小規模宿泊業の社会的インパクトに関する考察, 井門隆夫, 地域政策研究第25巻第2号, 2022年12月28日, 高崎経済大学地域政策学会
小規模旅館業の労働生産性と今後の展望, 井門隆夫, 地域政策研究, 24, 3, 61, 70, 2022年01月, 高崎経済大学地域政策学会
学生による旅館業運営の試み —小規模宿泊業の労働生産性向上に向けて, 井門隆夫, 地域政策研究, 23, 3, 2021年03月, 高崎経済大学地域政策学会
旅館事業再生過程におけるPBL学習の試み, 井門隆夫, 地域政策研究, 22, 2, 2019年12月, 高崎経済大学地域政策学会
地方小規模宿泊業(旅館業)における労働環境, 井門隆夫, 日本労働研究雑誌, 708, 2019年07月, 労働政策研究・研修機構
訪日外国人の高崎市への立寄り需要に関する一考察, 井門隆夫, 地域政策研究, 21, 1, 2018年08月
小規模宿泊業の労働生産性向上に向けて―鳥羽市宿泊業調査結果から, 井門隆夫, 第32回日本観光研究学会全国大会論文集, 2017年12月
旅館業の現状と課題 ―事業承継のあり方に関する考察―, 井門 隆夫, 地域政策研究, 20, 2, 2017年12月
インターンシップにおけるコンピテンシーとモチベーションの関係性―観光業におけるインターンシップでの測定と観察, 井門隆夫, 第31回日本観光研究学会全国大会論文集, 2016年12月
公的データにみる宿泊業の労働生産性向上の可能性, 井門隆夫, 第30回日本観光研究学会全国大会論文集, 2015年12月
観光・旅行分野における顧客満足度調査について, 井門 隆夫, オペレーションズ・リサーチ, 50, 1
ニューツーリズムの現状と展望, 井門 隆夫, 関西国際大学紀要, 12
21K12457, 2021, 日本学術振興会, 科学研究費, 小規模宿泊業における資本のあり方に関する研究
18K11843, 2018, 日本学術振興会, 科学研究費, 小規模旅館業の労働生産性に関する実証的研究
21K12457, 小規模宿泊業における資本のあり方に関する研究, 本研究では、日本における小規模宿泊業において「資本(所有)と運営を分離」し、営業利益を生み持続可能となる経営モデルを調査で明らかにしていく。日本の小規模宿泊業の労働生産性が低い背景には、赤字法人と黒字個人でバランスを保つことを債務者と債権者である金融機関の双方が了解している状況がある。そのため、抜本的に労働生産性を向上するためには、経営者を個人保証から切り離し、海外で見られるような資本と運営分離形式へとシフトしていくことが望ましい。そうしたスキームにおいて、小規模宿泊業がどのように利益や価値を創出していくべきか、国内外の先行事例の経営者インタビューや参与観察調査で明らかにしたい。;本研究の目的は、日本の小規模宿泊業の価値と、その価値を持続可能とするための新しい資本のあり方のスタンダードを学術的(経営学的)に示すことである。;これまでの小規模宿泊業は、家族経営が中心であった。小さな資本しか持たない家族経営者でも不動産や個人保証をもとに大きな借入ができたことは地域雇用と経済循環を生み出し日本の地方経済の発展を支えたが、その過程でファミリーの資産を増やし個人保証に備えるという「赤字法人と黒字個人で資本のバランスを保つ形態」が標準化した。しかし、統計上は赤字法人の部分しか公にならないため、低い労働生産性が問題視されるようになった。そこで、過剰債務を残したままでの利益率改善では抜本的な解決にはならないという独自の仮説のもと、資本(所有)と運営を分離した経営形態の可能性を提示する。;そのため、抜本的に労働生産性を向上するためには、経営者を個人保証から切り離し、海外で見られるような資本と運営分離形式へとシフトしていくことが望ましい。そうしたスキームにおいて、小規模宿泊業がどのように利益や価値を創出していくべきか、国内外の先行事例の経営者インタビューや参与観察調査で明らかにしていく。;研究初年度(21年度)では、先行研究調査のほか、国内における先行的な取り組みの視察及びインタビュー調査を行った。;代表事例としては、後継者がなく廃業が予見される温泉地において、代表的企業が中心となりまちづくり会社を組成し、将来に廃業が見込まれる法人をM&Aしていく計画の初期的な動向のリサーチを実施している。また、小規模宿泊業に対する投融資意向に関して、金融機関や投資ファンドにインタビューを行い、主要な課題を把握できた。その上で、実際に自治体から紹介された過疎地の投資案件(所有者は財務的に追加投資が難しい)について新たな資本投下を受ける上での条件や新たなスキームについて仮想提案書を作成している。;可能であれば、海外での小規模宿泊業に投資事例の視察等を実施したかったが、パンデミックの長期化により次年度(22年度)の課題とした。;これらの状況から「おおむね順調」と判断した。;研究2年目となる22年度には、海外視察・調査(ベトナム)を実施し、資本と運営を分離することにより観光地ではない過疎地において社会的資本として存在し得る小規模宿泊業のあり方を解明していく。;視察先の事例は、主要な産業である農業及び山間地の棚田保全のため、労働力を地域に維持すべくエコロッジを外部資本により建設し、地域が運営している例だが、日本国内においても今後、宿泊業による「地域の社会課題解決(行政コスト削減)」を目的とした新しい業態の開発が考えられる。そのため、まちづくりで実装され始めたPFS(成果連動型官民連携)/SIB(ソーシャルインパクトボンド)の活用を研究していく。;これにより、人口増加時代に続いた産業のあり方から、人口減少時代の価値を創造する新たな社会的産業としての宿泊業のポジショニングの提案を行う。
18K11843, 小規模旅館業の労働生産性向上に資する実証的研究, 本研究は、宿泊業の60%を占める資本金1千万円未満の宿泊業に多い小規模旅館業の労働生産性について、生産性の低さの要因と改善の方向性を調査研究したものである。研究方法はフィールド調査を軸として、決算書の分析と経営者へのインタビュー調査等を行った。その結果、労働生産性を規定する主要因は、施設や労務効率といった表面的な問題ではなく、家族のみが出資する小規模事業者では、資産を担保とする連帯保証制度と多くの経営者預金が低収益性や債務超過を誘発し、結果として生産性を低めているという結論を得た。その改善に向けては債権法の改正のほか、新需要開発による収益性向上と家族以外の出資を促すスキームづくりが求められる。;観光研究分野の中で旅館業経営に関する研究は数多くない。その一因として旅館業は小規模事業者が多く、決算状況が開示されていないという事情があり、本研究では研究者の人脈及び商工会議所の協力により決算データを入手、分析できた点で意義がある。労働生産性については、業界全体が指摘を受けることが少なくないが、その構造の背景には、小さな資本で大きな借入れをして事業を興し、人口増加・経済成長を前提とした需要を対象としてきた事業モデルの存在がある。その結果、人口減少時代において収益力の低下や債務超過といった現象が起きている。今後は対処療法的な改善ではなく、資本のあり方の見直しを含めた根本的な対策が求められる。