Verkehrsstrafrechtliche Probleme automatisch gesteuerter fahrerloser Fahrzeuge, Hiroki YAMASHITA, Die Transformation des Rechts in der Post-Covid-Gesellschaft - Vorträge des 10. Trilateralen deutsch-japanisch-koeranischen Seminars 3. bis 6. November 2023 in Osaka., 2024年, Konstanzer Online-Publikations-System
自動運転に関する道路交通法の改正とその問題点, 山下裕樹, 関西大学法学研究所研究叢書第70冊『技術革新と刑事法』, 93, 112, 2024年, 関西大学法学研究所
遺棄罪の諸概念の内容について, 山下裕樹, 刑法雑誌, 61, 2, 18, 37, 2022年06月, 有斐閣
AI・ロボットによる事故の責任の所在について——自動運転車の事案を中心に——, 山下裕樹, ノモス, 45, 95, 119, 2019年12月
赤ちゃんポストと内密出産, 山下裕樹, 法学セミナー, 834号, 108, 113, 2024年, 日本評論社
【判例研究】邸宅侵入、現住建造物等放火被告事件1件を含む複数の被告事件が併合審理された裁判員裁判において、建造物等以外放火被告事件では公共の危険の発生の有無が争われたのに対し、犯行現場の客観的状況や被告人の行為態様から公共の危険の発生が推認される上、燃焼実験結果に基づいて複数の延焼可能性が存在すると指摘する専門家証言は客観的な裏付けを伴う合理的な判断であるとして公共の危険の発生を認めた第一審の認定判断が、控訴審において是認された事例, 山下裕樹, 刑事法ジャーナル, 79, 254, 259, 2024年02月20日, 成文堂
【判例研究】刑法65条2項における「身分のない者には通常の刑を科する」の意義, 山下裕樹, 新・判例解説Watch, 2023年12月08日, TKC・ローライブラリー
【判例研究】保護責任者不保護致死罪における不保護と要保護状況, 山下裕樹, 新・判例解説Watch, 2022年09月
Die soziale Distanz durch automatisierte Vorgänge – Der Verantwortliche beim Unfall des automatisch gesteuerten Autos, Hiroki YAMASHITA, Herausforderungen der COVID-19 Pandemie und ihre rechtliche Bewältigung in Korea, Japan und Deutschland - Vorträge des 9. Trilateralen Deutsch-Koreanischen Seminars 3. bis 4. August 2021 in Seoul., 146, 152, 2022年03月, .
遺棄罪の諸概念の内容について(3・完), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 71, 1, 73, 99, 2021年05月
遺棄罪の諸概念の内容について(2), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 70, 6, 232, 267, 2021年03月
【判例研究】ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成28年法律第102号による改正前のもの)2条1項1号にいう「住居等の付近において見張り」をする行為の意義, 山下裕樹, 刑事法ジャーナル, 67, 183, 190, 2021年02月, 成文堂
【判例研究】いわゆる現金送付型の特殊詐欺で「騙されたふり作戦」が行なわれた事案において、受け子につき詐欺の未必的故意を認め、先行する氏名不詳者らの欺罔行為も含めた詐欺行為全体に対する詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた事例——福岡高裁判平成28年12月20日(LEX/DB 25545320)——, 山下裕樹, 龍谷法学, 51, 1, 629, 653, 2018年10月
遺棄罪の諸概念の内容について(1), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 67, 5, 73, 89, 2018年01月
「保護責任者」・「遺棄」・「不保護」、その内容と限界―二つのアプローチ:規範と事実―, 山下裕樹, 関西大学, 2017年09月
作為・不作為の区別と行為記述, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 66, 4, 190, 232, 2016年11月
【判例研究】自ら出産した新生児を殺害した被告人が、その死体をタオルで包み、ポリ袋に入れるなどして自宅などに隠匿した死体遺棄の事案について、葬祭義務を果たさないまま放置した不作為による遺棄行為を起訴したものであるから、公訴時効の起算点は、警察官が死体を発見した時であるという検察官の主張を排斥し、作為による死体遺棄罪が成立するとした上、公訴時効が完成しているとして免訴を言い渡した事例―大阪地裁判平成25年3月22日判タ1413号386頁―, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 66, 2, 107, 128, 2016年07月
【判例研究】運転者がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら行なった被告人の了解および黙認行為が、危険運転致死傷罪の幇助にあたるとされた事例―最決平25年4月15日刑集67巻4号437頁―, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 65, 6, 177, 197, 2016年03月
親権者の「刑法的」作為義務, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 64, 2, 137, 196, 2014年07月
【研究ノート】不作為における救命可能性と因果関係及び作為義務についての一考察, 山下裕樹, 関西大学法学ジャーナル, 88, 227, 246, 2013年03月
【翻訳】ヨアヒム・レンツィコフスキー「性刑法の発展過程——道徳の保護から法益保護へ、再び道徳保護へ回帰するのか?」, 山下裕樹, 龍谷法学, 56, 2, 123, 154, 2023年09月, 龍谷大学法学会
【翻訳】フラウケ・ロスタルスキー「刑法学のビンディングの影響」, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 74, 2, 321, 347, 2024年07月, 関西大学法学会
【翻訳】ミヒャエル・クビチエール「刑法における目的——クリスチャン・ラインホルト・ケストリンの刑法理論——」, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 69, 5, 127, 146, 2020年01月, 関西大学法学会
【文献紹介】A・エーザー=W・ペロン編『ヨーロッパにおける刑事責任および刑事制裁の構造比較―比較刑法理論への寄与』(5), 山下裕樹, 立命館法学, 378, 384, 400, 2018年08月
【文献紹介】A・エーザー=W・ペロン編『ヨーロッパにおける刑事責任および刑事制裁の構造比較―比較刑法理論への寄与』(3), 山下裕樹, 立命館法学, 373, 433, 441, 2017年12月
【文献紹介】スヴェン・ヘティッチュ=エリザ・マイ「道路交通における自動化されたシステムの投入における法的な問題」, 山下裕樹, 千葉大学法学論集, 32, 1・2, 138, 112, 2017年09月
【文献紹介】リザ・ブレフシュミット「医師の治療行為の枠内における医療技術の投入を例とした民法および刑法における過失の基準」, 山下裕樹, 千葉大学法学論集, 31, 3・4, 153, 135, 2017年03月, 千葉大学法学会
【翻訳】ミヒャエル・パブリック『市民の不法』(7), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 65, 1, 175, 200, 2015年05月, 關西大學法學會
【翻訳】ミヒャエル・パブリック『市民の不法』(6), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 64, 5, 202, 245, 2015年01月
【翻訳】シュテファン・シック「統制的理念としての敵刑法 (Feindstrafrecht als regulative Idee)」―ドイツの哲学的刑法論に関する重要文献(3), 山下裕樹, 関西大学法学論集, 64, 2, 197, 232, 2014年07月
【翻訳】ミヒャエル・パブリック「ジャン・ジャック・ルソーの政治哲学に対するヘーゲルの批判」, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 63, 6, 261, 286, 2014年03月
【翻訳】ミヒャエル・パブリック「『総則の解釈論における最も暗黒の章』―保障人義務についての覚え書き」, 山下裕樹, 関西大学法学論集, 63, 2, 298, 315, 2013年07月, 關西大學法學會
Verkehrsstrafrechtliche Probleme automatisch gesteuerter fahrerloser Fahrzeuge, Hiroki YAMASHITA, 10. Trilateralen deutsch-japanisch-koreanischen Seminar 2023 "Die Transformation des Rechts in der Post-Covid-Gesellschaft", 2023年11月04日
Die soziale Distanz durch automatisierte Vorgänge - Der Verantwortliche beim Unfall des automatisch gesteuerten Autos, 山下裕樹, 9. Triaterales koreanisch-deutsch-japanisches Seminar 2021 "Die Herausforderungen durch die COVID-19 Pandemie und ihre rechtliche Bewältigung in Korea, Japan und Deutschland", 2021年08月04日
遺棄罪の諸概念の内容について, 山下裕樹, 日本刑法学会第99回大会, 2021年05月30日
日本における未成年者に対する性犯罪規定の概観, 第18回関西大学・漢陽大学共同シンポジウム「日韓における緊急課題の法理論的検討」, 2019年10月16日
日本における未成年者に対する性犯罪規定の概観, 第1回台湾・日本刑事法シンポジウム――台湾・日本における性犯罪の現在, 2019年06月28日
AIと刑法——自動運転車を中心に——, 山下裕樹, 第17回関西大学・漢陽大学共同シンポジウム「4次産業革命と法的課題」, 2018年10月05日
日本における遺棄罪の構造について, 山下裕樹, 世宗研究所―国際交流基金共同主催「日韓研究者知的交流会『日本の研究の現在と未来:争点と研究方向』, 2018年01月16日
親権者の「刑法的」作為義務, 山下裕樹, 日本刑法学会関西部会, 2015年07月26日
21K01209, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 性犯罪規定改正後に想定される実務上の諸問題に関する理論的研究
18K01309, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 知的エージェントによる有害行為に対する刑事責任, 今年度は、研究分担者及び研究協力者ととともに、これまでの調査研究において明らかとなった問題点を整理し、各自が主として担当してきた部分について、日独の比較法を踏まえ、本研究に関する研究成果として書籍をまとめるべく、研究会をネットを通じて開催した。また、各自がとりまとめた草稿等を共有し、随時研究チームにおいて参照し、あるいは相互に検討できる環境を構築して、新型コロナの蔓延状況に対応しつつ調査研究を進めた。
なお、本研究課題に関して、(1)ロボットまたはAIに関する日独の議論状況の概要とその比較検討、(2)AIそれ自体の行為主体性、(3)AIによる社会的損害に対する刑事責任のあり方、(4)自動運転自動車等に関する道路交通法上の課題を分担して成果をとりまとめることとした。(2)については、一般的な行為主体性、処罰可能性のみならず、AIまたはロボットと人間との競合によるある種の「共犯」的責任まで検討している。また、(3)においては、過失責任を中心として、複数の観点から新たな理論構築の可能性を検討する門となっている。
当初の研究計画では、研究チームにおける調査研究のとりまとめと並行して、ドイツへ出張し、現時点での成果を海外研究協力者と共有して、日独の比較法研究をより深める予定であったが、状況に鑑みて断念せざるをえなかった。そのため、これに代えて、ネットベースでのやりとりならざるをえず、実際に面談しつつ、ドイツにおける若手研究者を交えての議論などが十分にできず、やや不十分なものとなった。そのため、この点について、研究の進捗がやや遅れてしまった。
日本学術振興会, 科学研究費(若手研究), 不作為による死体遺棄罪の終了時期と公訴時効の成否
21K01209, 性犯罪規定改正後に想定される実務上の諸問題に関する理論的研究, 研究方法としては、先行研究や判例分析を踏まえた理論的な検討、比較法的な見地からの解決策の模索、実務家からのヒアリングなどによる実態調査、他の研究者との意見交換などを予定している。具体的な研究内容としては、第一に、性犯罪における被害者の同意の判断、第二に故意の認定、第三に、未成年者保護に関する検討、とくに、現在の監護者性交等罪が対象としている場合以外にも、一定の年齢未満の者に影響力を有する者による性交等を処罰するかどうかについて、第四に、被告人/被害者の供述証拠の信用性判断の在り方について検討を行う。;法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の意見として報告された、事務当局作成の要綱(骨子)案は、2023年2月17日の法制審議会(総会)に報告・採択され、法務大臣に答申がなされた。今年度はこの要綱案の制定時の議論を巡って研究を進めてきたが、その成果として、2022年5月に、関西学院大学で行われた第10回刑事法学フォーラム「刑事立法の動向とそのあり方」において「性犯罪規定の改正について」と題して、性犯罪改正に関する報告を行い、実務家も含めた専門家との意見交換を行った。さらに、その報告内容を踏まえて、要綱(骨子)案の問題点を検討し、立命館法学404=405号において「性犯罪規定の改正-要綱(骨子)案について」と題する論稿を公表した。判例研究としては、性犯罪改正の一つの契機となった判例(名古屋高判令和2・3・12 判時2467号137頁)について評釈を行い、「被告人が、同居の実子(当時19歳)が被告人による暴力や性的虐待等によって抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて性交をしたとされる準強制性交等罪の事案において、抗拒不能状態を認定できないとして無罪を言い渡した原判決を破棄して有罪とされた事例」と題して、判例時報2517号に公表した。また、ドイツの性刑法改正状況を知るため、2023年3月に、講師として、ヨアヒム・レンツィコフスキー氏(ドイツ、ハレ大学教授)を龍谷大学にお招きして研究会を行った。講演内容については龍谷法学に掲載予定である。そのほか、性犯罪を専門的に研究する学外の研究者との検討会も行い、情報の取得に努めてきた。;当初の計画通り、性刑法改正に関する報告や論考を公表することができた。特に、要綱(骨子)案に関する検討をすぐに公表できたのは、それまでの学外の研究者との研究会を重ねて検討を深めていたことによるものが大きい。さらに、比較法的な研究として、ドイツのレンツィコフスキー先生をお招きして意見交換できたことは、本研究にとって非常に有意義であった。;要綱(骨子)案が提出され、改正法の成立時期が迫ってきた(ないしは法改正後の)タイミングにあることから、本研究の目的としては、立法論議よりもむしろ、改正後に生じうる解釈上の論点に目を向け、今後の実務上の解釈指針となりうる理論的視座の提供を目指している。6月に開催される日本刑法学会のワークショップでは、以上の目的を踏まえて、共同研究を行い、専門家との間での意見交換を行う予定である。また、国外の研究者との意見交換もさらに進める予定である。さらに、法的な視点だけではなく、性的な同意に関する心理学的なアプローチをとる研究者との共同研究も進行中であり、そちらの成果も公表する予定である。
19K13549, 不作為による死体遺棄罪の終了時期と公訴時効の成否, 本研究は、不作為による死体遺棄罪の終了時期の問題を中心に検討し、その作業を通じて、作為犯と不作為犯の間に存在する公訴時効の成否に関する不均衡を解消し、訴追の公平性を担保することを目的とする。本研究の目的は、我が国の学説に多大な影響を与えたドイツにおける議論を参照しながら、不作為犯の犯罪の終了時期に関する一般論を展開し、また、死体遺棄罪の解釈論を再検討するという作業を通じて達成される。;これまでの研究のまとめとして、さしあたり我が国における議論を整理・分析し、京都大学にて開催されている京都刑事法研究会で報告を実施した。同研究会には現役裁判官も参加しており、自説に対する実務的観点からの指摘等を受けることができ、非常に有益な意見交換ができた。研究報告の概要は以下のとおりである。;犯罪の終了時期=公訴時効の起算点が争点となった判例を分析すると、判例はそれを、結果発生時、特に最終結果発生時だと解していることが分かる。そこで、構成要件的結果に着目して犯罪類型を分析した場合、(1)法益状況の変化を構成要件的結果とする犯罪類型と、(2)法益状況の変化+当該状況にあることも構成要件的結果だと捉える犯罪類型が存在しているのが分かる。;私見によれば、死体遺棄罪における「遺棄」とは、葬祭義務者による適時・適切な埋葬が行なわれない(おそれを生じさせる)ことであるが、この場合、葬祭義務者による作為の死体「遺棄」には二面性がある。すなわち、①(他の)葬祭義務者の埋葬を困難にする=死体の置かれている状況を変化させて一般的宗教感情を害するという側面と、②葬祭義務者が埋葬をしない=死体の置かれている状況それ自体が一般的宗教感情を害するという側面である。①は上記(1)に対応し。②は上記(2)に対応する。;一方で、葬祭義務者による不作為による死体「遺棄」の場合、②(および(2))の側面しか存在しないがゆえに、葬祭義務者が埋葬義務を履行しない限り、構成要件的結果が発生し続けていると解さざるをえず、犯罪の終了時期=公訴時効の起算点が到来しないことになる。もっとも、半永久的に犯罪の終了時期=公訴時効の起算点が到来しないことは被疑者・被告人にとって多大な不利益であるから、事実上葬祭義務履行が不能な時点でそれが到来すると解する余地はあると思われる。;我が国の議論状況を整理・分析し、そこから一定の成果を導くことはできたものの、ドイツにおける議論の整理・分析・検討が未だ不十分である。これは、2020年から続く新型コロナウイルスの影響および近年話題となっているサル痘の影響によると考えている。これら感染症の影響により、現地の刑法学者との意見交換ができておらず、また資料収集も円滑に進んでいないのが現状である。;残された課題は、ドイツにおける犯罪の終了時期および公訴時効の起算点に関する議論の整理・分析・検討である。さしあたり、手に入れることのできた文献から整理・分析作業を始める。2023年5月より、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変更され、これによりドイツへの渡航のハードルも下がるものと思われる。次年度には、ドイツへの現地調査を実施し、現地での資料収集および現地の刑法学者との意見交換を進め、残された課題を処理し、研究成果をまとめて公表する予定である。
18K01309, 知的エージェントによる有害行為に対する刑事責任, 本調査研究の当初の目的は、知的エージェントの製造者、提供者または管理者・使用者の刑事責任をどのような要件理論構成で肯定できるかということを明らかにし、その関係において、知的エージェントそれ自体の主体性・責任についての考え方の方向性を検討するというものであった。;最終的には、研究協力者の寄与等もあり、知的エージェントの主体性の哲学的基礎づけ方向性、正犯性の問題などさらなる発展的問題、さらには特別法上の行為主体性の検討も行うことができた。過失犯についても、製造物責任のみならず、過失要件との具体的なすり合わせ、自動運転自動車の実装に係る道路交通法条の問題を比較法的に研究した。;いわゆるロボット又はAIについて、現行刑法における諸問題を網羅的に検討し、現状の解釈論を示すことができたほか、レベル4の自動運転自動車について、その社会実装のための道路交通法の日独比較法研究を先端的に実施し、今後の法解釈、運用の先行研究となり得るものとなった。;また、業法領域におけるAIの主体性と業法違反の問題についても、先行的研究となっている。
JP21K01209, 性犯罪規定改正後に想定される実務上の諸問題に関する理論的研究, 研究方法としては、先行研究や判例分析を踏まえた理論的な検討、比較法的な見地からの解決策の模索、実務家からのヒアリングなどによる実態調査、他の研究者との意見交換などを予定している。具体的な研究内容としては、第一に、性犯罪における被害者の同意の判断、第二に故意の認定、第三に、未成年者保護に関する検討、とくに、現在の監護者性交等罪が対象としている場合以外にも、一定の年齢未満の者に影響力を有する者による性交等を処罰するかどうかについて、第四に、被告人/被害者の供述証拠の信用性判断の在り方について検討を行う。;今年度は、長らく議論されてきた性犯罪改正が実現し、不同意性交等罪、わいせつ罪を中心に、新たな規定が創設されたことから、今後の運用上の問題点を予測し、実務に対する理論的な視座の提供を目指した。また、過度な処罰拡張とならないような解釈上の指針を見出すことも目標とした。このような視座の下、2023年6月に行われた日本刑法学会第101回全国大会のワークショップにおいてオーガナイザーとして、「新しい性犯罪規定の解釈論」と題する共同研究の内容を報告した。このワークショップでは、法改正後の解釈論の展開を念頭に置いて、特に、暴行脅迫、抗拒不能要件に代わって規定された、「同意しない意思の形成など困難な状態」の解釈について検討し、実務に対する理論的な視座の提供を目指した。ワークショップでは、佐藤陽子(成蹊大学)に地位利用型、菊地一樹(明治大学)には欺罔類型の解釈、橋本広大(南山大学)にはイギリスにおける運用状況を比較法の対象として検討してもらった。この内容については、2024年1月に発行された「季刊刑事弁護」に掲載された。さらに、同時に成立した性的姿態等撮影罪についても研究を進め、従来は地方公共団体の条例で主に対応されていた撮影の罪について、新たに性犯罪として位置づけられたことから、今後の運用上の問題点を検討した。この内容については、12月に発行された刑事法ジャーナル78号と、翌年3月に発行された関西大学法学研究所研究叢書において公表した。;研究期間の前半は、立法論として、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪を中心に、これまで暴行脅迫や抗拒不能要件の撤廃の是非について、判例分析や比較法的な見地から検討し、過度な処罰範囲の拡張とならないような立法のあり方について提言を行った。これらの研究と並行して、提示された立法案の問題点の検討を行い、さらに、運用上の問題点を想定し、理論的視座の提供を行った。
JP19K13549, 不作為による死体遺棄罪の終了時期と公訴時効の成否, 本研究は、不作為による死体遺棄罪の終了時期の問題を中心に検討し、その作業を通じて、作為犯と不作為犯の間に存在する公訴時効の成否に関する不均衡を解消し、訴追の公平性を担保することを目的とする。本研究の目的は、我が国の学説に多大な影響を与えたドイツにおける議論を参照しながら、不作為犯の犯罪の終了時期に関する一般論を展開し、また、死体遺棄罪の解釈論を再検討するという作業を通じて達成される。;2023年度において、アウクスブルク大学(ドイツ)教授へのインタビューを実施し、同大学図書館にて、日本では入手不可の独語文献を入手した。ここでは、犯罪の終了時期という概念は規範論的には不要な概念であるが、手続法との関係において、公訴時効の起算点を決定する等の機能的な概念としてはなお意義を有するのではないか、逆に言えば、それに資することのできない理論は犯罪の終了時期の理論として不十分なのではないかとの示唆を得た。なお、出張を実施できたのは年度末(2月)であり、そこで手に入れた文献の精読・分析作業は現在進行中である。;本研究では、①ドイツおよび日本における犯罪の終了時期に関する学説を調査し、分析・整理した。通説は、犯罪の終了時期は最終結果の発生時点だと理解しているが、これによれば、本研究の中心にある死体遺棄罪のような危険犯では、危険が残存する限り結果が発生し続けていると考えられることから、犯罪の終了時期が到来しないことになる。しかし、この危険犯に関する犯罪の終了時期の理解は、公訴時効の起算点を決定するという機能を欠き、不適切なものである。;本研究では、②死体遺棄罪における「遺棄」概念を、学説・判例を整理・分析した上で、その保護法益を考慮しつつ検討した。一般人の宗教感情・敬虔感情という死体遺棄罪の保護法益からすると、葬祭義務者による適時適切な埋葬を阻害する行為が「遺棄」に該当する。この理解においては、葬祭義務者自身が埋葬しないという不作為による死体遺棄罪の場合にも、一定期間を過ぎれば「適時適切」な埋葬は実現不可能となるから、犯罪の終了時期が到来したと解すべきことになる。これは、一定期間の経過を重視する公訴時効制度の趣旨および機能的概念としての犯罪終了時期の理解にも合致する。;この本研究の成果は、公訴時効の実質的撤廃を実現する通説的理解を牽制・制限するものであり、意義がある。