ポップカルチャーにおける神社・巫女に関する考察, 石井研士, 國學院大學紀要, 第58輯, 1, 27, 2020年02月, 國學院大学
戦後の神社神道, 石井研士, 明治聖徳記念学会紀要, 復刊第56号, 139, 162, 2109年11月, 明治聖徳記念学会
浄土宗寺院の現状把握を目指して-寺院と神社の比較から-, 石井研士, 第七回浄土宗宗勢調査報告書, 143, 152, 2019年09月, 浄土宗宗勢調査委員会
戦闘美少女と魔法-「セーラームーン」と「プリキュア」に見る魔法の意味-, 石井研士, 國學院大學大学院紀要, 第50輯, 1, 22, 2019年02月, 國學院大学
平成以後の結婚式の変容と儀礼文化の現在, 石井研士, 明治聖徳記念学会紀要, 復刊第55号, 5, 32, 2018年11月, 明治聖徳記念学会
「教団の行う宗教調査の展開と現状」, 石井研士, 『宗教年鑑』, 昭和63年版, 72, 100, 1989年03月01日, 文化庁, 本論文は、戦後実施されてきた宗教調査に関するこれまでの学説史を詳述するとともに、宗教調査の限界と可能性について言及している。そして、宗教団体が自らの教団の実態把握を目的として行ってきた、いわゆる宗勢調査に関して網羅的に資料を収集し、教団毎にそれぞれの調査内容を鳥瞰している。宗勢調査は仏教系に熱心であって、神社系、新宗教系ではほとんど行われていない。
「「宗教の時代」と教団の動向」, 石井研士, 『現代のエスプリ』, 10月号, 25, 33, 1991年10月01日, 至文堂, 本論文は、1960年代以降、宗教社会学において優勢な解釈枠組みとなった世俗化の概念を下敷きにしながら、この概念が現代の日本社会においても適応できるかどうかを追求したものである。この論文では、日本人の宗教性は欧米のような宗教性とは異なり、いぜんとして現代社会においても存続しているが、その社会的重要性は低下していると結論している。
「変貌する都市寺院」, 石井研士, 佐々木宏幹編『仏教と日本人12 現代と仏教』, 244, 270, 1991年12月01日, 春秋社, 本論文は、都市化・過疎化によって社会的基盤が変化し、寺院のあり方自体に大きな変化が生じていることを論じている。都市化によって都市寺院のなかで高層化されるものが出現するようになっている。他方過疎地においては、檀家の減少・流出により寺院の合併・併合、もしくは廃寺が生じている。社会変動によって日本人は明らかに寺院との距離を以前に増して拡大している。
「新宗教運動と世俗化」, 石井研士, 井門富二夫編『アメリカの宗教・第二部 多元社会の宗教集団』, 208, 232, 1992年01月01日, 大明堂, 1970年代以降,世界的規模で生じている新宗教運動の勃興に関して,アメリカを事例に分析した論文。本論文では,なぜ新宗教運動が発生したか,その実態はどのようなものであったか,そうした新宗教運動の勃興を研究者はどのように分析しているか,について詳細に叙述した後に,新宗教運動の勃興を,宗教の社会的影響力縮小過程としての世俗化説との関わりから明らかにしようと試みている。
「東京都の初詣の実態研究」, 石井研士, 『神道宗教』, 第148号, 1, 22, 1992年02月01日, 神道宗教学会, 国民的行事と評される「初詣」の実態と意味を分析した論文。日本人の宗教性を示す典型的な事例としてしばしば引用される初詣の参拝者数は,警視庁によって業務上必要な限りで集計された数値であって,現代日本社会の宗教状況の現状を把握する上では,慎重に扱われなくてはならない数値である。警視庁発表の初詣者数と神社本庁による資料から,初詣の一社集中,および中小神社の参拝者数の減少を指摘し,神社神道の構造的変動を指摘した。
「東京都の初詣の実体研究」, 石井研士, 『神道宗教』, 第148号, 1, 22, 1992年09月01日, 神道宗教学会, 本論文は、東京都における初詣の実体を、世論調査や神社本庁が行った調査、そして著者が実施したアンケート調査をもとにして明らかにしようとする試みである。東京都における初詣は、一部の著名な神社に集中しており、一般的に理解されているように、すべての神社における参拝者の増加を意味していない。むしろ中小の氏神神社では氏子の氏神離れの傾向を確認することができ、初詣は二極化に向かっている。
「情報化と宗教」, 石井研士, 井門富士夫編『アメリカの宗教』, 242, 265, 1992年10月01日, 弘文堂, 高度情報化社会と宗教との関わりを,アメリカを事例にして論じた論文。高度情報化社会にあるアメリカにおいて,宗教団体を取り巻く情報環境は大きく変容し,新しい不況や組織形態を持つ宗教団体が,文化的領域のみならず政治の領域においても影響力を持つようになっている。アメリカの宗教団体のコンピューター,通信衛星利用を主にして,宗教団体を取り巻く情報環境が急激に変化する中で,宗教団体はどのような発展もしくは変容を遂げていったのかを分析している。
「年中行事にみる日本人の宗教生活の変容」, 石井研士, 脇本平也・柳川啓一編『現代宗教学3 祀りへのまなざし』, 57, 74, 1992年10月01日, 東京大学出版会, 本論文は,近代化と宗教の関係をテーマに,具体的な日本人の宗教生活の変容を,年中行事の構造的変容に着目して明らかにしようと試みたものである。まず民俗学が研究対象とする伝統的な年中行事が都市社会においてはほとんど行われていない事実をアンケート調査から明らかにし,現在も行われている正月とお盆自体も意味構造に変化の見られることを指摘した。他方,戦後になってクリスマスやバレンタインデーなど,キリスト教文化に含まれる行事が定着した点を明らかにし,結論部分において,現代日本人の年中行事の構造分析を通じて,日本人の宗教性の変容を論じている。
「戦後の東京都の神社の変容の解明に向けて」, 石井研士, 『國學院雑誌』, 第94巻第9号, 1, 19, 1993年09月01日, 國學院大學, 神職の在住する東京都の全神社に対してアンケート用紙を送付し,戦後の神社活動,地域社会の評価,活動の現状,神社の将来像に関する質問の結果を分析した論文。回答結果によると,神社活動の基盤となる氏子に,かなりの変化が確認できた。とくに人口流動の高い都心区においては,一般的な意味での氏子は激減し,他方で「氏子」の意味を拡大する傾向が把握された。活動に関しても,地域に密着した活動はしだいに衰退する一方で,広域にわたる崇敬者を集める工夫が実施されている。神社が都市化によって大きな影響を受け,その結果神社神道の構造的な変容を確認することができた。
「都市の氏神さま」, 石井研士, 九学会連合地域文化の均質化編集委員会『地域文化の均質化』, 109, 116, 1994年02月01日, 平凡社, 都心に位置する神社のケーススタディを行うことによって,都市化が神社神道に与えた影響と,神社の対応を分析した論文。文明開化の地といわれ,高度経済成長期のシンボルとして存在した銀座に位置するふたつの神社と,戦後初めての都市再開発計画対象地となった大阪梅田地区の小祠を,地域社会の変化との関わりで扱っている。とくに銀座に関しては,調査対象とした二つの神社はどれもビルになり,これまでの神社の概念からは大きくずれるものであり,都市化に対応する神社のあり方のひとつの典型と考えられる。
「七五三に見る通過儀礼の変容」, 石井研士, 『明治聖徳記念学会紀要』, 第12号, 63, 85, 1994年08月01日, 明治聖徳記念学会, 結婚式,葬儀とともに,日本人の典型的な通過儀礼の一つとされる七五三について,戦後の変化と現状を分析した論文。まず,戦後盛んになったとされる七五三は,地域的要因と神社の規模によって偏差が大きいことを指摘した上で,明治神宮,神田明神,稲毛神社,花園神社のデータをもとに,戦後の変化と現状が分析された。昭和50年代からしだいに15日から他の日にちへと拡散する一方で,土日への集中現象が始まったことを指摘している。こうした傾向は,神社による偏差がみられず,日本人の生活様式の変化,特に神社との関わりの変化が七五三によって示されたものと考えることができる。
「日本人の宗教意識再考-日本人は非宗教的か-」, 石井研士, 『國學院雑誌』, 第94巻第9号, 1, 19, 1994年09月01日, 國學院大學, 昭和50年代から始まった,諸外国の価値観調査に含まれる宗教項目に着目し,非宗教的であるとして期される日本人の宗教性を,客観的に明らかにしようとした論文である。日本人は自覚的な意味での信仰はきわめて低率であり,宗教団体への帰属や期待に関してもきわめて消極的否定的な傾向が示されている。他方,霊魂観やある種の宗教項目に関しては,必ずしも低い宗教性が示されておらず,諸外国と異なった複雑な日本人の宗教性が明らかになってくる。こうした点で注目されるのは,「日本人の曖昧な宗教性」である。
「初詣と七五三」, 石井研士, 飯島吉晴編『民俗学の冒険① 幸福祈願』, 68, 94, 1999年04月01日, ちくま書房, 本論は、日本人に広く見られる基本的な宗教行為である初詣と七五三の現状に焦点を当てて、現代日本社会と日本人におけるそれぞれの儀礼の意味を考察している。現在の初詣と七五三は伝統的な共同体において実施されていたときに聖性を失い、不安定な個人が家族や共同性を生み出そうとする試みである。しかしながらこの試みは、高度情報化するメディアの中で翻弄されているように見える。
「高度情報化社会の中で再生される伝統文化」, 石井研士, 『國學院雑誌』, 第100巻第11号, 18, 33, 1999年11月01日, 國學院大學, 戦後における社会変動と宗教との関係を考えたときに、社会変動が一方向的に伝統宗教の衰退をもたらしたとされたと指摘される。たとえば、都市化によって伝統宗教はその基盤とする地域社会や「家」が揺るぎ、都市に発生した宗教浮動人口の一部は新宗教へと吸収されていったということになる。ところが高度情報化は伝統行事の維持もしくは再生をうながす傾向があり、社会的に認知された神社や寺院の行事がメディアを通じて放映されるのである。さらには新宗教への無関心もしくは批判的態度を生み出している。
「都市神社の持続と変化」, 石井研士, 『北区飛鳥山博物館研究報告』, 第2号, 1, 44, 2000年03月01日, 東京都北区教育委員会, 本論は、東京都北区に位置する崇敬社を対象として、都市神社の聖性の持続と変化を神社を取り巻く環境の変化とともに論じたものである。対象とした崇敬社は境内地に次々と多層建築物を設けるとともに、境内地の縮小を余儀なくされ、また地域の聖性を象徴する水場(現在は公園)とも空間的に切り離されてしまったために、その名所性をしだいに喪失しつつあるように思える。
「社会変動と民俗-高度情報化社会の中で再生される民俗的世界」, 石井研士, 香月洋一郎・赤田光男編『講座日本の民俗学10 民俗研究の課題』, 106, 121, 2000年04月01日, 雄山閣, 本論文は、日本社会の高度情報化にともなって、伝統的な民俗世界も再生している点を調査から明らかにしている。宗教に関するメディアの扱いは、オウム真理教や法の華三法行といった事件報道が中心と考えられているが、他方で、ニュース報道において季節の移り変わりや地方色を表すものとしてかなり頻繁に神社や寺院の行事が取り上げられている。個々の報道はきわめて短い時間ではあるものの、いぜんとして日本人の間にそうした行事が意味を持っていることをメディアは日本人に思い起こさせる機能を果たしている。
「日本人の「宗教団体」に対する意識と実体について」, 石井研士, 『中央調査報』, No.510, 1, 4, 2000年04月01日, 中央調査社, 平成11年に文部省の科学研究費によって、日本人の宗教団体に対する意識・認知・評価に関する世論調査を実施した。調査は全国規模の世論調査で、宗教団体に関してだけ行われた世論調査としてははじめてもものである。調査の結果、現代の日本人の大半は神社、寺院、キリスト教の教会、新しい宗教のどれにも具体的な関わりを持っていなかった。他方で、新しい宗教団体に関しては、実生活では関与がないにも係わらず「怖い」「あぶない」などきわめて厳しい意識や態度が存在することが明らかになった。
「ラジオと宗教放送」, 石井研士, 『國學院大學紀要』, 第39巻, 1, 18, 2001年03月01日, 國學院大學, 本論文は、メディアと宗教との総合的な関係を明らかにすることを目的として、とくに日本におけるラジオ放送の開始と宗教放送の実態を詳細に追求している。大正14年に開始されたラジオ放送では、開設から二ヶ月後に宗教番組が登場している。ラジオ放送の公共性、教育的側面を鑑みてのことであった。その後、ラジオの発展とともに番組数、時間数は増加し、聖典購読のような大ヒットした番組も現れることになった。しかしながら昭和16年になって、戦時体制が厳しさを増す中で、宗教番組はその姿を消すことになる。
「現代日本における儀礼文化の持続と変容の理解に向けて」, 石井研士, 『明治聖徳記念学会紀要』, 復刊第37号, 1, 14, 2001年06月01日, 明治聖徳記念学会, 本論は、戦後の儀礼文化の変容を、通過儀礼を考察することで明らかにしようと試みている。戦後の儀礼文化を見ていると、伝統的な儀礼文化が消失していったことがわかる。村落共同体で行われていた子供をめぐる儀礼、成年式の儀礼は、村落共同体の衰退と共に消えていった。他方、現在でも成人式として残っている儀礼は、本来の儀礼の意味を失い「変容」している。他方で、伝統的な儀礼から解放された現代人は、情報化の中で新たな儀礼を作り上げつつある。「人生の節目」を形成するための儀礼の分析は、現代日本の文化を知るための鍵である。
「日本人の宗教行動」, 石井研士, 石井研士・養老孟司・井沢元彦・金子昭・秋田光彦・川島通資・西山茂『宗教と人間の未来シンポジュウム「21世紀日本の宗教を考える」記録』, 22, 37, 2001年10月01日, 白馬社, 本論文は、戦後の日本人の宗教意識・宗教行動の変化を概観しながら、現代日本社会における宗教団体の意味・役割について論じたものである。日本人の宗教意識・宗教行動は、戦後しだいに低下し、かつてはマジョリティであった「信仰在り」の割合は7割前後から3割へと減少した。また、日常生活の中に浸透して存続してきた宗教性に関しても、仏滅の結婚、友引の葬儀、清め塩、夢見、名前の画数など、日本人は高所しなくなっている。他方で、宗教団体への批判は戦後一貫して強くなっている。しかしながら宗教団体への批判は、実態を承知してのことと言うよりは、メディアによる影響が大きい。日本人は、実態を知らないにもかかわらず、宗教団体への批判を強めていると考えられる。
「戦後のラジオでの宗教放送とテレビ放送への移行」, 石井研士, 『國學院大學紀要』, 第41巻, 2003年02月01日, 國學院大學, 本論文は、現代の巨大なテレビ・メディアが神社のどのような情報を好み、放送しているかを明らかにすることを目的としている。同時に、現代日本人が神社についてどのようなイメージを形成しているかを問題としている。テレビにおいては、現代社会において劣勢が指摘される伝統宗教に関する情報がかなりの程度流通している。日常生活の中では行われることのなくなった伝統行事に関わるさまざまな儀礼や行動がメディアを通して適切な時期に繰り返し伝達される。しかしながらメディアのなかで再生される神道的世界は、祭りを行う共同体の文脈から切り離され、今ではどこにも存在しない、強いていえば我々日本人の心意にしか存在しないものである。
「戦後におけるラジオでの宗教放送の変化」, 石井研士, 『國學院大學大学院紀要-文学研究科-』, 第34輯, 141, 172, 2003年03月01日, 國學院大學大学院文学研究科, 本論文は、高度情報化社会における宗教のあり方を考察するために、本格的な電波メディアとして登場したラジオにおいて、宗教放送がどのように行われてきたのかを、具体的な資料を基にして考察することを目的としている。ラジオでの宗教放送は戦後一貫して増加するが、地方局での増加であってキー局では減少する。放送を行う教団数も減少しており、特定の教団が多くの地方局で長時間放送をしている実態が明らかになった。放送時間帯も土日の早朝に集中しており、ラジオでの宗教放送は必ずしも教団側、一般の日本人に広く受容されたとはいえない。
「現代日本人の神観念の把握と世論調査」, 石井研士, 『國學院雑誌』, 第104巻第11号, 1, 18, 2003年11月01日, 國學院大學, 現代日本人の神観念・宗教観の現状を理解するために世論調査の結果を利用することは、共通の分析基盤を持つという意味で重要である。日本人の神観念は、キリスト教やイスラームのように、教義に基づく正当な神観念が存在せず、日常生活の中に拡散している。こうした神観念を理解するために、これまで実施されてきた宗教に関する世論調査において明らかになった神観念を抽出する。日本人は一般的に、「神」と「仏」を分けず、「神仏」と一体化し、その職能も明確に区別していない。今後とも、注意深い調査が必要である。
「世論調査による「神観念」もしくは日本人の宗教性理解の可能性と限界-世論調査の実施に向けて」, 石井研士, 『國學院大學21世紀COEプログラム「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」研究報告書』, 265, 276, 2003年12月01日, 國學院大學21世紀COEプログラム研究センター, 本論文は、世論調査による日本人の宗教性・神観念の把握の可能性と限界を論じている。日本人の宗教性は、自覚的意識的あるいは特定の教団に所属することによって形成される宗教性・神観念とは性格を異にしている。日本人の宗教性を理解するためには、1.宗教団体への帰属に関する質問、2.宗教意識と宗教行動に関する質問(宗教団体に帰属しているかどうか、自覚的意識的かどうかは別)、3.宗教に対する認知や評価に関する質問の三つの段階を設けて、日本人の宗教意識や行動を比較検討する必要がある。
「怪しげな心霊番組が未だに野放し状態なのはなぜか」, 石井研士, 『寺門興隆』, 98, 105, 2004年04月01日, 興山社, 21世紀の宗教は、メディアとの関わりを抜きにして語ることができない。第一に、新聞、テレビをはじめとする多様なメディアが供給する宗教情報は、ますます多くなっている。こうした情報の大半は、霊の存在を面白おかしく扱ったヴァラエティ番組や、詐欺事件をはじめとした宗教団体の事件報道である。第二には、宗教者や宗教団体がインターネットやビデオ、あるいは衛星放送を利用して、自分たちのメッセージを積極的に打ち出すようになっている。日本社会の急速なIT化・高度情報化は、日本人の宗教意識や感覚に大きな影響を及ぼしている。
「白装束集団に対する集中報道はなぜ起こったのか」, 石井研士, 『ラーク便り』, 第22号, 37, 41, 2004年04月01日, 宗教情報センター, 平成15年4月27日から約一ヶ月間に渡って、茶の間に白装束集団の映像が営々と流された。現在、当時の狂騒ぶりは明らかに異常だったといっていい。しかしながらこの「異常さ」は白装束集団に限られたことではない。イエスの方舟の集団失踪事件、オウム真理教の一連の事件、ライフスペースのミイラ事件、法の華三法行による巨額詐欺事件など、繰り返し繰り返し我々の眼前に繰り広げられてきた光景である。本論では、パナウェーブ研究所をテレビニュースがどのように取り上げたかを見ることで、この問題に関する資料と視点を提供している。
「原田敏明の宗教社会学-宗教と社会の一般論を求めて」, 石井研士, 『宗教神祭』, 358, 375, 2004年06月01日, 岩田書院, 本論文は、一般的に民俗学者として認識されている原田敏明の研究対象、分析方法を精査することで、宗教学者としての側面を浮かび上がらせることを目的としている。原田敏明は宗教社会学者のデュルケムに着想をえて個別の民俗事象の差異や特徴も考慮した分析を行っていたと考えることができる。原田は、日本には珍しい、社会と宗教、あるいはその社会における個人の存在様式を宗教の分析から一般化し、明らかにした稀少な研究者であるということができる。
「戦後における神前結婚式の隆盛と儀礼の交代」, 石井研士, 『明治聖徳記念学会紀要』, 復刊第39号, 23, 50, 2004年06月01日, 明治聖徳記念学会, 神前結婚式は、明治時代に考案されたが、一般に流布するのは高度経済成長期になってからである。戦後、脱儀礼化が進行したにもかかわらず、結婚式は逆に儀式化が進んだ。披露宴の前に挙式が行われることが当たり前になった。1990年代になって神前式結婚式の占める割合は急減し、現在はチャペルウェディングが主流となっている。神前式が「伝統」のイメージをまとい「家」や「忍耐」を連想させる一方で、チャペルウェディングは、個人と個人が愛情によって結ばれる幸せを表現するのに、ふさわしい儀礼として受け止められたのではないか。
「テレビにおける宗教放送に関する規制をめぐる諸問題-なぜ心霊番組・超能力番組は放送できるのか」, 石井研士, 『國學院大學日本文化研究所紀要』, 第94輯, 25, 54, 2004年09月01日, 國學院大學日本文化研究所, テレビにおける宗教放送に関しては、いくつかの条件・規制が設けられている。憲法に発し、放送法の精神を汲んだNHKの放送基準や民放連の番組基準には、宗教に関するいくつかの条項を見ることができる。こうした基準を遵守すると、宗教団体は自らの信仰の表明や儀礼の説明にかなりの制約を課されることになる。他方で、宗教団体提供ではない番組、とくにいわゆるヴァラエティ番組では、心霊特集、占いの特集、超能力番組、血液型等の非科学的番組がかなりの時間数流れ、中には高い視聴率を獲得するものまで現れている。本論は、こうした形式上の制約と実際の放送の乖離を分析するものである。
「電子メディアの可能性と宗教のゆくえ」, 石井研士, 池上良正他編『岩波講座宗教10 宗教のゆくえ』, 79, 102, 2004年10月01日, 岩波書店, 進行する高度情報化社会において宗教は大きく変容しつつある。メディアと宗教の関係は三つに分けて考えることができる。第一はきわめて一般的な意味で「メディア」と「宗教」の関係である。第二は、メタファーとしてのメディアで、高度情報化社会においてはメディアに宗教的側面のあることが強調される。第三はメディアとしての宗教で、宗教が目的ではなく、手段化する現象が見られる。恋愛依存、ドラッグの服用、過食・拒食のような自分探しの手段として宗教やカルトが選ばれる。宗教とメディアをめぐる三つの関係性は、それぞれ相互に関連しながらメディアの複雑化に従っていっそう複雑さの度合いを増している。
「日本人の神社に対する関与と評価に関する考察」, 石井研士, 『神道宗教』, 第198号, 147, 149, 2005年04月01日, 神道宗教学会, 本論文は、日本人の神社に対する関与と評価に関して、世論調査等のデータを利用しながら考察したものである。日本人は特定の宗教団体へ帰属しない傾向にある。その場合の「宗教団体」は、キリスト教や新宗教のように、会員として登録し、会費を払うようなものを念頭に置いている。しかしながら、それ以外の伝統的な宗教団体、とくに神社と日本人がまったく無関係であるという事実は、実生活の上からもありえない。他方で、神社神道を「信仰している」とする回答者が存在する。そうした神社神道を信仰する者の関与と評価を明らかにしている。
「神前結婚式における「家」の変貌と個人の創出」, 石井研士, 『明治聖徳記念学会紀要』, 復刊第43号, 92, 106, 2006年11月01日, 明治聖徳記念学会, 本論文は、日本人にとって重大な儀礼となった結婚式の歴史的形成過程を、「家」もしくは「家」観念の変容との関係から理解しようとしたものである。神前結婚式は、戦後とくに昭和30年代になって隆盛となる。それは「家」制度が壊れてもなお残る「家」観念を持つ親世代と、スマートで都会的な儀礼と映った神前結婚式を望む子ども世代との妥協の産物であった。神前結婚式を担った団塊の世代の子世代である団塊ジュニアには、「家」制度も「家」観念も残っておらず、二人の幸せを象徴するために選ばれたのがチャペルウェディングである。
「神社神道の現状と未来-現代における儀礼文化の変容と神社神道」, 石井研士, 『文部科学省21世紀COEプログラム 神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成 研究報告Ⅲ』, 153, 165, 2007年01月01日, 國學院大學, 本論文は、戦後の日本における基層文化としての神道の変容を、儀礼の変化から捉えようとする試みである。地域社会の構造的変動によって、儀礼文化としても神社神道も大きく変容していることが理解できる。
「現代神道研究の現状と課題-現代における神道と日本文化」, 石井研士, 『文部科学省21世紀COEプログラム 神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成 研究報告Ⅲ』, 166, 178, 2007年01月01日, 國學院大學, 本論文は、情報化と宗教、とくに神道との関わりがどのようなものであるかを実証的に研究したものである。
「現代日本人の宗教意識と神道-世論調査から」, 石井研士, 『文部科学省21世紀COEプログラム 神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成 研究報告Ⅲ』, 179, 192, 2007年01月01日, 國學院大學, 本論文は、世論調査の結果から、日本の基層文化である神社神道がどのように維持もしくは変容したかを明らかにしようとしたものである。
「細木数子番組の人気と、この国の不幸な宗教文化」, 石井研士, 『宗教と現代がわかる本 2007』, 186, 191, 2007年03月01日, 平凡社, 本論文は、現代社会におけるテレビにおいて、どのような宗教情報が流されているのかを、実証的に分類整理したものである。生活の中の宗教が色あせる一方で、テレビでは霊能・超能力番組が放送され続けている実態を明らかにしている。
「氏神信仰の10年 「神社に関する意識調査」から」, 石井研士, 『第3回『神社に関する意識調査』報告書』, 67, 78, 2007年10月01日, 神社本庁教学研究所, 本論文は、平成18年に実施された「第3回 神社に関する意識調査」の結果を分析したものである。
「テレビの放送にかかる法的規制に関する考察」, 石井研士, 『宗教法』, 第26号, 79, 94, 2007年11月01日, 宗教法学会, 本論文は、テレビで放送される宗教にかかる規制について、法的な視点から考察したものである。
「現代日本人の魂のゆくえ」, 石井研士, 『明治聖徳記念学会紀要』, 復刊第44号, 181, 190, 2007年11月01日, 明治聖徳記念学会, 本論文は、現代日本人の魂のゆくえについて論じたものである。
「霊のいるトコロ」, 石井研士, 『霊はどこにいるのか』, 114, 127, 2007年12月01日, 青弓社, 本論文は、テレビにおける霊を扱う番組の歴史と問題点を扱っている。
「宗教に関するメディア・ストレオタイピン試論」, 石井研士, 『國學院大學日本文化研究所紀要』, 第百輯, 169, 198, 2008年03月01日, 國學院大學日本文化研究所, 本論文は、テレビの中でステレオタイプ化されて放送される宗教の実態を調査研究したものである。
「宗教団体の公益活動・公益性に関する一考察」, 石井研士, 『國學院大學大学院紀要』, 第39輯, 1, 24, 2008年03月01日, 國學院大學, 本論文は、宗教もしくは宗教団体の公益性について、具体的な歴史と現状の上に立って論じる必要性を指摘している。
「現代社会における神道教学の諸問題」, 石井研士, 『神社本庁教学研究所紀要』, 第13号, 177, 204, 2008年03月01日, 神社本庁教学研究所, 本論文は、現代社会、とくに戦後の社会変動の中で、神社神道がどのように変容を迫られ、対応してきたかを論じ、現代の方向性をいくつかの方向性における格差の増大として説明している。
「テレビは心霊番組をなぜ続ける」, 石井研士, 『寺門興隆』, 4月号, 86, 94, 2008年04月01日, 興山舎, 本論文は、テレビでバラエティとして放送される心霊番組・超能力番組等がなぜ放送できるのかを、日本人の宗教性の変容との関係から論じている。
「ステレオタイプ化する宗教」, 石井研士, 『現代宗教2008 メディアが生み出す神々』, 80, 90, 2008年08月01日, 秋山書店, 本論文は、テレビで報道されるステレオタイプ化された宗教の現状とその問題点に言及している。
「日本人の宗教観今とこれから」, 石井研士, 『文化庁月報』, NO.483, 12, 15, 2008年12月01日, 文化庁, 戦後における日本人の宗教意識と宗教行動を、世論調査の結果から概説した。
「神社神道はどこへ行くのか」, 石井研士, 『皇學館大学神道研究所紀要』, 第25輯, 23, 48, 2009年03月01日, 皇學館大学, 戦後の社会変動と神社神道との関わりを、現代の情報化まで考察した論文。
「テレビと宗教」, 石井研士, 『全国弁連通信』, NO.130, 34, 38, 2010年01月01日, 日本弁護士連合会, テレビが日本人の宗教性に対してどのような影響を及ぼしてきたかを、実証的に根拠付け、現代社会における問題性を指摘している。
「神社神道の公益性・公共性」, 石井研士, 『神社新報創刊60周年記念出版 戦後の神社・神道- 歴史と課題』, 248, 250, 2010年02月03日, 神社本庁総合研究所監修、神社新報創刊60周年記念出版委員会編、神社新報社, 宗教団体の公益性が問題になる中で、神社神道が有する公共性・公益性について、「公益性」の定義を足がかりにしながら、神社神道の公益性のあり方を考察した。
「神社界と情報化」, 石井研士, 『神社新報創刊60周年記念出版 戦後の神社・神道-歴史と課題 -』, 254, 257, 2010年02月03日, 神社本庁総合研究所監修、神社新報創刊60周年記念出版委員会編、神社新報社, 情報化社会における神社神道の抱える諸問題を、とくにインターネット利用の現状に即して考察した。
「神社界と情報化」, 石井研士, 『神社新報創刊60周年記念出版 戦後の神社・神道-歴史と課題-』, 254, 257, 2010年02月03日, 神社本庁総合研究所監修、神社新報創刊60周年記念出版委員会編、神社新報社, 情報化社会における神社神道の現状を、インターネットの普及を中心に概説した。
「社会意識の変容と神社」, 石井研士, 『神社新報創刊60周年記念出版 戦後の神社・神道-歴史と課題 -』, 419, 422, 2010年02月03日, 神社本庁総合研究所監修、神社新報創刊60周年記念出版委員会編、神社新報社, 戦後の日本人の宗教性、宗教行動の変化を背景にして、現代日本社会において神社神道がどのようになっているかを世論調査から明らかにしたもの。
「変化する日本人の宗教意識と神観」, 石井研士, 『國學院大學紀要』, 第48輯, 107, 119, 2010年03月01日, 國學院大学, 平成20年に実施した日本人の宗教意識に関する世論調査の報告論文。
「遷宮を継承する次代とは誰なのか」, 石井研士, 椙山林継編『日本基層文化論叢』, 556, 568, 2010年08月01日, 雄山閣, 伊勢神宮への参拝状況を世論調査から分析するとともに、遷宮を担う神社の後継者に関する調査の結果を示したもの。
「日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか」, 石井研士, 『東洋学術研究』, 第49巻2号, 254, 274, 2010年11月18日, 東洋学術研究所, 世論調査から、日本人の宗教団体に関する関与・認知・評価について述べたもの。
日本人への宗教団体への関与・認知・評価に関する一考察, 石井研士, 國學院大學大学院紀要, 第42輯, 167, 182, 2010年11月01日, 國學院大學
宗教法人の事業を通して見た宗教界の現状とこれから, 石井研士, 日宗連通信, 4, 7, 2011年11月01日, 日本宗教連盟
日本人への宗教団体への関与・認知・評価に関する一考察, 石井研士, 國學院大學大学院紀要, 第42輯, 167, 182, 2011年11月01日, 國學院大學
日本の宗教団体の現状-9千5百の宗教法人の調査から, 石井研士, 宗務時報, No.112, 1, 14, 2011年07月01日, 文化庁
現代における「よみがえり」考, 石井研士, 國學院雑誌, 第123号第8号, 1, 16, 2012年08月01日, 國學院大學
渋谷のキリスト教, 石井研士, 『渋谷の神々』, 229, 248, 2013年02月01日, 弘文堂
新宗教と渋谷, 石井研士, 『渋谷の神々』, 249, 268, 2013年02月01日, 雄山閣
社会貢献活動の来し方と行く末, 石井研士, 日宗連通信, 4, 7, 2013年02月01日, 日本宗教連盟
The stereotyping of Religion in Conemporary Japan, 石井研士, Journal of Religion in Japan 2, 1, 21, 2013年04月01日, Brill
機械の中の幽霊, 石井研士, 宗教研究, 第377号, 55, 79, 2013年09月01日, 日本宗教学会
宗務行政百年と宗務行政, 石井研士, 文化庁月報(オンライン版), 2013年09月01日, 文化庁
戦後の宗務行政が実施した調査について, 石井研士, 宗務時報, No.117, 45, 64, 2014年03月01日, 文化庁
情報公開をめぐる宗教法人と行政, 石井研士, 『宗教法』, 第33号, 169, 192, 2014年11月01日, 宗教法学会
神社神道と限界集落化, 石井研士, 『神道宗教』, 第237号, 1, 24, 2015年01月01日, 神道宗教学会
大人になるということ, 石井研士, 互助会保障株式会社・一般財団法人全日本冠婚葬祭互助協会編『冠婚葬祭の歴史 人生儀礼はどう営まれたか』, 38, 60, 2014年11月01日, 水曜社
厄年と記念日, 石井研士, 互助会保障株式会社・一般財団法人全日本冠婚葬祭互助協会編『冠婚葬祭の歴史 人生儀礼はどう営まれたのか』, 32, 36, 2014年11月01日, 水曜社
婚-夫婦となる, 石井研士, 互助会保障株式会社・一般財団法人全日本冠婚葬祭互助協会編『冠婚葬祭の歴史 人生儀礼はどう営まれたのか』, 38, 60, 2014年11月01日, 水曜社
「生き残る神社、生まれ変わる神社」, 石井研士, 『東京人』, 4月号, 68, 74, 2015年04月01日, 都市出版
Faith-Based Organizations' Contributions to Society, Past and Present, 石井研士, DHARMA WORLD , Vol.42, 4, 7, 2015年04月01日, Kosei Publishing Co.
機械の中の幽霊(<特集>科学・技術と宗教), 石井 研士, 宗教研究, 87, 2, 303, 327, 2013年, 日本宗教学会, 本論では、情報環境と宗教との関わりを、印刷技術の発展、電波メディアとしてのラジオとテレビ、テレビにおける新しい制度的基盤の構築、そして断片的であるが、コンピュータを中心としたネットワーク社会における宗教について論じている。我々を取り巻く技術の進歩は、かつてないほど急速である。とくにコンピュータを中心とする情報環境の変化は、我々の宗教性に大きな変容を迫っている。本論が問題とするのは、たんに情報環境の変化が宗教性に変化を及ぼしているということではない。現在のテクノロジーが、従来、宗教文化を支えてきた宗教者や宗教団体とは異なった制度的基盤を構築したことを明らかにしようとするものである。宗教文化を支える新しい制度の原理は、苦しむ人々の救済やこの世の安寧ではない。我々の心性に潜む民俗宗教的な世界であったり、憎悪や極端に偏る関心が、新たらしい制度を基盤にして増幅され誇張されて現出している。
コメント2(IV コメント・質疑応答・総括,宗教が創り出す新しい絆,ワークショップ(1),2001年度ワークショップ記録), 石井 研士, 宗教と社会, 8, 0, 169, 170, 2002年, 「宗教と社会」学会
新井一寛・岩谷彩子・葛西賢太編, 『映像にやどる宗教、宗教をうつす映像』, せりか書房, 二〇一一年六月刊, A5判, 二八九頁, 二八〇〇円+税, 石井 研士, 宗教研究, 86, 1, 175, 178, 2012年, 日本宗教学会
改訂版 プレステップ宗教学 第3版, 石井研士, 弘文堂, 2020年03月
改訂新版 日本人の一年と一生 変わりゆく日本人の心性, 石井研士, 春秋社, 2020年01月
埼玉県・後継者問題実態調査報告書, 石井研士, 埼玉県神社庁, 2019年03月
『宗教のダイナミックス』, 石井研士・ヤンスィンゲドー, ヨルダン社, 1992年09月01日, 本書は、近代になって宗教社会学の主流の解釈枠組みとなった「世俗化」の概念を詳細に分析したものである。筆者のカール・ドベラーレは、これまでに公表された「世俗化」に関する著作・論文を渉猟した上で、「非聖化」「宗教変動」「宗教への関与」の三つに分類している。「世俗化」が一方的な非宗教化を意味せず、宗教の個人化としても把握されるべきものであると述べている。
『銀座の神々-都市に溶け込む宗教』, 石井研士, 新曜社, 1994年03月01日, 本書は,近代化と宗教の関係をテーマに,都市化によって宗教がどのように変容するのかを,銀座という特定の地域社会とそこに生息する宗教との関係から明らかにしようと試みたものである。「銀座の近代化と創出される神話」では近代化の中で生み出される小祠を,「都市化の中の神々」では神社の変容を,「キリスト教の波」では文明開化とその後のキリスト教の撤退を,「企業神の群像」では企業の祀る神々を扱い,結論部分において,世俗化説の日本への適応の可能性に言及している。
『都市の年中行事-変容する日本人の心性』, 石井研士, 春秋社, 1994年09月01日, 本書は,近代化と宗教の関係をテーマに,具体的な日本人の宗教生活の変容を,個々の年中行事に着目して明らかにしようと試みたものである。まず「脱落する年中行事」において,近年いかに伝統社会において存在した年中行事が日本人の生活から脱落していったかを統計資料を用いて示し,「伝統行事の変貌」では正月など現存する行事にも変容が生じていることを指摘した。他方,クリスマスやバレンタインデーが戦後定着した理由を明らかにし,結論部分において,現代日本人の年中行事の構造分析を通じて,日本人の宗教性の変容を論じている。
『消費される宗教』, 石井研士・島薗進, 春秋社, 1996年03月01日, 本書は、現代の日本社会の基本的構造である「消費」と「情報化」と宗教との関わりを扱っている。冒頭に、オウム真理教による地下鉄サリン事件の直後であったこともあり、二人の社会学者と二人の宗教学者によるオウム真理教の分析を行った。対談の後に、「消費」と「情報」に関する論考を行った。高度大衆消費社会の中で、宗教もまた消費されている実体が存在し、情報化はこうしけ傾向をいっそう強めているように思われる。
『データブック 現代日本人の宗教-戦後50年の宗教意識と宗教行動』, 石井研士, 新曜社, 1997年10月01日, 本書は、戦後50年間に生じた日本人の宗教意識と宗教行動の変化を世論調査を用いて実証的に把握しようとした著作である。戦後、日本人の宗教意識は明らかに低下し、具体的な宗教行動もまた減少している。特に、高齢層での非宗教化が進んでおり、50代以上になっても信仰を有している人は半数以下である。他方で、宗教団体への批判的見解は強まる一方である。戦後の日本人は明らかに宗教性を低下させている。
『戦後の社会変動と神社神道』, 石井研士, 大明堂, 1998年06月01日, 戦後の社会変動と神社との関係を、これまでの研究論文を批判的に検討し、実証的な資料から明らかにすることを目的としている。戦後の社会変動と神社との関係は「格差の増大」として把握されるべきものである。そして社会構造上の変化がもたらした宗教的変容は、現在ではひとつの文化的な流れとして定着したもので、急激な社会構造の変化の後に、文化変容が生じたということができる。
『後継者問題の現状と問題点』, 石井研士, 新潟県神社庁, 2000年05月01日, 本書は、宗教界における後継者の問題を、現代における神社や寺院、神職や僧侶の社会的評価を踏まえた上で、具体的な調査資料を基に分析したものである。近年、神社や寺院の後継者難が指摘されることが多い。他の職業において家の子どもが継ぐように、神社や寺院においても継承率は高くなっている。しかしながら後継の点では地域によるおおきな相違が見られ、経済的に有利な地にある神社や寺院は後継者が存在し、兼職や兼務を強いられる地域では後継者を見いだすことが難しくなっている。
『手にとるように宗教がわかる本』, 石井研士, かんき出版, 2002年02月01日, 本書は、宗教に関心のある者を対象に、宗教現象にどのようにアプローチしていくかを平易に解説したものである。内容は六部構成で、「宗教とは何か」「宗教の誕生のわけ」「宗教の世界観」「宗教の体験的側面」「現代日本の宗教事情」「現代社会と宗教」となっている。それぞれの章はさらに区分されている。
『日本人の一年と一生 変わりゆく日本人の心性』, 石井研士, 春秋社, 2005年01月01日, 本書は、現代日本人の一年と一生を具体的な行事や儀礼の分析を通じて明らかにしようとしたものである。戦後伝統的な儀礼は、年中行事・通過儀礼を問わず衰退してきた。農耕と関わる年中行事は産業構造の変化とともに姿を消していった。正月やお盆など残った行事もそのメデタサや祖先崇拝の意味を変容させた。通過儀礼においても、出産のケガレ感が消失し、一人前の大人としての成年式の意味は失われることになった。伝統的な儀礼の意味が失われる中で、個人や家族による意味の構築が行われている。
『日本人の宗教意識・神観に関する世論調査2003年 日本人の宗教団体への関与・認知・評価に関する世論調査2004年 報告書』, 石井研士, 國學院大學, 2005年10月01日, 本報告書は、本学COEプログラムで2003年と2004年に行った世論調査の報告書である。2003年の調査は『日本人の宗教意識・神観に関する世論調査』で、2004年は『日本人の宗教団体への関与・認知・評価に関する世論調査』である。2003年調査は、日本人の宗教意識と行動に関する広範囲な質問を行い、2004年調査は、日本人が宗教団体に対して、どのような認知、関心、評価を行っているかを質問した。後者の調査では、宗教団体を一括して扱うことを避け、神道(神社)、仏教(寺院)、キリスト教(教会)、新宗教とすることで、従来は行われることのなかった系統別の調査が可能となった。
『結婚式 幸せを創る儀式』, 石井研士, 日本放送出版協会, 2005年12月01日, 本書は、結婚式の成立と戦後の神前式結婚式の普及、そして1990年代に生じた神前結婚式とキリスト教結婚式の交代について、実証的な資料をもとに論じている。宗教者の関与する結婚式は、明治時代になって神前結婚式の登場により始まるが、広く一般大衆に普及したのは戦後になってからのことである。昭和40年代、50年代には結婚式の大半が神前式で行われていたが、平成になってキリスト教式が増加していく。こうした普及と交代が生じた理由を明らかにしている。本書は、本学COEプログラムの成果の一部である。
日本人の宗教性と神信仰の調査報告書, 石井研士, 石井研士, 2006年02月01日, 本報告書は、『日本人の宗教意識・神観に関する世論調査2003年 日本人の宗教団体への関与・認知・評価に関する世論調査2004年 報告書』の英語版報告書である。内容的にはほぼ同じであるが、読者を考慮して多少の追記や修正を行った。
『神社界における後継者問題の現状と展望-『第2回後継者問題実態調査報告書』からの出発』, 石井研士, 新潟県神社庁, 2007年03月01日, 本書は、新潟県神社庁の行った後継者調査の結果を踏まえて、神社界における後継者問題の現状と問題点を述べた講演集である。
『宗教及び宗教法人の社会的意義や役割をめぐる考察』, 石井研士, 文化庁宗務課, 2007年03月01日, 本書は、宗教及び宗教団体の公共性、もしくは社会貢献活動の歴史と実態について、報告したものである。
『増補改訂版 データブック現代日本人の宗教』, 石井研士, 新曜社, 2007年04月01日
『山口県・後継者問題実態調査報告書』, 石井研士, 石井研士, 2007年07月01日
『宗教学文献事典』, 石井研士他, 弘文堂, 2007年12月01日, 宗教学の領域における重要な研究文献を解題を付して収録。
『埼玉県・後継者問題実態調査報告書』, 石井研士, 石井研士, 2008年05月01日, 埼玉県神社庁の協力を得て、埼玉県下の後継者の調査を行った結果である。
『テレビと宗教 オウム以後を問い直す』, 石井研士, 中央公論社, 2008年10月01日, 「無宗教です」と平気で答える日本人。
今や、この国の精神文化は荒地と化した。
テレビという“制度”のみが文化の礎たる宗教心に接する唯一の場となった我々の、末法的状況への苦き提言。
『宗教団体の社会貢献活動に関する調査』報告書, 石井研士, 庭野平和財団, 2009年03月01日, 宗教団体が行う社会貢献活動と考えられる事業に関して実施した世論調査の報告書。
『渋谷の神々』, 石井研士, 國學院大學渋谷学研究会, 2010年03月05日, 神社と仏教寺院を中心に、渋谷の神々を歴訪して由緒由来を紹介したもの。
『プレステップ宗教学』, 石井研士, 弘文堂, 2010年04月15日, 宗教学を学ぶための基本的テキスト。
『バラエティ化する宗教』, 石井研士編, 青弓社, 2010年10月22日, テレビと宗教に関する考察を集めた論文集。
『神道はどこへいくか』, 石井研士編, ぺりかん社, 2010年11月13日, 神社神道を取り巻く様々な問題を個別に扱う論文集。
『世論調査による日本人の宗教性の調査研究』, 石井研士, 石井研士, 2011年02月01日
『プレステップ神道学』, 石井研士, 弘文堂, 2011年04月01日
後継者問題実態調査について, 石井研士, 神社本庁, 2011年06月01日, 第16号
『渋谷の神々』, 石井研士, 雄山閣, 2013年02月01日
『宗教団体の社会的貢献活動に関する調査報告書(2012年4月実施)』, 石井研士, 庭野平和財団, 2013年03月01日
『神さまってホントにいるの?』, 石井研士, 弘文堂、, 2015年02月01日
監修『神社手帖』, 石井研士, TAC出版局, 2015年03月01日
18K00081, 宗教法人の経営する霊園・納骨堂の経営に関する研究-「名義貸し」を中心に, 本研究は、死者の居場所として急速に普及した霊園と都心の大規模な機械式納骨堂の実態と運営について調査研究した。霊園は東京下であり郊外である八王子地区を対象とした。名義貸しとは「大規模墓地・納骨堂を作り区画を販売し多大な利益を得ることを目的として営利企業が寺院の名義を借りて実質的に墓地経営をしようとする事例」のことである。;八王子市に存在する霊園は41カ所で、名称、住所、運営法人等を調査し一覧を作成した。明かな名義貸しは把握できなかった。東京での名義貸しの事例として金沢市の伝燈院を現地調査した。法人の規模から行っても赤坂で大規模な納骨堂を展開できるものでないことを確認した。;八王子地区の41カ所の霊園を調査すると、業者の介在が不可欠であることがよく理解できた。開発の際の費用の分担等については、栽培でも起こらない限り把握できないが、墓地の販売、維持等、宗教法人が担当する儀礼以外は、業者が担当している。業者のHPには複数の宗派が異なる宗教法人の霊園が所属団体を明示せずに複数掲載されている。;都下の大規模な機械式霊園では、敷地と財源の確保、機械とシステムの維持を行っているのは業者である。金沢で確認した寺院は建物自体が通常の寺院の形態をしておらず、境内墓地もほとんど埋まっていなかった。ただ、法的には問題がないように運営されている現状は問題の深刻さを物語っている。
15K02058, 宗教法人の境内地の空間変容と公共性に関する調査研究, 本研究は、我が国の宗務行政を担当する文科省(当時は文部相)文化部宗務課が昭和33年から全都道府県に対して実施した<宗教法人の境内建物・境内地の使用状況等調査>で回収した約16万余の宗教法人の境内地・経済状況調査票を整理分析することを目的とする。;段ボール箱200箱以上に上る資料は資料の劣化が激しく、また保存のためにPDF化を行った。資料は二種類で、一種類は境内地の地図を含む境内の広さやその使用用途に関するものである。こちらの資料のスキャンは終了した。もう一種類は各宗教法人の財政状況を克明に記した資料で初めて存在が確認できた。膨大な上に紙資料の質が悪く、資料の整理が十全に終了しなかった。
26284012, 2014, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 連合国のアジア戦後処理に関する宗教学的研究:海外アーカイヴ調査による再検討, 太平洋戦争での敗戦、連合国による日本占領改革とアジアの戦後処理の過程と現状について、宗教学・社会学の専門家による共同研究である。日本及び海外(米、英、韓、露、蘭、インドネシア)の関係公文書を調査し、天皇制や日本宗教に対する連合国間の大きな方針の相違を確認し、GHQによる占領政策の困難や混乱の要因を解明した。戦後処理では、激戦地であった沖縄諸島と奄美・本土での戦争体験や戦後復興の相違と多様性が明らかになり、また戦没兵士の遺骨収集における太平洋諸島と沖縄などでの差異と課題、豪州の日本人兵士墓地の存在など忘却されていた歴史・人々を再発見できた。この戦後処理が今日の諸ナショナリズムの素因と言えよう。
26284011, ポスト・セキュラー状況における宗教研究, 「無宗教」を自認する者が多い現代日本で、公共の場に進出する宗教の報道が増えている。被災地支援活動を行う宗教者や、政権の支持基盤とされる右翼的宗教団体に関するものが目立つ。こういった現象は、欧米では「ポスト・セキュラー」と総称される。その意味するところは、一つは、世俗化が終焉し、その逆転が起きているということ。もう一つは、近代的な宗教/世俗の二分法を相対化した上での“宗教”研究を構築する試みが必要とされていることである。;このポスト・セキュラー論は日本にはどの程度あてはまるのかを、事例研究と理論的考察を組み合わせて分析したのが本共同研究である。結論はメンバー間で異なるが、成果を和英両方で出版した。
23320019, 2011, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 戦後の宗務行政が実施した調査の実体解明と宗教団体に及ぼした影響の研究, 本研究は、戦後宗務行政が宗教法人を適正に所轄するために実施してきた数多くの調査資料を収集することに主目的がある。これら調査資料は、研究者による成果が蓄積されるまでは、きわめて貴重な調査や資料であった。また、その後も宗務行政ゆえに可能な大規模調査が繰り返し行われてきた。;宗務行政が刊行した資料は、かなりの程度網羅的に収集ができた。資料のリスト、調査の一覧を作成した。また、当時の宗務行政に関わった研究者や宗教者に直接インタビューすることで、調査の背景をも確認することができた。
20320014, 2008, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 世論調査による日本人の宗教性の調査研究, 平成20年度に「日本人の宗教意識・宗教行動に関する世論調査」を、平成21年度に「日本人の宗教団体への関与・認知・評価に関する世論調査」を実施した。日本人の「信仰有り」「宗教団体への帰属」は依然として低く、減少傾向にあることが確認された。これまで伝統的な宗教行動として考えられてきたものが実施されなくなる一方、祖先崇拝を中心として神観念も薄れてきている。他方で、近年のパワースポット・ブームなどで、神道(神社)に関するイメージや信頼感は上昇した。
14651005, 2004, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 戦後における俗信の変化を測定するための基礎的研究, 本研究目的は以下の二点である。第一は、過去に行われた比較可能な俗信・民間信仰に関する調査結果の収集を行う。第二は、収集した資料を基にして、数量的な変化を把握することを目的として設定したときに有効な調査項目(質問文と回答のための選択肢)を考察する。
11610032, 1999, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, サラリーマンの通過儀礼に関する宗教学的研究, 本研究は日本社会を構成する重大な要素であるサラリーマン・会社の儀礼文化、たとえば入社式、新入社員研修と社葬等を調査研究するものである。
11410009, 1999, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 高度情報化社会と宗教に関する基礎的研究, 本研究は、現在急速に進行しつつある高度情報化が、精神文化としての宗教にどのような影響を及ぼし、宗教団体がどのような対応をとったか、あるいは対応を迫られたかを調査研究することを目的としている。
10410009, 1998, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 近代的「宗教」概念と宗教学の形成と展開-日本を中心とした比較研究-, 本研究は現代、世界各地で用いられている「宗教」概念と、それに依拠する宗教学が、時代的な制約のもとに成立したものであることを明確に自覚し、そのことから生じるさまざまな問題を考慮する試みである。
09610031, 1997, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 宗教団体の信者に関する研究, 『宗教年鑑』に記載された日本を代表する宗教法人の信者数の推移を個別教団毎にまとめる作業を行った。『宗教年鑑』には「信者」であることの規程が付されていないために、法人規則の閲覧・収集を行った。日本の宗教法人と宗教団体、それらの『宗教年鑑』による信者数、さらには『宗教年鑑』による分類とは異なった実態としての系統別分類、今回調査によって明らかになった信者の定義と各法人の規則に記載された信者の定義の移動などを資料とともに分析した。
09301002, 日本人の宗教意識と行動に関する総合研究, 本調査の研究目的は、宗教現象を研究対象とする研究者によって、日本人の宗教行動と宗教意識に関する全国規模の世論調査を行うことであった。また調査に際しては、海外で行われる同様の調査との比較が可能となるように留意する必要があった。こうした条件のもとで調査を実施したが、完全な国際比較調査とはならなかった。その主たる理由は、海外の調査の問題数の多さにあった。海外での調査は政治、経済、社会生活全般の問題を含んで宗教の問題が設定されており、こうした大規模な調査は費用の点で困難であった。宗教に関する質問だけを取り出すことは有意味ではない、;そこで海外の調査で意識されている宗教団体に主眼を置くこととした。日本においても新聞社をはじめ一般的な宗教意識に関する世論調査はあっても、宗教団体を主とした調査は行われていない。また、オウム真理教事件の後、宗教団体に関する世論調査の重要性は増していると判断した。質問には当然ながら、一般的な日本人の宗教意識と宗教行動に関するものも含めた。さらには調査期間中に収集してきた、戦後に実施された宗教に関する世論調査の結果と比較、もしくは総合的に読み解くことによって、従来指摘されてきたこととは異なった事実を明らかにすることが可能となった。;こうした分析の結果、近年日本人は宗教団体に対する批判的な態度を強めているにも関わらず、実際にはほとんど接触の機会を持っていないことが明らかになった。神社や寺院に初詣やお盆の時に行く機会はあっても、それらは濃密な接触として意識されてはいない。人生における重大な問題に関しても、神職、僧侶、神父や牧師、新しい宗教の教祖や信者に相談している日本人は数パーセントに過ぎない。;宗教団体としての活動には、伝統宗教だけでなく、キリスト教や新しい宗教にも関与している形跡は見られなかった。それにもかかわらず、新しい宗教団体に対するイメージは極めて悪く、日常生活における具体的な接触の欠如とは裏腹に、メディアによるオウム真理教や法の華三法行をはじめとした事件報道が、日本人の宗教団体に対する評価に大きな役割を果たしていることが分かった。
07309015, 1995, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 会社文化の総合的研究, 本研究は、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。
06610033, 1994, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 宗教団体の信者数の動態に関する統計的研究, 本研究は、戦後の日本社会における宗教の変容を考察するために、個別に宗教団体の信者数をはじめとしたデータの変化を統計的に把握することを目的としている。日本の宗教団体の信者、教師、包括法人数に関する資料を最も長期に、かつ網羅的に調査してきたのは文化庁編『宗教年鑑』である。本研究は『宗教年鑑』に記載された膨大なデータをコンピューターに入力し、戦後の宗教団体の動向を総合的に捉える。
05202105, 1994, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 情報化と宗教, 高度情報化社会の到来における宗教文化の変容について、自己啓発セミナー、心霊科学、占いなど大衆神秘主義的運動と見なされる現象について分析を行った。
06202105, 情報化と宗教, 94年度はこれまでの研究をさらに進めながら、全体としてのまとめを模索し、さらに研究成果を書籍として出版する準備を行った。その結果、以下の諸点について、かなり明確な成果を得ることができた。すなわち、(1)「新新宗教」とよばれる宗教集団の組織や情報統御のあり方の特徴、(2)自己啓発セミナーや瞑想集団などの人間関係のあり方の特徴、(3)伝統的な葬儀とは異なる新しい葬送の形式を求める人々の意識と人間関係の特質、(4)水子供養に関わっている人々の意識と流行の理由、(5)年中行事や祭の変容とそれに伴う人々の意識の特徴、(6)既成教団におけるメディアの使用と活動形態に伴う人々の意識の特徴、(7)占いを伝えるメディアと占いの内容の長期的な変化の実態。主として、70年代以降の日本の状況の解明を試みたが、同時に日本の19世紀以降、また現代の欧米諸国の状況にも目を配り、より広い視野からの考察を行おうとした。上に挙げた諸点の理解を通して、情報化が宗教に関わる人々の集合の様式、およびコミュニケーションの形態に変容をもたらし、宗教意識そのものをも変容させていく事態が明らかにされた。その上で、高度情報化に伴う文化や意識の変容の諸局面(心性の変化やアイデンティティーの変容等)と宗教の変容の対応関係についても、ある程度、明らかにすることができた。さらに、欧米諸国、とりわけアメリカ合衆国の状況との比較によって、現代日本の宗教状況の特徴についても多くの論点が提示され、日本におけふ情報化全般の特徴について考察する上でも、一定の寄与ができたと思われる。
04211111, 1992, 日本学術振興会, 科学研究費補助金, 情報化と宗教, 高度情報化の時代、メディアの発達によって、大衆規模での新しい宗教文化の発生がみられる。本研究は高度情報化社会の到来における宗教の変容に関する調査研究である。
61301005, 現代日本における教団の総合調査, 昭和61年度と昭和62年度の二年間にわたり, 現代日本における教団の総合調査を行った. 対象教団は, 神社神道, 仏教教団(浄土真宗本願寺派, 日蓮宗, 臨済宗妙心寺派, 曹洞宗, 真言宗智山派), キリスト教(日本キリスト教団, カトリック)および新宗教教団(金光教, 天理教等)である. これらに関してはできる限り統計処理の可能な資料を収拾し統計分析を行った. これに関しては報告書に掲載されている. また, 地域における教団組織と教勢を把握するために, 銀座と大阪梅田を選び, 都市化の問題をも含めた総合調査を行った. 神社神道は, 既成教団として, 変動がないように考えられてきたが, 内容は大きく変化しているように思われる. とくに都市化が神社神道に及ぼした影響はとくに顕著である. 仏教教団に関しても, 都市と農村の寺院の格差は著しく, 根底から寺院の質を変えようとしている. 都市化が都市と農村の寺院の経済的基盤に変化を与えており, そのことが寺院の世襲化を生む土壌となっている. キリスト教団は, これらに対して比較的変動のない歴史を送っている. そのことは同時に大規模な発展のなかったことをも意味している. 新宗教教団は, 通常の認識では最も変化の激しく, 現代社会に適応した形態をとっていると考えられるが, 実質的にはかなりの程度既成化が進み, 社会的認識との間にはずれがある. この点に関しては, 新宗教教団の詳細な歴史年表を作成することによって, 新宗教教団の歴史的経緯も考察した. 地域研究では, 都市化の顕著な銀座と大阪梅田の比較調査を行うことによって, 各宗教教団の組織的問題を考察した. また, 各教団の製作しているビデオテープを収拾し, 映像に関する考察をも取り入れた.
06301004, 環境問題と宗教に関する調査研究, 理論的研究としては、平成6年度より収集してきた環境問題関係の文献、とくにエコロジー論と宗教的シンポジウムとに関連する内外の研究を参考にした環境と宗教との関わり方を考察するなかで、神社や神道がなぜ、いかにして自然環境と生活社会との親和的な関係を維持せしめてきかを比較論と構造論の両面から検討を行ってきた。これまでの環境問題に関する議論では見落とされがちだった文化の側面の重要性がこうした研究から明らかになった。;日本経済の高度成長期における国土の乱開発が公害の頻発と自然環境の荒廃をもたらし、社会全般の利便性追求と物質的繁栄の代償として<家郷社会>の解体にともなう人心の荒廃をも招くにいたった。地球規模の環境保全が国際的な緊急課題となった今、あらためて日本古来の森林文化として、<風土祭紀>ないし<家郷祭紀>の宗教的伝統が内外の注目を集めるようになった。たとえば、全国に8万社を超える神社がその本来の宗教性ゆえに幾多の歴史的困難をしのいで保全してきた「鎮守の森」すなわち神苑や神体山の宗教的シンポジウムが、あらためて民族古来のアニミズム的生命観の自覚と共に再評価されつつあることがなによりの新たな可能性を示唆している。;この研究は、実際の調査をもとに理論的検証を行うことを中心としてきた。対馬、伊勢、東京、広島、新潟など多くの調査地を詳細に検討することによって、環境問題と宗教との深い関わりを明らかにすることが可能となった。この領域におけるまとまった調査報告は、今後の環境問題研究や宗教研究に大きな貢献をなしたものということができる。