山島 有喜 | |
観光まちづくり学部 観光まちづくり学科 | |
助手 |
The purpose of this study is to grasp the concepts of rooftop greening and to clarify the birth of multiple rooftops greening and its concepts and significance in history of rooftop greening. Some 157 examples of rooftop greening were collected from technical books and contests and were analyzed from the viewpoint of place of rooftop greens, spatial relations of rooftop green, accessibility to the rooftop greens, mobility between rooftop greens, presence of natural vegetation, water environment and existence of neighboring ground green spaces. The data set was analyzed through cluster analysis and Hayashi's quantification methods typeⅢ and chronological table on the history of technologies and governmental policies. As a result, it was made clear that the concept of greening the rooftop appeared early works in history of rooftop greening. Afterwards, the concept of rooftop green on the intermediate floor also became popular in 1980s and surrounding natural environments were taken into account in 1990s. After the birth of multiple rooftops greening, rooftop greens became closed to the ground, easier to access, connected visually and biologically and improved between the upper and lower rooftops. In the case of Across Fukuoka of 1995, all concepts were introduced. In conclusion, it’s considered that multiple rooftops greening showed the new concept of continuities.
地域制公園制度をとる日本の国立公園には,原生的な自然とともに,地域の生活,生業と結びつく二次自然が広く分布する。そうした人との関わりの中で成立した自然を保全するためには,自然への人為の関与を維持することが重要であり,地物の消費など経済の好循環を生むことが重要である。一方,協働型管理への取り組みが進む中,地域自然資産法が制定され,自然資源の保全策として利用者負担や基金制度への関心も高まっている。本研究では,里海,里山の代表的な国立公園である伊勢志摩と阿蘇くじゅうの両国立公園を研究対象として取り上げ,来訪者の公園利用に対する意向を明らかにすること,環境保全基金を想定した場合の来訪者の貢献の意向をふまえた基金の枠組みについて検討することを目的とした。2020年11月,両国立公園において実施した利用者意識調査の結果から,両国立公園に共通して,地域の食や産物が公園利用の目的となっており,基金の使途としては里山・里海の風景の保全・回復が期待されていた。なお,本研究は,(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1906,研究代表者:山本清龍)により実施された。
The purpose of this study is to investigate whether rooftop greening remained or disappeared in public facilities with rooftop greening, and to consider the life cycle of rooftop green spaces. The cases were collected from the journal of Shin-Kenchiku and technical books, and included cases built before 2001, when the greening of rooftops became compulsory by Tokyo's regulations. Among the 96 cases of public facilities with green roofs, 86 cases in which both the building and the rooftop green space were unchanged, 6 cases in which the building existed but the rooftop green space disappeared, and 4 cases in which the rooftop green space disappeared due to the disappearance of the building were identified. The presence or absence of rooftop green spaces depends largely on whether the building is demolished due to its age or not. And the rooftop green spaces can be removed due to safety, management or cost issues. On the other hand, the movement to protect not only buildings but also rooftop green space by designating it as a cultural asset was confirmed and proposed as one of the measures to exist of rooftop green space for a long time.
本研究は,日光国立公園奥日光地域の有料と無料の駐車場,低公害バスの3 者の利用者の属性,旅行特性,環境保全基金に対する意識を明らかにすること,基金の地域への適合性と使途,課題について考察することを目的とし,2020 年の7-11 月にアンケート調査を実施した。その結果,991 人の回答者のうち,約9 割が環境保全を目的とする基金の創設に賛成していた。また,公園利用者の9 割以上が車を利用しているという旅行特性を考慮すると,駐車場への料金上乗せが適合すると考えられた。しかし,3 者の利用者間で意識の差異もみられ,基金の必要性に対する理解を求める取り組みも必要と考えられた。
2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大により,私たちの生活,産業は大きな影響を受けている。同年4月の緊急事態宣言以降,感染症と観光に関わるいくつかの緊急報告が出されているが,国立公園に関してCOVID-19流行前後で比較された報告は見あたらない。そこで,本研究では,阿蘇くじゅう国立公園を事例とし,COVID-19流行前後における来訪者の属性,行動の特徴とその差異を明らかにし,誘致圏の観点からその変化とその要因について考察することを目的とした。2019年と2020年の両年11月に,阿蘇くじゅう国立公園において郵送回収式アンケート調査を実施した。その結果,感染症拡大後は,県内居住者,家族単位での訪問が多く,旅行者のグループが小さく,訪問目的等の多寡に差異があったことから,感染症への対応行動の結果として国立公園の利用者層,行動に変化が起きていると考えられた。また,宿泊者が多く,GoToトラベルなど観光促進策の効果と思われる変化を確認でき,行政等による観光への助成,支援策 と合わせて考察を行った。なお,本研究は,(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1906,研究代表者:山本清龍)により実施した。
本研究は,阿蘇くじゅう国立公園において来訪者に対してアンケート調査を実施し,環境保全を目的とする基金に対して許容される賛否および徴収方法を把握した。また,基金に対して賛意を示した大多数の回答者を対象として,許容する徴収方法を把握するためのクロス集計分析を行った。その結果,多くの徴収方法が許容され得ることが明らかになった。とくに,環境の改善を期待する層では主要拠点における徴収が許容され,基金の事務局費用や人件費などの運営費には可能な限り全員から徴収する方法,駐車場料金への上乗せが許容されていた。
近年,国立公園内の行政,事業者,公園利用者を含めた連携や協働型管理が志向され,その財源として基金に注目が集まっている。基金の事例数は増加しており,規模や目的が多様なことから基金の有効活用にむけた方策の検討が求められている。本研究で対象とする那須平成の森基金は,2011年に那須御用邸用地の一部を日光国立公園に編入のうえ開園した那須平成の森の保全を目的する。サポーター会員からの年会費や寄付金をもとに運用され,主として那須平成の森で活動する団体への助成金交付を行っている。本研究では本基金による自然資源の協働型管理の実態を明らかにし,小規模な基金が果たす役割と課題を考察することを目的とした。その結果,地元那須地域に根差した活動が目指されている一方で,助成金交付基準の明確化,基金の効果の可視化,会員へのメリット提示,サポーター会員数の減少への対策,事務局の負担減への取り組みなど,基金の継続性に課題があることも把握された。報告では,基金の発展に寄与する方策についても論じ考察する。なお,本研究は,(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1906,研究代表者:山本清龍)により実施された。
国立公園等の保護地域において地域の参画と利用者の貢献を促す方法には多様な提案がありうるが,地域にとって自由度の高い財源を確保することは課題の一つである。たとえば,2013年に任意の協力金制度を導入した富士山では利用者の不公平感,地域の来訪者の減少への不安が指摘され,実際の協力率が想定を下回ったという苦い経験がある。また近年は,協力金の徴収のための人件費の削減,使途の妥当性の議論,協力金の活用による効果の可視化など,時間の経過とともに取り組み課題も変化している。近年,地域の自主財源確保の事例がさらに増える一方で,利用者に許容される使途の選定,地域の多様な利害関係者が連携しやすい仕組みづくり,国立公園が持つ個性や地域性が生きる基金の像の抽出,循環型社会づくりとの連携など,基金が地域の発展に貢献できるよう積極的に検討すべき他の課題もあるように思われる。そこで,本報告では,主として国立公園と保護地域においてみられる環境保全を目的とする基金の事例を複数取り上げて,その実態や課題,論点を整理する。なお,本研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1906,研究代表者:山本清龍)により実施された。
2015年に地域自然資産法が策定され,地域が自発的に資金調達することが可能となった。それにより自然環境の受益者である利用者に対して,自然環境保全等に係る費用の一部負担を求める動きが広がりつつある。協力金に関しては導入が容易であるものの,必要な検討や準備が不足している場合には,資金を受け取る側と支払う側の関係性及び受け取る側内部において軋轢が生じる恐れがあると指摘されている。このような課題は一定期間を経ることで顕在化するといえよう。そこで本研究では協力金の一事例として伊吹山自然再生事業に着目し,協議会事務局,地元自治体,地元企業の相互の関係性や伊吹山入山協力金の課題について考察をした。研究方法は聞き取り調査と文献調査を中心とした。結果として,入山協力金として年に1300万円程度の安定した収入を得ている一方で,協力金を受け取る内部において,とくに地元自治体と地元企業であるドライブウェイの関係性に課題が生じており,それらが徴収方法や使途に対する不公平感に結びついていることが示唆された。
なお,本研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1906,研究代表者:山本清龍)により実施された。