むしろ自分自身が根底から揺さぶられ、問いと真剣に向き合って「考える」力を身につけて欲しい。

オフィスアワーの実施時期・曜時

  • 2018, 月曜3限(前期のみ)、木曜5限

学外活動

学協会活動

  • 古代哲学会, 1993年07月
  • 関西哲学会, 1998年01月
  • 日本西洋古典学会, 1998年09月
  • 日本科学史会, 2003年07月
  • 精神医学史学会, 2009年
  • ギリシャ哲学セミナー, 2005年09月
  • 日本哲学会 会員, 2013年09月
  • 日本医学哲学・倫理学会 会員, 2014年03月

学外委員等活動

  • 2019年06月05日, 日本西洋古典学会, 委員
  • 2016年06月01日, 日本西洋古典学会, 委員