The Triangle of Modern Japanese Yōga - Paris, Tokyo, East Asia -, Atsushi Miura, East Asian Art History in Transnational Context, 2019年04月25日, Routledge
Portée politique de la peinture moderne japonaise: de la peinture d'histoire de l'ancienne École supérieure n° 1 à la peinture de bataille de Fujita Tsuguharu, Atsushi Miura, Perspective: actualité en histoire de l'art, 2020年04月30日, INHA
Relations diplomatiques franco-japonais et japonisme dans les annés 1860, Atsushi Miura, Œuvres japonaises du Château de Fontainebleau - Art et diplomatie, 2021年07月02日, Faton
Le retour au Japon du Japonisme: une généalogie, Atsushi Miura, Le Néo-japonisme 1945-1975, 2025年01月29日, Hermann
西洋留学と明治洋画, 三浦篤, 國華, 2018年01月, 朝日新聞社
《フォリー=ベルジェールのバー》をめぐる考察, 三浦篤, 『コートールド美術館展 魅惑の印象派』図録, 2019年09月, 東京都美術館
『日本 その心とかたち』再読―「比較美術史」のパースペクティヴ, 三浦篤, 三浦信孝・鷲巣力編『加藤周一を21世紀に引き継ぐために』, 2020年09月, 水声社
メイヤー・シャピロとフランス前衛美術史の展開, 三浦篤, 西洋美術研究, 2020年09月, 三元社
19世紀フランス絵画における古典美術の受容−アカデミスム、ヴィラ・メディチ、そして前衛へ−, 三浦篤, 木俣元一、松井裕美編『古典主義再考1 西洋美術史における古典の創出』, 2021年01月, 中央公論美術出版
マティスと「東方」—ジャポニスム、マネ、オリエンタリスム, 三浦篤, ユリイカ, 2021年05月, 青土社
住友コレクションの西洋絵画 —モネとローランスを中心に, 三浦篤, 泉屋博古「近代洋画・彫刻」, 2022年09月, 泉屋博古館東京
パリ・オペラ座と「総合芸術」―音楽、美術、文学、舞台芸術の共振, 三浦篤, パリ・オペラ座—響き合う芸術の殿堂展図録, 2022年11月, 石橋財団アーティゾン美術館
ボードレールとポスト・レアリスムの画家たち, 三浦篤, 中地義和編『ボードレール 詩と芸術』, 2023年04月14日, 水声社
エドゥアール・マネの絵画―闘争と歓楽のはざま, 三浦篤, 日本の中のマネ —出会い、120年のイメージ展図録, 2022年09月12日, 練馬区立美術館
山本芳翠とフランス, 三浦篤, 山本芳翠 多彩なるヴィジュアル・イメージ展図録, 2024年09月, 岐阜県美術館
Baudelaire et les peintres post-realistes, Atsushi Miura, L’année Baudelaire, 2025年07月01日, Honore Champion
選択的摂取としての受容--日本近代洋画にフランス絵画がもたらしたもの (特集 日本におけるフランス--創造的受容--「フランシスム」研究の構築に向けて) -- (受容美学), 三浦 篤, 美術フォーラム21, 23, 36, 41, 2011年, 美術フォーラム21刊行会
まえがきにかえて フランス近代絵画と芸術家伝説 (特集 芸術家伝説), 三浦 篤, 西洋美術研究, 13, 8, 17, 2007年, 三元社
「描かれた芸術家」を研究するまで--『近代芸術家の表象--マネ、ファンタン=ラトゥールと1860年代のフランス絵画』の余白に, 三浦 篤, UP, 35, 9, 57, 62, 2006年09月, 東京大学出版会
ルーヴル美術館の模写画家たち--1850年から1870年まで〔含 解題〕 (特集 オリジナリティと複製), Reff Theodore; 福間 美由紀; 三浦 篤, 西洋美術研究, 11, 50, 65, 2004年, 三元社
座談会 視ることの快楽--自画像の魅力・カタログの世界, 三浦 篤; 五味 文彦; 木下 直之, UP, 32, 8, 1, 19, 2003年08月, 東京大学出版会
まえがき 美術史とパレルゴン--境界と枠組みの思考 (特集 パレルゴン:美術における付随的なもの), 三浦 篤, 西洋美術研究, 9, 4, 7, 2003年, 三元社
インタビュー ジャン=クロード・レーベンシュテインに聞く〔含 解説〕 (特集 パレルゴン:美術における付随的なもの), Lebensztejn Jean-Claude; 三浦 篤; 森元 庸介, 西洋美術研究, 9, 8, 21, 2003年, 三元社
絵画の脱構築--マネの《草上の昼食》とパレルゴン (特集 パレルゴン:美術における付随的なもの), 三浦 篤, 西洋美術研究, 9, 101, 125, 2003年, 三元社
資料 パレルゴン文献リストと解題 (特集 パレルゴン:美術における付随的なもの), 木俣 元一; 栗田 秀法; 三浦 篤, 西洋美術研究, 9, 199, 209, 2003年, 三元社
エドゥアール・マネにおける写真と絵画 (特集 美術とパラゴーネ), 三浦 篤, 西洋美術研究, 7, 90, 107, 2002年, 三元社
俳優の演技--J.J.エンゲルにおける身ぶりの考察〔含 解題〕 (特集 美術と身体表現), Saison Maryvonne; 三浦 篤; 中田 宏明, 西洋美術研究, 5, 93, 102, 2001年, 三元社
現代美術とイコノクラスム〔含 解題〕 (特集 イコノクラスム), Gamboni Dario; 三浦 篤; 飛嶋 隆信, 西洋美術研究, 6, 110, 139, 2001年, 三元社
「ラファエル・コラン展」ができるまで--日仏美術交流の実例, 三浦 篤, UP, 29, 1, 24, 29, 2000年01月, 東京大学出版会
絵の中の絵〔含 解題〕 (特集 イメージの中のイメージ), Chastel Andre; 画中画研究会; 三浦 篤, 西洋美術研究, 3, 8, 33, 2000年, 三元社
書評 Pierre Georgel, Anne-Marie Lecoq, La Peinture dans la Peinture (特集 イメージの中のイメージ), 三浦 篤, 西洋美術研究, 3, 165, 170, 2000年, 三元社
失われた絵画とサロン批評--ファンタン=ラトゥールの《乾杯(真実礼讃)》をめぐって (特集 イメージとテキスト), 三浦 篤, 西洋美術研究, 1, 101, 124, 1999年, 三元社
19世紀フランスの美術アカデミーと美術行政--1863年の制度改革を中心に (特集 美術アカデミー), 三浦 篤, 西洋美術研究, 2, 111, 129, 1999年, 三元社
往還の軌跡――日仏芸術交流の150年, 三浦篤, 三元社, 2013年11月01日
西洋美術の歴史、19世紀:近代美術の誕生、ロマン派から印象派へ, 三浦篤、尾関幸、陳岡めぐみ, 中央公論新社, 2017年02月27日
NHK8K ルーヴル美術館 美の殿堂の500年, 小池寿子、三浦篤、NHK「ルーヴル美術館」制作班, NHK出版, 2021年04月26日
エドゥアール・マネの思い出, アントナン・プルースト, 中央公論美術出版, 2024年11月23日
名画に隠された二重の謎 — 印象派が「事件」だった時代, 三浦篤, 小学館, 2012年12月03日
まなざしのレッスン 2.西洋近現代絵画, 三浦篤, 東京大学出版会, 2015年03月31日
西洋絵画の歴史3、 近代から現代へと続く問いかけ, 三浦篤, 小学館, 2016年12月01日
エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命, 三浦篤, KADOKAWA, 2018年10月19日
移り棲む美術 −ジャポニスム、コラン、日本近代洋画−, 三浦篤, 名古屋大学出版会, 2021年03月10日
大人のための印象派講座, 三浦篤, 新潮社, 2024年03月27日
日仏会館と芸術交流の100年, 三浦篤、中島智章、野平一郎、林洋子, 三元社, 2025年06月15日
ヴィーナス・メタモルフォーシス―国立西洋美術館『ウルビーノのヴィーナス展』講演録, 浦 一章; 三浦 篤; 渡辺 晋輔; 芳賀 京子, 三元社, 2010年10月
美術論集 (ゾラ・セレクション), 三浦 篤; 藤原 貞朗, 藤原書店, 2010年07月16日
Génétique de la peinture : actes du colloque international, sous la direction; de Miura Atsushi, UTCP (University of Tokyo Center for Philosophy), 2010年
Histoires de peinture entre France et Japon, Atsushi Miura, UTCP(The University of Tokyo Center for Philosophy), 2009年
日仏美術交流史研究 : ジャポニスム、コラン、日本近代洋画, 研究代表者; 三浦篤, 三浦篤, 2009年
近代東アジアにおける異文化要素の異化と同化 : 科学研究費補助金研究成果報告書, 研究代表者; 杉田英明, [杉田英明], 2007年
フランス近代美術史の現在 : ニュー・アート・ヒストリー以後の視座から, 永井隆則編, 三元社, 2007年
近代芸術家の表象―マネ、ファンタン=ラトゥールと1860年代のフランス絵画, 三浦 篤, 東京大学出版会, 2006年09月
レプリカ―真似るは学ぶ (INAX BOOKLET), 三浦篤; 小島道裕; 木下直之; 中島誠之助; 住友和子編集室; 村松寿満子, INAX出版, 2006年03月15日
プーシキン美術館展 : シチューキン・モロゾフ・コレクション = Pushkin : masterworks of French impressionism and modernism from The State Pushkin Museum of Fine Arts, Moscow, 朝日新聞社事業本部文化事業部編集; 鴻野わか菜; ほか] 訳, 朝日新聞社, 2006年
ゴッホはなぜゴッホになったか―芸術の社会学的考察, 三浦 篤, 藤原書店, 2005年03月01日
第二帝政期のフランス絵画における芸術家像 : マネとファンタンを中心に, 研究代表者; 三浦篤, 三浦篤, 2005年
クールベ (岩波 世界の美術), 三浦 篤, 岩波書店, 2004年11月25日
印象派の歴史, 三浦 篤; 坂上 桂子, 角川学芸出版, 2004年11月
画家が描いたヨーロッパ : 日本の美術 : 19世紀の憧れから21世紀の翔きへ, 三浦篤; ほか] 執筆, 美術年鑑社, 2004年
自画像の美術史, 三浦篤編; 三浦 篤, 東京大学出版会, 2003年03月
印象派とその時代 : モネからセザンヌへ = Impressionists and their epoch : from Monet to Cézanne, 佐藤雅洋; 平野到; 横山由紀子編集; 三浦篤; 中村誠監修, 美術出版社, 2003年
「語りえぬもの」からの問いかけ―東大駒場「哲学・宗教・芸術」連続講義, 宮本 久雄; 甚野 尚志; 三浦 篤; 野矢 茂樹; 沼野 充義; 高橋 哲哉; 杉田 英明; 岡部 雄三; 今橋 映子; 門脇 俊介; 竹内 信夫, 講談社, 2002年03月
まなざしのレッスン〈1〉西洋伝統絵画 (Liberal arts), 三浦 篤, 東京大学出版会, 2001年04月
モナ・リザ100の微笑 [本冊], ジャン・ミシェル・リベット; 三浦篤; 日本経済新聞社編, 日本経済新聞社, 2000年
ラファエル・コラン展 : Raphaël Collin, 福岡市美術館編集, 西日本新聞社, 1999年
マネ (アート・ライブラリー), 三浦 篤; 田村 義也, 西村書店, 1999年01月
西洋美術史ハンドブック (Handbook of fine art), 高階秀爾; 三浦篤編; 高階 秀爾; 三浦 篤, 新書館, 1997年06月
魅惑の19世紀フランス絵画 : ナント美術館展 = Histoires parallèles la peinture française du XIXe siècle au Musée des Beaux-Arts de Nantes, 福岡市美術館編集, 西日本新聞社, 1995年
エルミタージュ美術館秘匿の名画, アリベルト・コステネーヴィッチ解説; 天野知香; ほか] 訳, 講談社, 1995年
ゴッホ, 三浦 篤; 渡部 葉子, 中央公論社, 1991年02月
モナ・リザ100の微笑 CD-ROM, ジャン・ミシェル・リベット; 三浦篤; 日本経済新聞社編, 日本経済新聞社
20KK0002, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 芸術作品の流通と美術コレクション形成-通時的/共時的分析とデータベース, コロナ禍のために予定通りの研究調査等は実施でいていないものの、本研究「芸術作品の流通と美術コレクション形成ー通時的/共時的分析とデータベース」の計画にある大原美術館との研究計画の再構築を行うことができた。画家の児島虎次郎がベルギーとフランスでどのような人間関係を構築し、とりわけ大原孫三郎のコレクション形成のための絵画購入がどのような経緯で行われたかは、既存の研究もあるものの、さらにベルギーとフランスでの研究で深化させる必要があることが、大原美術館側との打合せで確認された。大原美術館では、今までの研究成果を本研究のために活用する協力体制を組むことも確認された。児島虎次郎が留学していたヘント美術学校の資料室との連絡がとれており、2022年度に調査がされる予定である。海外研究協力者であるパリ高等師範学校の美術史学研究ユニットArtl@sとは日本におけるフランスの美術商の活動の共同調査を行うことができた。その情報はArtl@sのサイトで公開される。また、このArtl@sとの打合せで、情報工学のような理系分野の協力を視野に入れたパリ高等師範学校との共同研究の構築の必要性が確認された。この打合せがきっかけとなり、東京大学情報理工学系研究科のスッパキットパイサーン・ウォラポン特任講師とのIXTプロジェクトの共同研究が東京大学の学内で実現し、黒田清輝とラファエル・コランの類似性が高い絵を自動的に見つけることができるアルゴリズム開発がされることになった。本研究の成果は2022年度にコンピュータービジョンのワークショップにて報告される予定である。
19K00170, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, アンリ・ファンタン=ラトゥール研究ー芸術交流の視点から, 2021年度はコロナ禍のために海外調査が困難な状況であり、これまで収集した文献、資料の整理・読解によって研究を続行した。ファンタン=ラトゥール関係の資料・文献を整理し、集団肖像画に関する19世紀当時のサロン批評、ファンタン夫人編纂の作品目録、展覧会カタログなどに基づき研究を進めた。
特に、ポスト・レアリスム世代の画家としてのファンタン=ラトゥールの友人関係を研究対象とした。昨年度から開始している、ファンタンが交流したドイツの画家オットー・ショルデラーとの書簡集(2011年)の読解を継続し、ファンタンとショルデラーの親密な友人関係を深く理解できた。また、両者ともに音楽好きであり、美術と音楽という本研究のテーマともつながる。
ファンタンと音楽に関しては、ヴァーグナー体験が重要で、1861年の「タンホイザー」パリ公演、1876年にバイロイトで観劇した「指輪」に関係する絵画・版画作品を洗い出し、詳しい文献調査を行った。ファンタンが好んだベルリオーズについても、同様の作業を行い、特にベルリオーズにオマージュを捧げた作品《記念日》(1876年)に関する資料を調べた。ヴァーグナー、ベルリオーズともに音楽評論家アドルフ・ジュリアンが伝記を刊行しているが、友人であるファンタンはそれらの著作にリトグラフのオリジナル作品を提供している。
一方、マネとファンタン=ラトゥールとの友情と共闘について、日仏美術学会のマネ・シンポジウムで発表を行った。1857年にルーヴル美術館で知り合った二人の画家はヴェネツィア派やベラスケスの絵を愛好する共通性を持ち、1860年代には革新的なレアリスム絵画で絵画界を揺るがしたマネと彼を囲むグループを擁護する集団肖像画(1864年、1865年、1870年)と単独の肖像画(1867年)を、ファンタンはサロン(官展)に発表しているのである。
15K02133, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, マネの絵画と検閲 ー政治、社会、美術制度ー, マネの絵画と検閲に関して、政治、社会、美術制度という観点から総合的に調査し、考察した。 その結果、マネが第二帝政に批判的な立場から政治的な主題を取り上げ、暗示的なやり方で表現し、検閲を受けたことがわかった。また、ヌードや娼婦のテーマに積極的に取り組んで、それ以前にはない女性表象を行い、スキャンダルや非難を招いたこと、さらに聖性を帯びるべきキリスト像をリアリストのまなざしで扱って批判されたことも判明した。
24520100, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, マネとポスト・レアリスムの画家たち, 1860年代のフランス絵画をクールベ以後の「ポスト・レアリスム」という切り口から捉え、マネ、ファンタン=ラトゥール、ドガ、ルグロ、ホイッスラーの5人の画家たちに共通する美意識や造形手法を総合的に考察した。その結果、絵画の枠組みの意識化と作品の切断、画像のアッサンブラージュ、画中画や鏡の挿入、多様なマチエールの併用等々の特質が浮かび上がった。西洋絵画史における「近代的なタブローの生成」とも言うべき現象が出現したのがまさに1860年代のフランスであり、マネを中核とする「ポスト・レアリスト」たちがそれを担ったのである。
21520094, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(C)), エドゥアール・マネ研究 ー 批評と受容の視座から, 今年度は《草上の昼食》と《オランピア》に関するサロン批評を徹底的に調査し、分析した。前者に関しては、1863年の落選者のサロンの批評の中に言及があり、男女のピクニックという主題の不道徳性、遠近法やデッサンなど技法の欠如などが批判の対象となったことが理解できたが、作者の意図、絵の意味が不可解だという反応も目立ち、通常の絵画の基準を逸脱するマネの作品の特質が明らかになった。1865年のサロンで大スキャンダルを起こした後者に関しては、相当数の批評が確認され、やはり西洋絵画のヌードの伝統を否定するその斬新さが、主題、様式の両面でさまざまに非難されている。《オランピア》については、ティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》との関係、サロン絵画との比較、娼婦の表象等々の観点から分析結果をまとめ、『ヴィーナスの変貌』(三元社)という論文集に掲載されることが決まっている。この他、マネにとってきわめて重要な画家ベラスケスが与えた影響を再考するための調査も行った。とりわけ1865年のスペイン旅行をはさんだ時期と晩年において、マネにとってベラスケスの存在がいかに大きなものであったのか、その本質的な共通性も含めて考察の成果を論文にまとめて発表した。さらに、1870年代の作品《オペラ座の仮装舞踏会》の2つのヴァージョンの様式を比較して、これまで下絵と見なされてきたブリジストン美術館所蔵作品が実験的な独...
17320024, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 日仏美術交流史研究 -ジャポニスム、コラン、日本近代洋画-, 本研究は19世紀後半の日本とフランスにまたがる美術交流の実態を、双方向的な視野の下に三つの側面から総合的に解明しようと企てた。すなわち、第1段階として、日本美術からフランス美術への影響現象であるジャポニスム(日本趣味)を研究が進んでいないアカデミックなサロン絵画を中心に調査した。フィルマン=ジラールのような重要な画家の例を発掘したほか、オリエンタリズムの延長としての異国趣味的なジャポニスムが広く存在したことが明らかになった。他にアジアの寓意像、絵の中の文字、陶磁器についてもジャポニスムとの重要な関連性が見出された。第2段階として、アカデミックな画家の中でも好んで日本の美術工芸品を蒐集し、かつ日本近代洋画家たちの指導者でもあったラファエル・コランについて分析した。その結果、コランのジャポニスムは異国趣味とは異なり、印象派のような造形的なジャポニスムとも異質であることが分かった。春信、光琳、茶陶への趣味が物語るように、それは日本美術と本質的に共鳴する美意識に基づく特異なジャポニスムである。その意味で、コランが日本人の弟子を多く育てたことは決して偶然ではない。そして第3段階として、逆にフランス美術の日本美術への影響現象である、フランス留学した日本の洋画家たちにおけるアカデミスム絵画の摂取について研究した。山本芳翠や黒田清輝を始めとする渡航画家たちは、ジェローム、ボナ、コラン、ピュヴ...
15202007, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 近代東アジアにおける異文化要素の異化と同化, 本研究課題は、当初大澤吉博教授(東京大学大学院総合文化研究科)を研究代表者として、着手された'が、平成17年3月末、大澤教授が急逝したため、17年度に急遼研究代表者を杉田英明に変更し研究プロジェクトの維持と継続を図った。研究計画の一時的な停滞は免れえなかったものの、最終年度に至って、おおむね良好な研究成果が得られたのは、ひとえに研究分担者の協力によるものである。本研究課題にもとついて開催された国際シンポジウム等は以下の通りである。平成16年1月10日 日台国際シンポジウム「異文化の異化と同化-日本と台湾」平成16年6月25日 日韓国際シンポジウム「前近代韓国文学におけるキャノンの形成:異文化要素の異化と同化」平成16年9月25日 国際シンポジウム「世界の中のラフカディオ・ハーンー」平成17年10月14日 日韓比較文学シンポジウム「異文化の同化と異化」このほか、本研究課題に関連して、平成16年5月19日〜21日にロンドン大学SOAS主宰の主宰の「アジア翻訳学会」、平成16年8月6日〜15日に開催されたICLA(国際比較文学会)香港大会に参加した。また、東大比較文学比較文化研究室において、およそ6件の研究発表会、講演会を主催した。これらの研究成果は、それぞれの学会の発表論文集、学術雑誌等に発表されたほか、平成18年に刊行されたr比較文学研究』88号(特輯:異文化の異化と同化)で発...
14310211, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), フランス第二帝政下における都市の変容と文学・芸術, 2002年度に開始された本研究プロジェクトは、第二帝政期(1852-1870)のフランスにおいて推進された首都パリの大改造と同時代の諸文化、特に文学・芸術との関係を明らかにすることを目的としている。本研究の第一の大きな成果は、研究初年度の平成14年秋(10月4日から6日まで)に東京大学総合文化研究科・地域文化研究専攻の主催で行なわれた国際シンポジウム、「ロートレアモンーロマン主義から現代性へ」である。このシンポジウムには世界9力国から34名の研究者が参加し、このフランス詩人の作品に関して多角的な視点からの分析が提示された。とりわけ、われわれはパリの変容とそれが詩人の創造行為に及ぼした影響に焦点を当てた。本シンポジウムの成果は平成15年7月、374頁に及ぶフランス語の報告論文集としてフランスで刊行され、メンバーのうち石井と立花が論文を寄稿している。本研究の第二の成果は、石井と工藤が編集し、平成16年7月に東京大学出版会から刊行された論文集、『フランスとそのく外部>』である。この論文集には多様な分野(政治学、社会学、歴史学、人類学、精神分析学、文学など)にわたる12編の論文が収録され、メンバーの中では石井、工藤、鈴木が寄稿している。その主たる目的は、フランスをヨーロッパの他の国々やフランスの植民地との相関性において捉えることであった。平成18年3月には最終報告書を作成し、メンバー...
14510074, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(C)), 第二帝政期のフランス絵画における芸術家像-マネとファンタンを中心に-, 第二帝政期の芸術家像という問題に対して、(1)「オマージュ、マニフェスト」、(2)「ボヘミアン芸術家像」、(3)「肖像画」、(4)「アトリエ」という4つの視点からアプローチした。(1)に関しては、ファンタン=ラトゥールの集団肖像画《ドラクロワへのオマージュ》(1864)、と《乾杯(真実へのオマージュ)》(1865)について徹底的に調査し、芸術家集団肖像画としての特質を主題と造形の両面から分析した。画家ドラクロワや、「真実」の寓意像に対する礼讃というテーマを通して、ポスト・レアリストとしての美学的な主張が成されている点を浮き彫りにできた。(2)に関しては、ルノワールの《アントニー小母さんの酒場》(1866)とマネの《芸術家》(1875)を取り上げた。「ボヘミアン芸術家」という19世紀に特有の芸術家像を、田園のボヘミアンの例としてルノワールの作品を、都市のボヘミアンの例としてマネの作品を、当時の批評の調査と図像学的なアプローチによって分析した。(3)に関しては、画家たちの自画像とカロリュス=デュランの《ファンタン=ラトゥールとウルヴェイ》、さらにファンタンの《マネの肖像》(1867)を詳しく調査した。前者においては発想源の問題を通じてルーヴル美術館所蔵作品との関係を明らかにすることができ、後者においてはアカデミスムに対するマネの非妥協的な態度を反映した肖像画であることが論証できた...
13410019, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 描かれた都市――中近世絵画を中心とする比較研究, 人間が都市をどのようにイメージしてきたかを解明するために、日本・中国・ヨーロッパの典型的な都市図を取り上げ、作品を調査し、考察した。研究発表の総目録は、研究成果報告書に載る。以下、報告書所載の論文についてのみ述べる。佐藤康宏「都の事件--『年中行事絵巻』・『伴大納言絵巻』・『病草紙』」は、3件の絵巻が、後白河法皇とその近臣ら高位の貴族が抱いていた恐れや不安を当時の京都の描写に投影し、イメージの中でそれらを治癒するような姿に形作っていることを明らかにした。同「『一遍聖絵』、洛中洛外図の周辺」は、「一遍聖絵」の群像構成が、平安時代の絵巻の手法を踏襲しつつ本筋と無関係な人物を多数描くことで臨場感を生み出していることを指摘し、その特徴が宋代の説話画に由来することを示唆する。また、室町時代の都市図を概観しながらいくつかの再考すべき問題を論じる。同「虚実の街--与謝蕪村筆『夜色楼台図』と小林清親画『海運橋』」は、京都を描く蕪村晩年の水墨画について雅俗の構造を分析するとともに、明治の東京を描く清親の版画に対して通説と異なる解釈を示す。ほかの3篇の論文、馬渕美帆「歴博乙本<洛中洛外図>の筆者・制作年代再考」、板倉聖哲「『清明上河図』史の一断章--明・清時代を中心に」、三浦篤「近代絵画における都市と鉄道」も、各主題に関して新見解を打ち出している。
11410016, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 美術の展間に果たした芸術家による旅行の意義に関する包括的研究, 本年度はイタリア、パドヴァ大学のマリ・ビエトロジョヴァンナ氏を招聘し、12月4日東京大学において講演会を催行、氏は16世紀後半のネーデルラシトの画家たちによるローマおよびヴェネト地方旅行について発表した。この際、研究代表者・分担者が集い、氏と活発な議論を行なうとともに、研究の進捗具合と報告書作成等について協議した。日本美術の分野について:前年度の能登地方における長谷川等伯の調査等のとりまとめが行われた。山下による等伯調査の報告および佐藤による若中についての論文は報告書に掲載される予定である。西洋美術の分野について:8月に研究代表者がイタリア、フィレンツェ、シエナ、ヴェネツィアにおいて旅と関わる素描帖についての調査を行ない、前年度同様関連資料写真の収集に努めた。これらの分析により得られた知見の一部は報告書に掲載される予定である。秋山は2002年1月初頭にドイツ、カールスルーエで開かれた一連の展覧会を視察し、上部ライン地方の画家の移動および影響関係についての知見を深めるとともに、アルプス以北において活動した数少ないイタリア人画家としてのヤコポ・デ・バルバリについて、特にその人文主義的画家としての影響力に重点を置きつつ分析した。その成果は報告書に掲載される予定である。中村により遂行されてきたルーベンスのスペイン旅行についての研究も報告書に掲載される。また前年度から遂行されてきた研究...
05710030, 文部科学省, 科学研究費補助金(奨励研究(A)), 19世紀中葉のフランス絵画における芸術実像の研究, 基礎的な研究対象とした、19世紀フランスのサロン絵画(1831年から1880年まで)における芸術家像の調査は完了した。サロンの目録から抽出した作例の体系的な分析により、19世紀に制作された芸術家を主題とする絵画作品の諸傾向が明らかになり、本研究の対象とした同時代の画家たちの集団肖像画の有する革新性が理解された。ファンタン=ラトゥ-ルの集団肖像画に関しては《ドラクロワ礼賛》(1864)の調査研究が終了し、新資料を提示しながら造形性と主題の扱い方の両面から作品の特質を浮き彫りにできた(1994年2月5日、美術史学会東支部例会にて「ファンタン=ラトゥ-ル作《ドラクロワ礼讃》再考」の題で口頭発表を行った。)また、同じ画家の《乾杯(真実礼讃)》(1865)についても、サロン評の網羅的な調査が完了したので、作品の受容という側面から遅からず研究成果をまとめたい。「芸術家の生活情景」を描いたルノア-ルの《アントニ-小母さんの宿屋》(1866)は、社会史的、図像的な資料をかなり収集できたので、ボヘミアン生活という観点からさらに分析を深めていきたい。「アトリエの表象」をテ-マにしたバジ-ルの《ラ・コンダミン街のアトリエ》(1870)とファンタン=ラトゥ-ルの《バティニョルのアトリエ》(1870)》の調査研究も進展した。前者に関しては、アトリエ内部の表象の特異性及び画中画の問題が浮かび上がり、その...
JP23K00171, 日仏美術交流史研究の拡大と深化, 本研究では、19世紀後半から20世紀前半にかけての日仏美術交流史を、ジャポニスムと日本近代洋画に関わる四つのテーマに沿って調査し、考察する。すなわち、「ジャポニスム研究の拡大」、「パリ万国博覧会と美術・文化交流」、「日本近代洋画家と留学体験」、「20世紀前半における美意識の交差」の四つであり、各々のテーマにおいて二つずつ新しい問題を取り上げる。これまで未踏査の問題の解明を目指すもので、学術的な独自性、創造性を確信している。この研究を通して日仏美術交流史の内実と意義を示すことによって、比較文化史としての美術史の新たな可能性もまた明らかになるであろう。;2023年度は「ジャポニスム研究の拡大」というテーマの下に、(1)1880年から1900年までのサロン絵画における日本趣味、(2)フォーヴィスム(野獣派)におけるジャポニスム、という2つの問題に取り組む予定であった。;しかしながら、当初予定していたフランス出張(パリのフランス国立図書館とオルセー美術館)がかなわなかったため、日本で1880年から1900年までのサロンの目録から日本主題の絵画を抽出することになった。その結果、世紀末の20年間にパリのサロンで日本を主題とする作品が展示され、異国趣味的なテーマやモチーフが描かれていたことが判明した。ただし、1860年代後半から1870年代のサロン絵画と比較すると、量的には減少傾向があり、世紀末に近づくにつれて、絵画における日本主題が特に物珍しいものではなくなり、普通の主題になっていったことが推定される。;一方、フォーヴィスムにおける日本趣味についても、やはりパリで調査できず(オルセー美術館、ポンピドゥー・センター)、十分な成果が得られたとは言えない。しかし、アンリ・マティスと日本趣味に関して可能な範囲で研究することができた。特にマティスの初期作品について、浮世絵版画とのつながりの他に、キモノの柄の影響、光を帯びた黒色など、通常のジャポニスムとは異なるマティス独特の接点があることがわかったのが成果と言える。マティスにはイスラム美術への興味もあり、広い意味における東方趣味として日本をと捉えていた可能性がある。なお、ドラン、マルケなど他のフォーヴィスムの画家たちに関しては、残念ながら調査する時間がなかった。;2023年9月に胆石の手術を行い、術後は長期間安静を要したので、当初秋に予定していたフランスでの調査ができなくなってしまったことが最大の理由である。それでも、日本においてできる限りの調査を行い、1880年から1900年までのサロン絵画における日本趣味について、サロンの目録を集中的に調べてリスト化し、フォーヴィスムにおけるジャポニスムについてもマティスについて一定の成果を挙げた。しかし残念ながら、それ以上調査を広げたり、研究を深化させたりするだけの手立てと時間がなかった。;2024年度は「パリ万国博覧会と美術・文化交流」というテーマの下に、(1)1867年のパリ万博における「日本の曲芸団」、(2)1878年のパリ万博における日仏人物交流、という二つの問題に取り組む予定である。そのために、日本側の資料調査のみならずフランスにも調査に出かけ、フランス国立図書館で当時の新聞雑誌の記事を調べることになる。その際に、2023年度に実施できなかった調査を、可能な範囲で合わせて行い、研究成果を発展させ、さらに深めるつもりである。
JP20KK0002, 芸術作品の流通と美術コレクション形成-通時的/共時的分析とデータベース, 本研究「芸術作品の流通と美術コレクション形成-通時的/共時的分析とデータベース」は、近年目覚ましい発展を遂げる美術史分野のデータベースを客観的分析ツールとして活用することで、従来からの歴史研究(通時的分析)にとどまらない同時代の芸術的感性の形成・差異を意識的に分析し(共時的分析)、近現代ヨーロッパ美術作品を収集して形成された日本の美術コレクションの持つ意義を従来にはなかった新しい視点から総体的に理解することを目指す。マッピング等のデータベースを開発・運営しているパリ高等師範学校の美術史学研究ユニットArtl@sとジュネーヴ大学デジタル・ヒューマニティ部門を海外研究協力者とし日仏共同研究を行う。;通常の活動が行われるようになった2023年度は研究調査も活発に行われた。国内では大原美術館からの情報提供を受けつつ、大原美術館コレクションを形成した児島虎次郎の書簡調査を進めた。この書簡は児島虎次郎による絵画購入の際にさまざまな関係者との間で交わされたものを含んでいる。フランス語でしたためられているものも多く、一部は公刊されているものの従来からその全体的な整備が待たれていた。この書簡の情報で国内に保管されているものを、今年度は一部調査することができた。2024年度以降、さらに調査が続けられることになる。;また、データベースの形成手法の情報提供と指導を、パートナー校であるジュネーヴ大学正教授のBeatrice Joyeux-Prunel先生とパリ高等師範学校の美術史ユニットArtl@sのIT部門長を今年度務めているLea Saint-Raymond先生から受けた。またフランスのパリ国立図書館で美術品流通にかかわる資料調査を行うことができた。データベースの利用許可を受けたことで、従来の研究にはなかった斬新な情報分析が可能となった。また、Saint-Raymond先生が日本滞在時にデータベース作成のためのワークショップを開催することもできた(ただしワークショップ開催は科研費とは別予算)。一方でJoyeux-Prunel先生と東京大学情報理工学研究科特任講師のVorapong Suppakitpaisarn先生との参加を得てオンラインセミナーを開催した。このセミナーでは、美術作品の流通のデータ分析にかかわる発表と、絵画作品の影響関係を同定するアルゴリズム開発にかかわるIXTプロジェクトの共同研究の発表が行われ、多くの美術史専門家の関心を得た。また論文「ベルギー人芸術家と日本人芸術家の出合い――フランソワ・パイクと児島虎次郎」も発表し、調査の成果を外部発信することもできた。;コロナ禍のために対面での共同研究や発表の場を設けることが難しい時期が続いたが、大原美術館のコレクション調査のように、対面での作業が今年度は進めることができた。人と物の交流が活発になることで、従来の交流実績をふまえつつ研究を発展させることができた。そのことから本研究はおおむね順調に進展しているといえる。;2024年度は、大原美術館のコレクション形成の調査として児島虎次郎書簡調査を行い、そのデータ整備の下準備を開始する。ベルギーとパリにおける児島虎次郎の活動調査をさらに進めることで、データの質の向上を図る。対外発信としてセミナー開催あるいは論文作成を行い、成果を外部発信する。
19K00170, アンリ・ファンタン=ラトゥール研究ー芸術交流の視点から, 本研究は、19世紀後半にフランスのパリで活躍した画家アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)を「芸術交流の視点」から再検討することを目的とする。英語圏やドイツ語圏の芸術家と交流し、文学者や音楽家とも接点を持っていたファンタンの芸術を、国際的な交友関係や芸術ジャンルの融合という視点から新たに捉え直したい。具体的には「芸術家像と交友関係」「静物画とイギリス」「音楽と美術」の三つのテーマを通して、ファンタンの芸術の重要な特質を解明する。;19世紀後半のフランスの画家アンリ・ファンタン=ラトゥールを、芸術交流の視点から再検討した。イギリスやドイツの美術家と交流し、文学者や音楽家とも接点があったファンタンの芸術は、異なる地域・文化を横断し、異なる芸術ジャンルを越境する特質を持つ。その国際的な交友関係を調査するとともに、特にイギリスと花の絵、ドイツと音楽という二つの側面に着目し、具体的な作品や書簡などの資料に基づいて分析することによって、地域間、ジャンル間を交差するファンタンの絵画のコスモポリタンな、そして比較芸術的な性格を明らかにすることができた。;人文系の学問は細分化された分野に閉じこもる傾向にあり、美術史学もまたその例にもれない。本研究は、ファンタン=ラトゥールという一人の画家を取り上げ、その交友関係や作品をイギリスやドイツとの地域間交流、音楽や文学との芸術間交流という広い視野から捉え直すことを目指している。このような国際的、学際的なアプローチによる研究成果は、これまで見過ごされてきた画家の特質を明らかにするとともに、現在の閉鎖的な学問状況、硬直した文化状況を解きほぐし、活性化することにつながるものと確信している。
15K02133, マネの絵画と検閲 ー政治、社会、美術制度ー, マネの絵画と検閲に関して、政治、社会、美術制度という観点から総合的に調査し、考察した。 その結果、マネが第二帝政に批判的な立場から政治的な主題を取り上げ、暗示的なやり方で表現し、検閲を受けたことがわかった。また、ヌードや娼婦のテーマに積極的に取り組んで、それ以前にはない女性表象を行い、スキャンダルや非難を招いたこと、さらに聖性を帯びるべきキリスト像をリアリストのまなざしで扱って批判されたことも判明した。;本研究は19世紀フランスの重要な画家マネの作品を検閲という新しい視点で研究した。絵画が単に美的な性質を持つだけではなく、政治や社会、道徳や宗教などと深く関連していることは、必ずしも常に意識されているわけでない。その意味で、この研究成果はマネ研究を一歩進める学術的意義を有している。さらに、成果を書籍として刊行することによって一般の人の美術に対する見方を変えることにもつながり、その意味で社会的な意義もある。
24520100, マネとポスト・レアリスムの画家たち, 1860年代のフランス絵画をクールベ以後の「ポスト・レアリスム」という切り口から捉え、マネ、ファンタン=ラトゥール、ドガ、ルグロ、ホイッスラーの5人の画家たちに共通する美意識や造形手法を総合的に考察した。その結果、絵画の枠組みの意識化と作品の切断、画像のアッサンブラージュ、画中画や鏡の挿入、多様なマチエールの併用等々の特質が浮かび上がった。西洋絵画史における「近代的なタブローの生成」とも言うべき現象が出現したのがまさに1860年代のフランスであり、マネを中核とする「ポスト・レアリスト」たちがそれを担ったのである。
21520094, エドゥアール・マネ研究 -批評と受容の視座から-, マネの主要作品について19世紀当時の批評を調査し、その受容の様相を分析した。取り上げたのは《草上の昼食》、《オランピア》、《エミール・ゾラの肖像》《フォリー・ベルジェールのバー》、《鉄道》の5点で、その批判的な反応から、マネの作品が主題の扱い方、様式・技法のレベルにおいて、いかに当時の美的な基準を逸脱していたかが明らかになった。本質的には、マネの絵の曖昧さや多義性が観者の読解を混乱させたのである。
17320024, 日仏美術交流史研究 -ジャポニスム、コラン、日本近代洋画-, 本研究は19世紀後半の日本とフランスにまたがる美術交流の実態を、双方向的な視野の下に三つの側面から総合的に解明しようと企てた。すなわち、第1段階として、日本美術からフランス美術への影響現象であるジャポニスム(日本趣味)を研究が進んでいないアカデミックなサロン絵画を中心に調査した。フィルマン=ジラールのような重要な画家の例を発掘したほか、オリエンタリズムの延長としての異国趣味的なジャポニスムが広く存在したことが明らかになった。他にアジアの寓意像、絵の中の文字、陶磁器についてもジャポニスムとの重要な関連性が見出された。第2段階として、アカデミックな画家の中でも好んで日本の美術工芸品を蒐集し、かつ日本近代洋画家たちの指導者でもあったラファエル・コランについて分析した。その結果、コランのジャポニスムは異国趣味とは異なり、印象派のような造形的なジャポニスムとも異質であることが分かった。春信、光琳、茶陶への趣味が物語るように、それは日本美術と本質的に共鳴する美意識に基づく特異なジャポニスムである。その意味で、コランが日本人の弟子を多く育てたことは決して偶然ではない。そして第3段階として、逆にフランス美術の日本美術への影響現象である、フランス留学した日本の洋画家たちにおけるアカデミスム絵画の摂取について研究した。山本芳翠や黒田清輝を始めとする渡航画家たちは、ジェローム、ボナ、コラン、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ、バスティアン=ルパージュらから、アカデミスム、古典主義、自然主義など多様な絵画様式を摂取して帰国した。日本近代洋画の礎となった画家たちの個性的な受容の有り様が見えてきた。;以上のように、従来は別個に研究されていた三つのテーマを相互に連関させながら調査することで、日仏美術交流史の重要な断面をダイナミックに浮かび上がらせることができた。研究に新たな1頁を付け加えることができたと確信する。
15202007, 近代東アジアにおける異文化要素の異化と同化, 本研究課題は、当初大澤吉博教授(東京大学大学院総合文化研究科)を研究代表者として、着手された'が、平成17年3月末、大澤教授が急逝したため、17年度に急遼研究代表者を杉田英明に変更し研究プロジェクトの維持と継続を図った。研究計画の一時的な停滞は免れえなかったものの、最終年度に至って、おおむね良好な研究成果が得られたのは、ひとえに研究分担者の協力によるものである。;本研究課題にもとついて開催された国際シンポジウム等は以下の通りである。;平成16年1月10日 日台国際シンポジウム「異文化の異化と同化-日本と台湾」;平成16年6月25日 日韓国際シンポジウム「前近代韓国文学におけるキャノンの形成:異文化要素の異化と同化」;平成16年9月25日 国際シンポジウム「世界の中のラフカディオ・ハーンー」;平成17年10月14日 日韓比較文学シンポジウム「異文化の同化と異化」;このほか、本研究課題に関連して、平成16年5月19日〜21日にロンドン大学SOAS主宰の主宰の「アジア翻訳学会」、平成16年8月6日〜15日に開催されたICLA(国際比較文学会)香港大会に参加した。また、東大比較文学比較文化研究室において、およそ6件の研究発表会、講演会を主催した。;これらの研究成果は、それぞれの学会の発表論文集、学術雑誌等に発表されたほか、平成18年に刊行されたr比較文学研究』88号(特輯:異文化の異化と同化)で発表された。また、台湾大学発行の『台大日本語文研究』も、中国語版が発表された。
14510074, 第二帝政期のフランス絵画における芸術家像-マネとファンタンを中心に-, 第二帝政期の芸術家像という問題に対して、(1)「オマージュ、マニフェスト」、(2)「ボヘミアン芸術家像」、(3)「肖像画」、(4)「アトリエ」という4つの視点からアプローチした。;(1)に関しては、ファンタン=ラトゥールの集団肖像画《ドラクロワへのオマージュ》(1864)、と《乾杯(真実へのオマージュ)》(1865)について徹底的に調査し、芸術家集団肖像画としての特質を主題と造形の両面から分析した。画家ドラクロワや、「真実」の寓意像に対する礼讃というテーマを通して、ポスト・レアリストとしての美学的な主張が成されている点を浮き彫りにできた。(2)に関しては、ルノワールの《アントニー小母さんの酒場》(1866)とマネの《芸術家》(1875)を取り上げた。「ボヘミアン芸術家」という19世紀に特有の芸術家像を、田園のボヘミアンの例としてルノワールの作品を、都市のボヘミアンの例としてマネの作品を、当時の批評の調査と図像学的なアプローチによって分析した。(3)に関しては、画家たちの自画像とカロリュス=デュランの《ファンタン=ラトゥールとウルヴェイ》、さらにファンタンの《マネの肖像》(1867)を詳しく調査した。前者においては発想源の問題を通じてルーヴル美術館所蔵作品との関係を明らかにすることができ、後者においてはアカデミスムに対するマネの非妥協的な態度を反映した肖像画であることが論証できた。(4)に関しては、バジールの《ラ・コンダミンヌ通りのアトリエ》(1870)とファンタンの《バティニョール街のアトリエ》(1870)を取り上げ、西洋絵画におけるアトリエ図像の系譜を踏まえた上で、親密なアトリエ空間の表象と虚構の集団肖像画という2点のアトリエ画の性格の違いを比較検討した。;このように、重要な四つの問題系を扱うことで、第二帝政期のフランス絵画における芸術家像の意味を考察し、近代絵画史の文脈における意義を明確にし得た。
14310211, フランス第二帝政下における都市の変容と文学・芸術, 2002年度に開始された本研究プロジェクトは、第二帝政期(1852-1870)のフランスにおいて推進された首都パリの大改造と同時代の諸文化、特に文学・芸術との関係を明らかにすることを目的としている。;本研究の第一の大きな成果は、研究初年度の平成14年秋(10月4日から6日まで)に東京大学総合文化研究科・地域文化研究専攻の主催で行なわれた国際シンポジウム、「ロートレアモンーロマン主義から現代性へ」である。このシンポジウムには世界9力国から34名の研究者が参加し、このフランス詩人の作品に関して多角的な視点からの分析が提示された。とりわけ、われわれはパリの変容とそれが詩人の創造行為に及ぼした影響に焦点を当てた。本シンポジウムの成果は平成15年7月、374頁に及ぶフランス語の報告論文集としてフランスで刊行され、メンバーのうち石井と立花が論文を寄稿している。;本研究の第二の成果は、石井と工藤が編集し、平成16年7月に東京大学出版会から刊行された論文集、『フランスとそのく外部>』である。この論文集には多様な分野(政治学、社会学、歴史学、人類学、精神分析学、文学など)にわたる12編の論文が収録され、メンバーの中では石井、工藤、鈴木が寄稿している。その主たる目的は、フランスをヨーロッパの他の国々やフランスの植民地との相関性において捉えることであった。;平成18年3月には最終報告書を作成し、メンバー全員が論文を執筆している。
13410019, 描かれた都市――中近世絵画を中心とする比較研究, 人間が都市をどのようにイメージしてきたかを解明するために、日本・中国・ヨーロッパの典型的な都市図を取り上げ、作品を調査し、考察した。研究発表の総目録は、研究成果報告書に載る。以下、報告書所載の論文についてのみ述べる。佐藤康宏「都の事件--『年中行事絵巻』・『伴大納言絵巻』・『病草紙』」は、3件の絵巻が、後白河法皇とその近臣ら高位の貴族が抱いていた恐れや不安を当時の京都の描写に投影し、イメージの中でそれらを治癒するような姿に形作っていることを明らかにした。同「『一遍聖絵』、洛中洛外図の周辺」は、「一遍聖絵」の群像構成が、平安時代の絵巻の手法を踏襲しつつ本筋と無関係な人物を多数描くことで臨場感を生み出していることを指摘し、その特徴が宋代の説話画に由来することを示唆する。また、室町時代の都市図を概観しながらいくつかの再考すべき問題を論じる。同「虚実の街--与謝蕪村筆『夜色楼台図』と小林清親画『海運橋』」は、京都を描く蕪村晩年の水墨画について雅俗の構造を分析するとともに、明治の東京を描く清親の版画に対して通説と異なる解釈を示す。ほかの3篇の論文、馬渕美帆「歴博乙本<洛中洛外図>の筆者・制作年代再考」、板倉聖哲「『清明上河図』史の一断章--明・清時代を中心に」、三浦篤「近代絵画における都市と鉄道」も、各主題に関して新見解を打ち出している。
11410016, 美術の展間に果たした芸術家による旅行の意義に関する包括的研究, 本年度はイタリア、パドヴァ大学のマリ・ビエトロジョヴァンナ氏を招聘し、12月4日東京大学において講演会を催行、氏は16世紀後半のネーデルラシトの画家たちによるローマおよびヴェネト地方旅行について発表した。この際、研究代表者・分担者が集い、氏と活発な議論を行なうとともに、研究の進捗具合と報告書作成等について協議した。;日本美術の分野について:前年度の能登地方における長谷川等伯の調査等のとりまとめが行われた。山下による等伯調査の報告および佐藤による若中についての論文は報告書に掲載される予定である。;西洋美術の分野について:8月に研究代表者がイタリア、フィレンツェ、シエナ、ヴェネツィアにおいて旅と関わる素描帖についての調査を行ない、前年度同様関連資料写真の収集に努めた。これらの分析により得られた知見の一部は報告書に掲載される予定である。秋山は2002年1月初頭にドイツ、カールスルーエで開かれた一連の展覧会を視察し、上部ライン地方の画家の移動および影響関係についての知見を深めるとともに、アルプス以北において活動した数少ないイタリア人画家としてのヤコポ・デ・バルバリについて、特にその人文主義的画家としての影響力に重点を置きつつ分析した。その成果は報告書に掲載される予定である。中村により遂行されてきたルーベンスのスペイン旅行についての研究も報告書に掲載される。また前年度から遂行されてきた研究協力者二名による「ゴヤのイタリア画帖」の画像・文字データ入力は完了し、その概要は、ベラスケスのイタリア旅行に関する史料翻訳ともども報告書に収載されることになる。
05710030, 19世紀中葉のフランス絵画における芸術実像の研究, 基礎的な研究対象とした、19世紀フランスのサロン絵画(1831年から1880年まで)における芸術家像の調査は完了した。サロンの目録から抽出した作例の体系的な分析により、19世紀に制作された芸術家を主題とする絵画作品の諸傾向が明らかになり、本研究の対象とした同時代の画家たちの集団肖像画の有する革新性が理解された。;ファンタン=ラトゥールの集団肖像画に関しては《ドラクロワ礼賛》(1864)の調査研究が終了し、新資料を提示しながら造形性と主題の扱い方の両面から作品の特質を浮き彫りにできた(1994年2月5日、美術史学会東支部例会にて「ファンタン=ラトゥール作《ドラクロワ礼讃》再考」の題で口頭発表を行った。)また、同じ画家の《乾杯(真実礼讃)》(1865)についても、サロン評の網羅的な調査が完了したので、作品の受容という側面から遅からず研究成果をまとめたい。;「芸術家の生活情景」を描いたルノアールの《アントニ-小母さんの宿屋》(1866)は、社会史的、図像的な資料をかなり収集できたので、ボヘミアン生活という観点からさらに分析を深めていきたい。「アトリエの表象」をテーマにしたバジ-ルの《ラ・コンダミン街のアトリエ》(1870)とファンタン=ラトゥールの《バティニョルのアトリエ》(1870)》の調査研究も進展した。前者に関しては、アトリエ内部の表象の特異性及び画中画の問題が浮かび上がり、その研究成果を論文にまとめたが、その続編となる後者に関する論文も現在準備中である。