22K20464, 町並み保全地域で地方自治体が取得した歴史的建造物の整備プロセスと利活用方策の解明, 町並み保全地域においては、民間主体による維持管理が困難になった等の理由で、歴史的な建造物が地方自治体に譲渡され、交流施設等の公益的な役割を担う事例が多い。地方自治体が修理および運営管理を実施していく整備プロセスや運営管理の実態については、十分に明らかになっていない。全国的に財政が厳しくなる一方、空き家が増加する現代において、どのように歴史的建造物の効果的な整備・運営管理を行っていくべきか、民間主体や住民の参画状況にも着目しながら明らかにする。;本研究は、日本全国で実施されている伝統的建造物の公有化を対象とし、整備公開されるまでのプロセスならびに利活用の実態を研究する。これにより、空き家化ならびに町並みの持続性が目下の課題となる中、公的拠点施設の望ましいあり方に関する知見を得ることを目的とする。;2022年度には主に伊勢河崎商人館(三重県伊勢市)および栃木市嘉右衛門町ガイダンスセンター(栃木県栃木市)に関する研究を実施した。;伊勢河崎商人館は、勢田川の両岸に問屋街が発展した地域で、昭和49年の七夕豪雨を契機とした河川改修により町並みの一部が失われたが、残った歴史的建造物を対象に民間による町並み保全活動が活発に行われている。;伊勢河崎商人館は、小川酒店が1999年に廃業して空き家となったところ、住民団体の働きかけにより伊勢市が取得し、NPO法人の伊勢河崎商人館が運営する形で始動したまちづくり拠点施設である。開館に向けて官民双方が参加して非常に多くの検討を重ねた点、大学を含め多くの主体が関与した点、運営・収益化にあたっては非常に低い委託費の中で民間が主体となって進めた点が特徴的である。;栃木市ガイダンスセンターの整備プロセスには重伝建地区内に位置することが大きく影響した。2012年に重伝建地区に選定され観光客向けの休憩機能が求められたこと、重伝建地区のため廃業した味噌工場建物の改変が許可されないこと、大規模のため民間での活用修理が不可能であったことが取得の意思決定要因となった。施設機能の検討や設計施工に県内企業を起用するなどの配慮はあるが、建物の腐朽が激しいため抜本的な改修が必要となるなど、歴史的価値・コストの両面で課題を抱える。また、まちづくり団体が運営に関与し、伝建地区の再生と一体となった運営が特徴的である。先行開業したガイダンスセンターの他、敷地内の複数の建造物を公開整備する計画が進行中であり、今後の動向が注視される。;1 本研究の主題である歴史的建造物、町並み保全地域ならびに公有化に関する知見を深めるため、書籍や先行研究の調達、通読を実施した。調査に必要な物品を調達するなど研究環境の整備を行った。;2 仮説生成のための予備調査の実施:本研究の核心をなす問いを深め、研究の枠組みを定めることを目的として、予備調査を実施した。;○伊勢河崎商人館(2022年12月1日から3日、2023年2月6日から7日)三重大学、運営者の伊勢河崎まちづくり衆、伊勢市担当者へのヒアリングを実施し、商人館整備のプロセス及び運営実態を把握した。また、館内の写真撮影および図面照合による改修状況の把握、伊勢市図書館における整備状況関連の資料収集を実施した。;○栃木市嘉右衛門町伝建地区ガイダンスセンター(2023年1月16日から17日)栃木市担当者へのヒアリングを実施し、整備プロセス及び運営実態を把握した。;上記予備調査により、歴史的建造物の開業プロセスのみならず運営段階での変化などの時間軸の視点、建物を拠点にしたまちづくり活動による周辺への波及効果、周辺住民にとっての建物の位置づけ等の視点が重要であるという見解を得た。地方自治体の決定プロセスや周辺住民の反応はケースバイケースであるが、いずれの事例であっても歴史的建物そのものの存在価値に加え、利活用によるまちづくり効果等の利用価値が重視されていたことが示唆された。;3 研究推進にあたっての意見交換:本研究の推進方針や枠組みの設定に関して、東京大学都市工学専攻の中島准教授との打ち合わせを実施した。;研究計画に則り、2023年度には主に下記の研究を推進する。;・本研究が対象とする町並み保全地域を定義に基づいて特定し、該当地域内において公有化された歴史的建造物のリストを完成させる。;・特定した公有化リストを基に、詳細調査を行う事例を類型化等によって決定する。対象事例について、自治体関係者や運営者へのヒアリング調査を行うことで、施設の整備プロセスおよび利活用の実態を明らかにする。;・研究によって得られた知見を論文にまとめ、発表する。
21KK0077, ネパール・ルンビニ地域に広がる古代王国遺跡の保存活用に立脚した地域計画立案, 本研究グループは、2010年よりネパールにおける「世界遺産ルンビニの統合的マネジメントプラン策定プロジェクト」に参画し、世界遺産と暫定リスト遺跡を主な対象に、10年以上に亘り発掘調査や現地調査を実施してきた。一方、周辺地域に広がる無名の遺跡は膨大な数に上り、それらの意味や空間特性を捉えた地域計画立案までは程遠い。;本研究は、ネパール・ルンビニ地域において、世界遺産・暫定リスト遺跡の周辺に広がる遺跡を対象に、考古学と都市計画学が連携してそれらの意味や空間特性を捉え、世界遺産・暫定リスト遺跡とともに、遺跡保存活用に立脚した地域計画を立案することを目的とする。;2022年度(2年目)は、2022年11月に現地にて都市計画チームと考古学チームとの合同調査を行い、各遺跡の状況を把握して計画立案につなげる基礎研究を行った。;■考古学チーム:ティラウラコット遺跡を中心に半径10kmにある合計64遺跡について、その規模や遺物・立地条件等で優先度を4分類し、優先度の高い遺跡から順次非破壊での地球物理学調査(Geophysical survey)を行った。得られた情報を地理情報システム(GIS:Geographic Information Systes)にて整理中であり、2023年度のフォローアップ調査にて精査し、ティラウラコット遺跡を中心に半径10kmにおける各遺跡の実態を捉えた広域エリアでのリスクマップを完成していく。;■都市計画チーム:考古学チームとオンライン会議にて事前調整を行い、物理学調査範囲や優先度について協議し、本調査対象遺跡の範囲を定め、考古学チームがその内容に従って物理学調査を行った。また、研究分担者を2名追加して現地調査と計画策定を強化し、2022年11月に、研究分担者所属大学の修士課程の学生4名を含めた合計8名にて現地に渡航し、考古学チームと合同で物理学調査や明らかになった遺跡に関するリスクマップ等の情報を共有した。得られた情報をもとに、都市計画チーム内にて分担し、世界遺産ルンビニと世界遺産暫定リストのティラウラコット遺跡内部とその周辺地域の保存活用整備計画の策定を進めた。;考古学チーム・都市計画学チームで現地合同調査を実行し、考古学チームの調査結果を共有し、都市計画チームにて世界遺産ルンビニと世界遺産暫定リストのティラウラコット遺跡内部とその周辺地域に関する保存活用整備計画を立案することができた。;考古学チームは、今年度現地フォローアップ調査と調査結果のまとめを予定している。都市計画チームは、考古学チームからの研究成果を得られ次第、ティラウラコット遺跡を中心にした半径10kmにおける重点地域等のゾーン設定を行うとともに、各遺跡の保存活用計画立案をおこなってゆく。
JP22K20464, 町並み保全地域で地方自治体が取得した歴史的建造物の整備プロセスと利活用方策の解明, 町並み保全地域においては、民間主体による維持管理が困難になった等の理由で、歴史的な建造物が地方自治体に譲渡され、交流施設等の公益的な役割を担う事例が多い。地方自治体が修理および運営管理を実施していく整備プロセスや運営管理の実態については、十分に明らかになっていない。全国的に財政が厳しくなる一方、空き家が増加する現代において、どのように歴史的建造物の効果的な整備・運営管理を行っていくべきか、民間主体や住民の参画状況にも着目しながら明らかにする。;町並み保存地域において、所有者が維持できない歴史的建造物を市町村が取得し活用する事例があるが、全国的な実態は未解明であった。本研究では全国の重伝建地区および歴史まちづくり法の重点区域を対象として市町村へのアンケート調査を行い、取得に対する姿勢や取得実態を調査した。82市町村が有する260件の施設について、経緯や取得根拠の価値、取得や改修の費用といった整備プロセスを調査したほか、用途や利用者数、民間活用形態等の利用実態を明らかにした。近年の多くの事例は地域のまちづくりに資する目的が設定され、都市計画上の効果を発揮している一方、行政コストがかかる点や、運営ノウハウの必要性等の課題も明らかになった。;町並み保存や建物保存の問対意識のもとで行われた研究は多いが、公有の歴史的建造物に着目した研究は新しく、単なる建物保存を超えて町並み保存型まちづくりに資する活用がなされる実態を明らかにしたことで、都市計画の新たな手法を提案したといえる。;社会的意義に着目すると、一市町村が多くの物件を取得できるケースは少ないため行政にノウハウが蓄積しにくい構造にあり、手探りで企画や整備が進められる場合が多い。収益化を図り運営費用を抑える活用や、市町村の抱える課題にアプローチする活用など多様な事例を記述したことで、今後の公有化や、所有済み施設の運営を見直す場合において、実情に応じた検討を進める上で有用な材料となる。
JP21KK0077, ネパール・ルンビニ地域に広がる古代王国遺跡の保存活用に立脚した地域計画立案, 本研究グループは、2010年よりネパールにおける「世界遺産ルンビニの統合的マネジメントプラン策定プロジェクト」に参画し、世界遺産と暫定リスト遺跡を主な対象に、10年以上に亘り発掘調査や現地調査を実施してきた。一方、周辺地域に広がる無名の遺跡は膨大な数に上り、それらの意味や空間特性を捉えた地域計画立案までは程遠い。;本研究は、ネパール・ルンビニ地域において、世界遺産・暫定リスト遺跡の周辺に広がる遺跡を対象に、考古学と都市計画学が連携してそれらの意味や空間特性を捉え、世界遺産・暫定リスト遺跡とともに、遺跡保存活用に立脚した地域計画を立案することを目的とする。;2023年度(3年目)は、2022年度に現地にて行なった考古学チームと都市計画チームとの合同調査結果について、主に考古学チームが分析・整理を進めた。;■考古学チーム:;2022年度、ティラウラコット遺跡を中心に半径10kmにある合計64遺跡について、その規模や遺物・立地条件等で優先度を4分類し、優先度の高い遺跡から32箇所を抽出して現地調査を行った。また、その内、非破壊での地球物理学調査(Geophysical survey)が可能である27箇所にて地球物理学調査を行った。2023年度は、得られた情報をドローンにて撮影した各遺跡の航空写真上に表示して整理した。ここから、大きな反応のあった四つの包含遺跡が抽出され、各遺跡の破壊リスクの度合いや現況報告とともに、今後の遺跡調査に関する提案を行なった。2024年5月、その結果を報告書としてまとめ、都市計画チームと共有した。;■都市計画チーム:;ティラウラコット遺跡の世界遺産登録申請に対し、2022年度調査で明らかになった内容の反映や助言を電子メールでのやり取りで行った。ただ、考古学チームからの調査報告が遅れたため、2023年度予定していた本研究における現地調査は行えなかった。2024年5月に受領した調査結果を受け、2024年度以降は、ティラウラコット遺跡を中心に半径10kmで判明した各遺跡の情報を反映し、地域計画立案に向け、ティラウラコット遺跡の世界遺産登録と歩調を合わせて、自治体による周辺環境の保存管理施策を念頭に置きながら、調査研究を進める予定である。;考古学チームの分析結果が遅れたため、予定していた進捗からはやや遅れている。2024年5月、考古学チームからティラウラコット遺跡を中心に半径10kmにある27箇所の遺跡にて行った地球物理学調査結果の報告があったため、今年度都市計画チームの地域計画立案作業が進められる状況となり、今年度は遅れを取り戻す予定である。;考古学チームから、2022/2023年度現地フォローアップ調査と調査結果のまとめについて、2024年5月に提出があった。都市計画チームは、考古学チームからの半径10kmにある27箇所の遺跡にて行った地球物理学調査結果の報告を得られたため、ティラウラコット遺跡を中心にした半径10kmを主な対象として、地域計画立案に移行する。;今年度は、本調査結果について考古学チームと議論し、各遺跡の空間特性からティラウラコット遺跡を中心に古代王国を推測し、各遺跡の保存(遺跡の空間特性を類型化、マトリクス表に各タイプ別保存範囲を決定)、また各遺跡の活用(特に重要な遺跡を重点地域として選定する)について整理して、地域計画の根拠整理を行う。また、現地自治体が実行可能な保存活用に関する施策提案を行い、ティラウラコット遺跡の世界遺産登録と歩調を合わせて研究を推進してゆく予定である。